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Category:血栓症

  • テストステロンの心血管系に及ぼす有用性とリスク

    2014年06月30日


    ■ 要約
    テストステロンの欠乏は心血管疾患(CVD)を有する男性において高率に認められ、死亡率の上昇と関連している。低テストステロンはインスリン抵抗性、糖尿病、脂質異常、内臓肥満および内皮機能異常等の心血管リスク因子に対し悪影響をもたらす。

    男性という性は早期のCVDおよび死亡率に対するリスク因子としてよく知られている。 テストステロンの欠乏はアテローム形成の寄与因子か、あるいは単に病態のバイオマーカーに過ぎないか否かという疑問が挙がっている。

    動物実験および in vitro での研究結果はアテローム形成に関する機序がテストステロンによって抑制的に調整されている事を示している。

    疫学的研究は中等度~正常上限内の内因性テストステロン・レベルの男性は低テストステロンおよび高テストステロンの男性に比して心血管イベントが減少していた事を示した。

    性腺機能低下男性に対する正常レベルのテストステロン補充は心臓虚血、機能的運動容量等の幾つかの心血管リスク因子に対し有用効果を示し、死亡率を改善した。

    しかし、未治療あるいは高用量のテストステロンの研究では心血管関連イベントのリスク上昇と関連していた。

    それゆえ、臨床的モニターおよびテストステロン用量の適正化が非常に重要である。

    ■ 原著
    Front Horm Res. 2014;43:1-20. Epub 2014 Jun 10.
    Testosterone and cardiovascular risk in men.
    Kelly DM, Jones TH.

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  • テストステロン療法と血栓形成および心血管イベント

    2014年06月24日


    ■ 要旨
    テストステロン療法(TT)の開始と血栓(~4.5months)および心血管(CVD)イベント(~3months)の発症までの期間は類似しており、病態生理学的に同様の基盤があると推定される。
    我々は男性38例および女性4例においてテストステロン療法開始5カ月後(中央値)に発症した血栓イベントを報告した。 このうち27例は深部静脈血栓-肺塞栓症、12例は骨壊死、1例は中心網脈血栓症、1例は一過性黒内障および1例は脊椎梗塞を呈した。
    テストステロン療法を続行した8例の男性において、適正な抗凝固療法にも拘らず2回目の血栓イベントを発症し、うち3例では3回目の血栓イベントを発症した。
    これら42例中40例は血栓形成素因-線溶系低下の測定がなされ、39例はテストステロン療法開始前に診断がなされていなかった。
    テストステロン療法を開始する前、特に血栓イベントの病歴のある男性では最低限、第5因子ライデンおよびプロスロンビン変異、第8および11因子およびホモステインを測定する事を提案する。
    血栓症の病歴あるいは遺伝性の血栓形成傾向の全患者に対してテストステロン療法のスクリーニングがなされるべきか否かに関して焦点を当てたプロスペクチブなデータが必要である。
    テストステロン療法および全原因および心血管死亡および死亡率および血栓症についての疑問を解決するため、WHI研究のような長期的、前向きの無作為盲検化試験が必要とされる。
    前向きのプラセボー比較のテストステロン療法の結果が出るまで、テストステロン療法は厳密にアンドロゲン欠乏症が確認された男性に制限されるべきである。

    ■ 原著
    Metabolism. 2014 May 15. pii: S0026-0495(14)00145-0.
    Testosterone therapy, thrombosis, thrombophilia, cardiovascular events.
    Glueck CJ, Wang P

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  • エストロゲン製剤とグレープフルーツの相互作用について

    2009年05月13日


    エストロゲンを配合した医薬品と、グレープフルーツの相互作用を示唆する症例報告がありましたので、ご紹介致します。

    血中エストロゲンの高い状態が続きますと、血栓症のリスクが高まるという指摘がありますが、グレープフルーツを食べ続けたことでエストロゲンの代謝が阻害された結果、血中エストロゲン濃度が高くなってしまったと考えられているようです。

    本報は経口避妊薬とグレープフルーツの事例で、グレープフルーツを食べ続ける極端なダイエット、長時間の運転(いわゆるエコノミー症候群と似た状況)といった、血栓症を生じやすい極端な状況があったと考えられますが、経口避妊薬だけでなく、エストロゲンを配合した他の医薬品(弊社製品では「ヒメロス」「バストミン」)でも注意が必要と思われます。

    具体的には、女性ホルモン剤を使用中の人はグレープフルーツの摂取をなるべく避けるのが無難で、少なくとも毎日食べ続けないように(2~3日空ける)すべきと言われています。

    相互作用の影響を解除するには、グレープフルーツの摂取を2~3日空けた方がよいとの考え方が示されています(独立行政法人 国立健康・栄養研究所HPより)

    また、グレープフルーツの成分が肝臓で薬物を代謝する酵素を阻害し、その結果、薬物が代謝されず血中濃度が上がり過ぎてしまうために生じる問題は、他にも多々指摘されていますので、女性ホルモン剤に限らず、何か薬を使用中の人がグレープフルーツを食べる際は、事前に薬剤師へ相談いただくのが万全です。

    女性ホルモン剤をはじめ、何か医薬品を使用中の女性がグレープフルーツでダイエットをするのは注意が必要で、他のダイエット方法を検討する方が無難と思われます。

     

    【経過】
    42
    才、女性。グレープフルーツによるダイエットを実践したところ、足に深部静脈血栓を発症した。

    健康だったが少し太っていたためダイエットをしようと思い、3日前から毎朝グレープフルーツを225g食べることを含むクラッシュダイエット(極端な食事制限)を始めた。前日に車を運転していて、腰から左足かかとにかけて痛みを感じ、次の日には左足が紫色になった。

    超音波診断の結果、彼女の左足の静脈には大きな血栓があり、腰からふくらはぎにかけて広がっていた。彼女には遺伝的に血栓ができやすいこと、経口避妊薬を飲んでいたこと、長時間ドライブしたことなどのリスク増加要因があり、3日間グレープフルーツを食べたことで血中エストロゲン濃度が増加し、バランスが崩れたものと考えられる。

    この事例はまれなものであるが、極端なダイエット方法は予想できない結果をもたらすことがあるので避けるべきである。彼女が使用していた薬は、レボチロキシン(甲状腺ホルモン剤)4年、ドロスピレノン(黄体ホルモン)とエチニルエストラジオール(卵胞ホルモン/エストロゲン)の低用量経口避妊薬が1年。煙草は吸わず、酒も滅多に飲まない。

    ヘパリン静注とtPAのカテーテル導入による血栓溶解治療後ステント挿入。退院後も抗血液凝固剤を処方して、経口避妊薬は中止。20092月現在、回復した。

     

    【作用機序】
    Wikipedia
    グレープフルーツ」(薬との相互作用)参照。

    ※フラノクマリン類:ベルガモチンやジヒドロキシベルガモチン。
    ベルガモチンはグレープフルーツの果肉や果皮に含まれ、脂肪細胞に働きかけて、アディポネクチンというタンパク質の分泌を高めると考えられている。

    独立行政法人 国立健康・栄養研究所HPより
    グレープフルーツと薬物の相互作用について(Ver.090129)

    グレープフルーツの影響はCYP3A4で代謝を受ける薬物で認められ、その作用機序は次のように考えられています。

     代謝を受けやすい薬物は、本来ならば小腸上皮細胞に存在する薬物代謝酵素CYP3A4によってある程度代謝を受け不活性化されるため、循環血液中に入る薬物量が少なくなります。しかし、グレープフルーツ中のフラノクマリン類がCYP3A4を阻害すると、薬物が不活性化されないため、循環血液中に入る薬物量は多くなり、その結果として体内濃度の指標となるAUCCmaxが大幅に増加し、結果として薬物が効きすぎてしまう状況になります。グレープフルーツジュース200mL 程度の摂取でもカルシウム拮抗薬(フェロジピン、ニソルジピン)の効果が増強されるとの報告があります。また、グレープフルーツの薬物に対する相互作用は長く持続し、長いものでは3-7日間持続するとの報告もあります。そのため相互作用の影響を解除するには、グレープフルーツの摂取を23日空けた方がよいとの考え方も示されています。

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  • 閉経後女性の静脈血栓症に影響する遺伝要因

    2007年02月15日


    【目的】
    フィブリン産生および溶解を活性化あるいは阻害する凝固蛋白および酵素の役割については明らかにされている。しかし、静脈血栓症(VT)のリスクに対するこれらの因子の遺伝子変異の影響については全く研究されていない。閉経後女性における静脈血栓症(VT)の発現と24の凝固・抗凝固・繊維素溶解・抗繊維素溶解候補遺伝子の変異の関連を調べた。

    【方法】
    デザイン:ワシントン州の総合ヘルスケアシステムにおける集団ベースの症例対照研究。

    対象:1995年1月から2002年12月に最初の静脈血栓症(VT)を発現した閉経期および閉経後の30-89歳の女性349例、および年齢、高血圧の状況、暦年がマッチしたコントロール1680例。

    測定項目:VTのリスクと関連する遺伝子の変異を一般的ハプロタイプ、個々のハプロタイプおよびSNPs分析により解析した。

    【結果】
    ・組織因子の阻害遺伝子のみ、リスクとの関連性が認められた。

    ・SNP解析では、3つの候補遺伝子(第5因子、第11因、タンパク質C)の5つのSNPがVTリスクと関連していた。

    ・15の遺伝子に他の22の変異のp値が0.05以下であった。このうち2つはすでに報告があり (fibrinogen genes および protein C)、2つは以前の報告と一致せず(thrombomodulin およびPAI1)、15は新しい発見であった。

    【結論】
    VTリスクとの関連が5つのSNPで認められ、このうち3つはこれまでに報告のないものであった。これらの事実を確認し、閉経女性におけるVTリスクにおよぼす遺伝要因を同定するため追試が必要である。

    【原著】
    Association of Genetic Variations With Nonfatal Venous Thrombosis in Postmenopausal Women.
    Nicholas L. Smith,JAMA. 2007;297(5):489-498.

    【弊社コメント】
    エストロゲンの副作用として静脈血栓症(VT)のリスクが一般的に知られていますが、そもそも静脈血栓症には遺伝要因が大きな影響を及ぼしているようです。そうであれば、将来的にはSNP解析ににより、事前に女性ホルモン補充療法を避けるべき人が確認できるようになる可能性があります。
    事前に遺伝子レベルの検査をして、リスクの少ない人にホルモン補充療法を行えば自ずと安心ですし、このような将来像が開ければ良いなと願っています。

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