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2023年01月25日
【目的】
早朝勃起は勃起機能を自覚できる指標であり、早朝勃起に着目することでメタボリック症候群の早期発見や心血管疾患発症の予防に貢献し得ると考える。早朝勃起とメタボリック因子の関連を研究した報告はなく、本研究を行った。
【対象・方法】
2020年1月1日から12月31日まで横浜新緑総合病院の人間ドックを受診し、本臨床研究に同意を得られた31~80歳の男性が対象である。評価項目は早朝勃起頻度、年齢、高血圧、高血糖、脂質異常、睡眠障害の有無である。
早朝勃起頻度が1週間に1回以上と1回未満の2群間で各メタボリック因子または睡眠障害の有無に関して解析する。また、早朝勃起頻度とメタボリック因子数の関連も解析する。
【結果】
対象者は911人であった。早朝勃起とメタボリック因子・睡眠障害の検討では、睡眠障害を除き有意差を認めたが、年齢補正下では脂質異常のみ有意差を認めた。早朝勃起頻度とメタボリック因子数の検討では、メタボリック因子の有無のみで有意差を認めた。
【結論】
早朝勃起頻度と脂質異常に相関を認めた。
メタボリック因子の有無と早朝勃起頻度に相関を認めた。
【原著】
日本性機能学会雑誌:37 (3) 167~173, 2022
Dyslipidemia and existence of metabolic syndrome risk factors affect morning erection.
Yuichiro IMAMURA, Haruaki SASAKI, Kota KIKUNA, Nagomi KIDA, Yuta OGUSHI, Ayana NIIKURA, Tomoka OTA, Yuki ICHIMURA, Yu HASHIMOTO, Ippei KUROKAWA, Hiroo SHIMOYAMA and Michiya OTA
Department of Urology, Showa University Fujigaoka Hospital
Kimiyasu ISHIKAWA
Department of Urology, Yokohama Shin-midori General Hospital
Kazuhiko OSHINOMI, Takeshi SHICHIJO and Takashi FUKAGAI
Department of Urology, Showa University Hospital
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2022年04月01日
<目的>
勃起不全は死亡率と関連しているが、テストステロン低下と死亡率上昇との関連は依然として議論のあるところである。性機能障害と低テストステロンはしばしば共存するが、死亡率予測における性機能症状と低テストステロンの相対的重要性はわかっていない。そこで、ヨーロッパ人男性の大規模前向きコホートにおいて、性ホルモンおよび性機能症状と全死亡率との相互関係を調査した。
<方法>
European Male Ageing Study(EMAS)に参加した40~79歳の地域在住男性1,788名を対象に生存状態を調査した。性機能症状はEMAS-SFQを用いて評価した。性ホルモンは質量分析により測定した。Cox比例ハザードモデルを用いて、ホルモン、性機能症状、死亡率の関連を解析した。
<結果>
・約420人(25.3%)の男性が、平均12.6±3.1年の追跡期間中に死亡した。
・死亡群と生存群の間でTT(総テストステロン)値は同程度であったが、FT(フリーテストステロン)は死亡群で低かった。
・3つの性機能症状(勃起不全、早朝勃起減少、性欲低下)を持つ男性は、これらの症状を持たない男性と比較して死亡リスクが高かった(調整HRおよび95%CI:1.75(1.28-2.40、P = 0.001))。
・特に、勃起不全と早朝勃起低下は、死亡率の上昇と関連していた(それぞれ、HR 1.40(1.13-1.74, P = 0.002), 1.28(1.04-1.59, P = 0.023) が、性欲低下は関連していなかった(1.12(0.90-1.39, P = 0.312))。
・TT、FTまたはE2(エストラジオール)で調整しても、観察されたリスクには影響がなかった。
<結論>
性機能症状、特に勃起不全は、性ホルモンとは無関係に全死亡を予測し、健康状態悪化の早期警告サインとなりうる。
Antonio L, Wu FCW, Moors H, Matheï C, Huhtaniemi IT, Rastrelli G, Dejaeger M, O’Neill TW, Pye SR, Forti G, Maggi M, Casanueva FF, Slowikowska-Hilczer J, Punab M, Tournoy J, Vanderschueren D; EMAS Study Group.
Department of Chronic Diseases and Metabolism, KU Leuven, Laboratory of Clinical and Experimental Endocrinology, Leuven, Belgium.
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2018年05月15日
<目的>
既存の危険因子がない40歳以下の若年男性における勃起不全の病因の解明を試みた。<結果>
・正常対照群に比して勃起不全患者は頸動脈内膜中膜厚、空腹時血糖およびインスリンHOMA指数が高く、FMDおよびTレベルが低かった(P < 0.05)。しかし、これらの値は全て正常範囲内であった。・多重ロジスティック回帰分析の結果、勃起不全の有意な予測因子として、頸動脈内膜中膜厚、FMD、インスリンレベルおよびHOMA指数を確認した。
・FMD<10.65%の若年男性は勃起不全の保有する傾向が11.645倍高く、勃起不全保有のリスクは頸動脈内膜中膜厚>0.623 mmの男性4.16倍、HOMA指数>1.614の男性5.993倍高かった。
<結論>
一般的な臨床スクリーニングが正常の若年男性において、頸動脈内膜中膜厚およびHOMA指数の上昇翔およびFMDの低下は高い勃起不全発症率と関連していた。
勃起不全は一般的な心血管の危険因子が見いだされる前に現れ、潜在的心血管疾患の最も早い臨床的徴候と考えられる。
Asian J Androl. 2018 Feb 9. doi: 10.4103/aja.aja_73_17.
Erectile dysfunction is associated with subclinical carotid vascular disease in young men lacking widely-known risk factors.(原著フリー)
Yao FJ, Zhang YD, Wan Z, Li W, Lin H, Deng CH, Zhang Y Department of Ultrasound, First Affiliated Hospital, Sun Yat-sen University, Guangzhou 510080, China
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2017年04月06日
<目的>
アンドロゲン(男性ホルモン)欠乏症によるEDの原因となる海綿体線維化の機序を検討した。<方法>
12週齢の健常雄性ラット40匹を無作為に4群に分けた。すなわち、正常対照群、去勢群および去勢後T(テストステロン)10㎎/kg投与群(去勢+10T群)および去勢後T20㎎/kg投与群(去勢+20T群)である。処置8週後に血清Tレベル、平均動脈圧に対する海綿体内圧比(ICP/MAP)、陰茎平滑筋細胞の組織学的変化、Smadおよび非Smad経路および細胞外マトリックス(ECM)蛋白の沈着を測定した。<結果>
・去勢群は低Tおよび低ICP/MAP比、陰茎平滑筋細胞/コラーゲン比の減少、ECM蛋白の沈着の増加、Smadおよび非Smad経路の高発現を示した。・去勢+10T群は勃起機能および組織の安定性を部分的に維持した。
・しかし、去勢+20T群は有意に良好な勃起機能を維持し、分子レベルでの変化を防御した。
<結論>
適正な用量のART(アンドロゲン補充療法・男性ホルモン補充療法)は、より良好な効果を期待できる。アンドドロゲン欠乏症はSmadおよび非Smad経路の活性化およびECM蛋白の蓄積を介して海綿体線維化を誘発する。【ご参考】 TGF-β1 (トランスフォーミング増殖因子-β)
【原著】
Andrologia. 2017 Mar 10. doi: 10.1111/and.12797.
Androgen deficiency impairs erectile function in rats through promotion of corporal fibrosis.
Cui K, Li R, Chen R, Li M, Wang T, Yang J, Chen Z, Wang S, Liu J, Rao K【弊社コメント】
男性ホルモンの欠乏は陰茎組織の線維化を招き、ED(勃起障害)に至りますが、その機序にSmadおよび非Smad経路の活性化およびECM蛋白の蓄積があることを示唆する研究報告です。
自ずと、男性ホルモンが欠乏しないようにすることが、EDの予防になるものと考えられます。(福)続きを読む
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射精頻度と前立腺癌リスクの関連性-2004年以降の追跡調査研究
2016年10月03日
<目的>
エビデンスは射精回数が前立腺がん(PC)リスクと逆向きに比例する事を示し、PCに対するいくつかの修飾リスク因子が明らかになっている。
これまでに報告した射精回数とPCの関連性に関する分析に、その後10年間の追跡調査結果を加え、さらに臨床的に関連する疾患群および他の原因による死亡の影響を加え、総合的に分析した。
<方法>
平均月間射精回数に関する自己報告データが活用できるHealth Professionals Follow-up Studyの参加者にて前向きのコホート研究を行った。
対象は1992年の質問票調査にて射精回数を回答し、その後2010年まで調査した31,925例の男性である。月間射精回数を20~29歳、40~49歳および質問票配布前年の3時点にて算定した。
一次評価項目は総PCの発症および臨床的に関連のある疾患である。ハザード比(HR)および95%CIをコックスモデルにて求めた。
<結果>
・480831 person-yearsのおいて3,839例がPCと診断された。
・40~49歳の射精頻度は年齢標準化BMI、身体活動、離婚、性感染症の病歴、および総カロリーおよびアルコール摂取量とポジティブに関連していた。
・2008年のPSAテストの実施、PSAテスト回数および前立腺生検頻度はいずれの射精頻度においても差異がなかった。
・多変量分析において、射精頻度21回以上のPC発症HRは4~7回の射精頻度に比して20~29歳で0.81 (95% CI 0.72-0.92; p<0.0001 for trend)および40~49歳で0.78 (95% CI 0.69-0.89; p<0.0001 for trend)であった。
<結論>
この結果はPCの病因において成人世代を通じて高頻度の射精は有益な役割をはたしているというエビデンスを加えるものである。
Eur Urol. 2016 Mar 28. pii: S0302-2838(16)00377-8. doi: 10.1016/j.eururo.2016.03.027.
Rider JR, Wilson KM, Sinnott JA, Kelly RS, Mucci LA, Giovannucci EL
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日本性機能学会・第25回学術総会 シンポジウム3 「テストステロン補充療法のエビデンス」共催
2014年07月30日
来る9月6日(土)、日本性機能学会・第25回学術総会 シンポジウム3 「テストステロン補充療法のエビデンス」を共催させていただくことになりました。
低用量・経皮吸収による、マイルドで安全性の高いテストステロン補充が期待できる「グローミン」は、諸先生の臨床応用を通じて着実に実績を積んでおります。
2014年9月4日(木)~9月6日(土)
会場:仙台市情報・産業プラザ「アエル」
■ シンポジウム3 「テストステロン補充療法のエビデンス」
座長: 並木 幹夫先生(金沢大学)・ 小谷 俊一先生(中部労災病院)9月6日(土)9:30~10:30
・性機能障害に対するホルモン補充療法のエビデンス
演者: 佐藤 嘉一先生(三樹会病院)・メタボリック症候群に対するテストステロン補充療法の有用性
演者: 辻村 晃先生(順天堂大学)・前立腺肥大症に伴うLUTSに対するテストステロン補充療法の有用性
演者: 重原 一慶先生(石川県立中央病院)続きを読む
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2014年07月16日
■ 目的・方法
男性の生殖機能に対する赤ワイン摂取の影響は殆ど分かっていない。 若齢成熟ラットにおける生殖ホルモンおよび総抗酸化状態に対する各種赤ワインの恒常的飲酒の影響を検討した。■ 結果
- 辛口の赤ワイン(D-RW)は、準辛口および準甘口の赤ワイン(SD-RWおよびS-RW)に比して、高いフェノール化合物濃度を特徴とする高い抗酸化活性を示した。
- 6週間の飲酒後のラットの血清総抗酸化状態には差異が認められなかった。
- S-RWにおけるFSHの上昇はコントロールおよびD-RWより高かった(5.26 vs. 3.06 and 3.21 ng mL-1)。
- 血清テストステロンはD-RWにおいてSD-RW, S-RW およびSS-RW に比して低かった(0.25 vs. 1.12, 1.09, 1.54 and 1.25 ng mL-1)。
- 血清E2はS-RWにおいてSD-RW および SS-RWに比して高かった(10.94 vs. 7.18 and 6.72 pg mL-1) 。
- プロラクチンはS-RW において D-RW および SS-RWに比して高かった(17.35 vs. 9.74 and 8.59 ng mL-1)。
■ 結論
雄性の生殖系に関するホルモン調節に対する赤ワインの影響は、用量および赤いワインの種類により異なる。 赤ワイン中に自然に含まれる化学物質(i.e. phenolics)がエチルアルコールの作用に影響し、また直接的にも影響していると思われる。■ 原著
Food Funct. 2014 Jul 4.
The effect of red wine consumption on hormonal reproductive parameters and total antioxidant status in young adult male rats.
Oczkowski M1, Srednicka-Tober D, Stachoń M, Kołota A, Wolińska-Witort E, Malik A, Hallmann E, Rusaczonek A, Gromadzka-Ostrowska J.続きを読む
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若年男性における肥満のテストステロンおよび性機能に及ぼす影響
2014年07月01日
■ 目的
若年男性において体重の増加が血清Tの減少および性機能の低下と関連するか否か検討した。■ 目的
年齢20~49歳の男性136例から全般的健康、薬物療法、うつ症状および性生活に関するデータを収集した。 血清LH、総テストステロン、DHEAS、E2、SHBG、総コレステロール、LDLおよびHDLコレステロールおよび中性脂肪を測定し、BMI、ウェスト・ヒップ比(WHR)および遊離テストステロン指数(FTI)を計算により求めた。■ 結果
- 性的空想の想起、早朝勃起および勃起機能は最高齢群において最若年群に比して有意に低下していたが、オーガズムには差異がなかった。
- 肥満の30歳男性は正常なBMIの男性に比して総テストステロンが有意に低かった。いっぽう、肥満の40歳男性においてはLHおよびSHBGの低下も認められた。
- 脂質レベルおよび性行為の実行に関してはBMIによる差異は認められなかった。
- 勃起機能および早朝勃起は年齢、BMIおよびWHIと負相関し、FTIと正相関した。しかし検討した他のホルモンおよび脂質とは相関性がなかった。
■ 結論
若年男性において肥満はテストステロン・レベルの低下を原因として勃起機能の悪化をもたらす。■ 原著
Endokrynol Pol. 2014;65(3):203-9. doi: 10.5603/EP.2014.0028.
Relationship between sexual function, body mass index and levels of sex steroid hormones in young men.
Jastrzębska S1, Walczak-Jędrzejowska R, Kramek E, Marchlewska K, Oszukowska E, Filipiak E, Kula K, Słowikowska-Hilczer J.続きを読む