-
2021年06月27日
【 目的 】
現在、更年期関連泌尿器症候群(GSM)および膣萎縮の確実な診断方法はない。そこで、3D高周波膣内超音波(3D EVUS)を用いて、GSMにおける膣壁厚(VWT)を評価し、また、VWTと閉経後の性機能障害との関連性を調査した。
【 方法 】
マルテペ大学病院の婦人科外来で、定期的婦人科検診を受けている閉経後女性について調査を行った。骨盤検査の後、すべての女性に対してGSMの症状を質問し、膣の健康スコアリングツールを適用した。GSMを持つ女性20名とGSMを持たない女性20名が対象となった。アウトカムはFSFIスコアおよび3D EVUS によるVWTである。
【 結果 】
・GSMの女性は、前壁および後壁のVWTが有意に低かった(それぞれP=.007、P=.049)。
・GSM群のFSFI総スコア、潤滑サブスコア、痛みサブスコアは、非GSM群よりも有意に低かった。
・前壁VWTはBMIおよびFSFIの痛みのサブスコアと正相関した(それぞれr=0.279, P=.047; r=0.344, P=.013)。
・前壁VWTは、年齢、閉経後の期間、FSFIの満足度サブスコアと有意に負相関した(それぞれ、r=-0.332, P=.017; r=-0.354, P=.011; r=-0.301, P=.032)。
・後壁VWTはFSFIの総スコア、覚醒、潤滑、痛みのサブスコアと正相関した(それぞれr=0.451, P=.001; r=0.437, P=.001; r=0.415, P=.002; r=0.335, P=.016;)。
<臨床的意義>
3D EVUSを用いたVWTの測定は、GSMの客観的診断のための有用な非侵襲的ツールとなり得る。
<強みと限界>
従来の経腹・経膣法では全膣厚しか測定できないことを考えると、本研究の主な強みは、3D EVUSを用いて前壁と後壁のVWTを別々に測定したことである。本研究の統計的検出力は十分である。本研究のサンプルサイズが小さいことが主な限界である。
【 結論 】
3D EVUSは、GSMの客観的な診断に使用できるほか、膣の前壁と後壁を別々に測定することができるため、閉経後の女性のさまざまな性機能障害の症状の原因を解明することができる。
【 原著 】
Hakan Peker, Ali Gursoy Nisantasi Vocational School, Nisantasi University, Istanbul, Turkey.
J Sex Med. 2021 Jul;18(7):1230-1235. doi: 10.1016/j.jsxm.2021.05.004. Epub 2021 Jun 27.
続きを読む
-
GSM(閉経関連泌尿性器症候群):有病率と治療に関するシステマティック・レビュー
2021年03月15日
【 目的 】
GSMの有病率とその治療法についての論文を系統的にレビューした。
【 方法 】
PubMed、CENTRAL、EMBASEにて論文検索を2020年10月まで実施した。システマティックレビューの対象は、閉経後の女性または40歳以上の女性において、婦人科検診の有無にかかわらずGSM症状の有無を評価するアンケートや問診によって行われた研究および調査である。
【 結果 】
・事前に定義した対象/除外基準を適用した結果、27件の研究がシステマティックレビューの対象となった。
・膣の乾燥、刺激、かゆみ、性交疼痛症などのGSM関連症状の有病率は13%から87%であった。
・GSMに特化した治療の使用率は、13%から78%であった。
・市販の潤滑剤および保湿剤が最も人気のある治療法であり(24.0%~85.5%)、次いで低用量の膣エストロゲン(4.8%~35.0%)であった。
・膣の健康について診察時に医師と話し合われることは少なく、症状や治療法の選択肢の数についての認知度は低い。
・女性は、ホルモン療法の長期的な安全性と副作用を懸念している。
・泌尿器系症状に悩む女性の大多数は、使用した治療法に不満を持っている。
【 結論 】
GSMは高頻度に見られるが、その原因や治療法についてはあまり知られていない。このレビューの結果は、GSMの診断と治療法に関する患者および医療従事者への教育の必要性を明らかにしている。
【原著】
Genitourinary syndrome of menopause: a systematic review on prevalence and treatment.
Mili N, Paschou SA, Armeni A, Georgopoulos N, Goulis DG, Lambrinoudaki I.
Menopause. 2021 Mar 15;28(6):706-716. doi: 10.1097/GME.0000000000001752.
2nd Department of Obstetrics and Gynecology, Medical School, National and Kapodistrian University of Athens, Athens, Greece.
続きを読む
-
サーチュイン1(SIRT1)発現に対するアンドロゲンおよびエストロゲンの影響
2020年05月10日
<目的>
ヒト大動脈内皮細胞(HAEC)におけるサーチュイン1(SIRT1)発現に対するアンドロゲンおよびエストロゲンの影響を調査した。<方法>
48時間にわたるSIRT-1発現のRT-PCR分析を、各種濃度のDHEA、アンドロステンジオンおよびテストステロン(アンドロゲン)、E1、E2、および E3(エストロゲン)にて処理されたHAECsにおいて時間経過の用量依存性を調査するためを行った。また、アンドロゲンおよびエストロゲンによって誘発されるSIRT1発現に対する高グルコースの影響を調査した。<結果>
・10~20μg/ mlのDHEA、アンドロステンジオン、テストステロンは、SIRT1発現を用量依存的に増加した。・高グルコース(40 mM)培地は、10μg/ mlの DHEA誘発SIRT1発現を有意に抑制した(p = 0.024)。
・10~20μg/ ml のE1およびE2は、SIRT1発現を用量依存的にに著明に増加した(p=0.007, p=0.005)が、E3には増加作用が認められなかった。
・20 mMまたは40 mMグルコース培地での処理は、対照培地に比してE1およびE3誘発SIRT1発現を有意に阻害しなかった。ただし、20 mMまたは40 mMの高グルコース培地での処理は、対照培地に比して、E2誘発SIRT1発現が顕著に高かった(p = 0.007、p = 0.005)。
<結論>
DHEA、アンドロステンジオン、テストステロン、E1、およびE2はHAECのSIRT1発現を明らかに活性化した。高グルコース培地は、基礎的な遺伝子発現を強力に阻害するが、アンドロゲンおよびエストロゲン誘発SIRT1発現を減少しなかった。
Effects of androgens and estrogens on sirtuin 1 gene expression in human aortic endothelial cells
AffiliationsDepartment of Internal Medicine, Dokkyo Medical University, Saitama Medical Center, Koshigaya, Japan.- PMID: 32291422
- DOI: 10.15537/smj.2020.4.25006
続きを読む
-
高齢婦人における局所の estrogen 投与は性生活を含むQOLを改善する
2015年10月28日
御茶ノ水・浜田病院 産婦人科 1), 帝京大学 医学部 産婦人科 2), 東京大学 医学部 産婦人科3)
合阪 幸三 1), 土屋 富士子 1), 末田 雅美 1), 能瀬 さやか 1), 板橋 香奈 1), 生月 弓子 1),
小畑 清一郎 1), 平池 春子 2), 平池 修 3)【目的】
閉経期の婦人では卵巣からの estrogen 分泌が低下する結果,外陰部の乾燥に伴う掻痒感,性交痛を訴え,QOLの低下を招いている. 今回このような女性に対する estrogen 含有クリームの有用性について検討した.【方法】
研究遂行に際して病院の倫理委員会に諮り許可を得た. 被験者には十分なインフォームドコンセントを行い同意を得た. 外陰部乾燥・掻痒感および性交痛を訴えた患者15例 (58.4 ± 2.6 歳)を対象とした. これらに6か月間 estrogen 含有クリーム製剤 (バストミンTM,大東製薬工業, 1g中に estradiol 0.6mg, ethinyl estradiol 0.2mg 含有)を 0.1g/day 外陰部に塗布させ,外陰部のかゆみ,乾燥度,性交痛を 0-3 の4段階に分けて評価した(A群). 患者には適宜白色ワセリンや性交時の潤滑ゼリーを使用するよう指導した. Estrogen 含有クリームの使用を希望しなかった10例をコントロールとした(B群, 57.8 ± 2.1 歳).【成績】
かゆみ(A: 2.8 ± 0.4 → 0.3 ± 0.2, B: 2.7 ± 0.5 → 1.1 ± 0.5, p<0.05), 乾燥度(A: 2.6 ± 0.5 → 0.3 ± 0.3, B: 2.8 ± 0.5 → 0.5 ± 0.6, n.s.), 性交痛(A: 2.9 ± 0.2 → 0.2 ± 0.2, B: 2.9 ± 0.3 → 1.8 ± 0.5, p<0.01)と,A群で有意に改善していた. 本試験期間中,薬剤投与による重篤な副作用は認められなかった.【結論】
Estrogen 含有クリーム製剤は外陰部乾燥,掻痒症および性交痛に悩む閉経期婦人のQOL改善に極めて有用であることが明らかとなった.第30回 日本女性医学学会学術集会 : 平成27年11月7日(土)・8日(日)
会場: メルパルク名古屋(愛知県名古屋市東区葵3-16-16)
ポスター6 「更年期障害」 演題 P-18続きを読む
-
2013年01月30日
弊社HPで「萎縮性腟炎について」と題し、「萎縮性腟炎の主な症状」「萎縮性腟炎の原因・発症のメカニズム」「注意ポイント」「萎縮性腟炎の治療」「女性ホルモン(エストロゲン)局所投与の選択肢」について記しました。 この機に是非ご参照くださいませ。
近年の臨床応用の結果から、エストロゲン・クリーム「バストミン」(指定第2類医薬品)によるエストロゲンの局所投与の有用性が明らかになっています。
続きを読む
-
女性では低2D:4D比は拒食症と関連し、高2D:4D比は過食症と関連する
2011年07月29日
【 目的・方法 】
摂食障害は男性よりも女性に多く、原因は部分的に生物学的およびホルモン因子によるものと信じられている。2D:4D比は胎生期のテストステロン(PT)およびエストロゲン(PE)暴露を反映している。しかし、2D:4D比が摂食病理のタイプに関連しているかは分かっていない。
2D:4D比と摂食障害の関係を摂食障害の回復および現行症例31例(女性)およびコントロール女性99例にて検討した。【 結果 】
- 拒食症の女性は過食症の女性に比して2D:4D比が有意に低かった(PTが高く、PEが低い)。対してコントロールはその中間であった。
- 摂食障害の女性では2D:4D比が現在の体重、最低体重、現在のBMIと有意に比例していた。特に右手の2D:4D比と強い関連性があった。
【 結論 】
女性では低2D4Dは拒食症と関連し、高2D4Dは過食症と関連していた。これは出生後の摂食病理に対する胎生期の性ホルモンの異なった作用を示唆するものである。【 原著 】
Pers Individ Dif. 2011 Sep;51(4):402-405.
The 2 to 4 digit ratio (2D:4D) and
eating disorder diagnosis in women.
Quinton SJ, Smith AR, Joiner T.
School
of Psychology, Charles Stuart University, Bathurst, NSW 2795,
Australia続きを読む
-
生殖期女性および更年期女性における、卵胞ホルモン含有軟膏剤の皮膚に及ぼす影響の検討
2008年11月16日
日本更年期医学会 第23回学術集会
横浜・2008年(平成20年) 11月16日(日) 第2会場 やまゆり一般口演 演題番号58
生殖期女性および更年期女性における、卵胞ホルモン含有軟膏剤の皮膚に及ぼす影響の検討ウィミンズ・ウェルネス銀座クリニック婦人科
関根さおり, 江夏亜希子, 関根美香, 対馬ルリ子【目的】
更年期女性の主訴の1つである皮膚症状(乾燥感,菲薄化,色素沈着など)を改善することは日常生活を楽にするだけでなく,アンチエイジングの観点からも重要である. 今回我々は卵胞ホルモン含有軟膏剤(以下,軟膏剤)が更年期女性の皮膚の状態をどの程度改善するか,またその効果が生殖器女性とどのように違うかにつき比較検討したので報告する.【方法】
生殖器女性(25~40歳)および更年期女性(45~55歳)各20名を対象とした. 各年代において軟膏剤投与群と非投与群を各10名とし,投与期間は4週間連日とした. 投与前,投与開始後2週間,投与終了時で皮膚の状態(皮丘の数,毛穴の数,毛穴の総面積,肌色)を測定した. 血清エストラジオール値・エチニルエストラジオール値の変動測定,使用前後の主観的皮膚変化についての調査も実施した.【成績】
各年代において,軟膏剤は皮膚のきめ細かさ,明度を有意に改善した.更年期女性における変化は数値に表れる以上に,本人の主観的変化や満足度が大きかった.【結論】
皮膚症状を持つ更年期女性だけでなく,アンチエイジング効果を期待する全ての更年期女性において軟膏剤の適切な投与は症状の改善および満足度の上昇に繋がる可能性がある.続きを読む
-
2006年10月10日
【背景】
乳癌とアルコールおよび繊維の摂取との関係は、乳癌リスクの予測因子である性ホルモンに仲介されたものである。【目的】
閉経前の女性における性ホルモンレベルとアルコールおよび食物繊維摂取の関係を調査した。【方法】
対象は閉経前の女性205例。調査開始時および2年後に摂取食物頻度調査表への回答を得た。同じ時期に、血清性ホルモン濃度の測定を行った。【結果】
・アルコールは中等度に血清エストロゲンレベルと関連していた。1日1杯以上飲む女性は飲まない女性よりE2が20%高かった(Ptrend=0.07)。・反対に高食物繊維の摂取はアンドロステンジオンの低値と関連し、エストロゲンとの関連はなかった。
・同様に、フルーツ、野菜および穀物の摂取はアンドロステンジオン・レベルと逆の関連を示した。
【結論】
アルコールと食物繊維の摂取に伴う性ホルモンレベルの差異はこれらの栄養学的因子が性ホルモンレベルに影響を及ぼし、乳がんの原因と予防に一定の役割を果たしている事を示すものである。【原著】
Alcohol and dietary fibre intakes affect circulating sex hormones among premenopausal women.
Maskarinec G, Public Health Nutr. 2006 Oct;9(7):875-81.【参考記事】
アルコール摂取とホルモン補充療法とが組み合わされば乳癌リスクが上昇する。
2005-11-08 13:45:30-0400(ロイターヘルス)発ニューヨーク(ロイターヘルス)-
アルコール飲料を摂取した場合、特に閉経後のホルモン補充療法(HRT)を受けている女性では、エストロゲン受容体(ER)陽性の乳癌のリスクが上昇することが、一般集団ベースのSwedish Mammography Cohort から得られたデータにより示されている。
アルコールを摂取すれば、エストロゲン産生量の増加またはエストラジオールの代謝クリアランス低下のいずれかにより、内因性ホルモンへの女性の曝露が増大すると考えられる。
◎アルコールと乳癌に関する42件の研究をまとめたメタアナリシスでは、1日ワイン1 杯(アルコール12g)程度の少量飲酒でも10%のリスク上昇があり、飲酒量が増えればリスク も直線的に上昇するという結果です(Am J Epidemiol 154:740-747、2001)
◎野菜と果物で、乳がんリスクの低下なし。ヨーロッパ8カ国の女性28万人を平均5.4年間追跡したところ、野菜や果物を多く食べるグループでも、乳がんの発生率は低くなかった。オランダのグループによるこの研究は、米国医学雑誌2005年1月12日号に報告された。
出典 van Gils CH, et al. Consumption of vegetables and fruits and risk ofbreast cancer. Journal of American Medical Association 2005;293:183-193
【弊社コメント】
一般的に、飲酒が乳がんの危険因子であると言われていますが、毎日飲酒を続けている女性は、エストロゲンのレベルが2割高くなっているようです。
すなわち、女性が毎日飲酒を続けることが、高いエストロゲンレベルを維持させてしまうことになり、それが乳がんの危険につながっているのでは?という印象を受けます。一方、アンドロステンジオンは、高食物繊維をはじめ、フルーツ、野菜、穀物を良く摂取する女性の方が低いという結果だったようです。
アンドロステンジオンは、エストロゲンの元になる物質ですから、アンドロステンジオンが低くなれば、エストロゲンも低くなるのかな…と思いたいところですが、今回の結果によると、エストロゲンとの関連が無かったようです。他の要因がエストロゲンの値に大きく影響していたのかも知れません。
毎日お酒を飲んでも、食物繊維や菜食を良く摂取していれば乳がんのリスクを帳消しに出来る…、あるいは、お酒を飲まなくても食物繊維や菜食が乳がんの予防になる…、と言えれば良かったのですが、残念ながら、現状では言えないようです。
お酒好きの女性の皆様、乳がん予防の観点からは、毎日の飲酒はなさらぬ方が良さそうです。(福)
続きを読む