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Category:テストステロンと前立腺

  • ラット前立腺は血清テストステロンの低下に対して組織濃度を機能的レベルに維持するように働く

    2013年05月29日


    【 目的 】
    前立腺癌(PC)は加齢およびアンドロゲン依存性疾患である。加齢に伴うアンドロゲンレベルの低下とは逆説的に、PCのリスクは上昇する。全身性のアンドロゲンレベルとPCリスクの間に相関性はないが、全身性のアンドロゲンレベルは前立腺組織のアンドロゲンレベルを反映していない。転移性PCにおいて、ホルモン療法中のアンドロゲン生合成経路の変化は癌組織のアンドロゲンレベルを高め、アンドロゲン受容体(AR)シグナリングの持続の原因となっている。加齢に伴うアンドロゲンの低下と共に正常前立腺組織において同様の変化がおき腫瘍発生の原因となっている可能性がある。
    ラット前立腺が血清テストステロン(T)の低下にも関わらず組織濃度を機能的レベルに維持するか否かを検討した。

    【 方法 】
    ラットを去勢し、Tを去勢レベル、正常レベル、正常下限レベルおよび非生理的レベルに維持するカプセルを移植した。6週後にLC-MS/MSにて血清および前立腺のTおよびDHTを測定した。QRT-PCRにてアンドロゲン/ARシグナリングに関連する遺伝子の発現を測定した。

    【 結果 】

    • 有意に差異がある血清TおよびDHTレベルいにも関わらず、各群の前立腺のTおよびDHT濃度は同様であった。
    • 前立腺のアンドロゲン調整遺伝子の発現は全群で同様であり、ラット前立腺は、血清Tの低下にも拘らず機能的レベルのアンドロゲンを維持していた。

    【 結論 】
    テストステロンの低下はアンドロゲン生合成遺伝子の発現を有意に変えた。

    【 原著 】
    J Mol Endocrinol. 2013 May 24.
    Low systemic testosterone levels induce androgen maintenance in benign rat prostate tissue.
    Zhou Y, Otto-Duessel M, He M, Markel S, Synold T, Jones JO.

    Y Zhou, Molecular Pharmacology, City of Hope Beckman Research Institute, Duarte, United States.

    【 弊社コメント 】
    以前から言われていたと思いますが、アンドロゲン(男性ホルモン)のレベルは血清と前立腺組織では異なる事に加え、血清レベルが低下すれば前立腺組織だけはそれを維持しようと反応するという現象です。生殖能を維持しようとする仕組みかもしれません(野)。

    古来より前立腺癌に対するテストステロン悪玉説が指摘されて来ましたが、皮肉なことに、研究が進むほど「テストステロンの欠乏が前立腺癌の発症リスクにつながる」という機序が示唆されつつあります。
    テストステロンが多過ぎても、少な過ぎても、様々な健康リスクになることが判りつつあります。 そして、加齢で少な過ぎる分は、健康的な生活習慣(適度な食事と運動、睡眠)をベースに、それでも不足し過ぎない程度のテストステロンを少しずつ補充するのが最善と思うのです(福)。

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  • 下部尿路症状患者に対するテストステロン単独療法

    2013年05月15日


    【 目 的 】
    前立腺肥大症(BPH)の治療を行なわず、下部尿路症状(LUTS)のある患者に対するテストステロン補充療法(TRT)の実際的効果を検討した。

    【 方 法 】
    テストステロン・アンデカノエイト100㎎/3カ月筋注によるTRTを1年以上受けている246例について検討した。このうち17例が中等度のLUTSで、最大尿流速度10 ml/sであったが、TRT期間中BPHの治療を受けていなかった(他の229例はBPHの治療を受けていた)。PSA、IPSSおよび尿流速の変化をTRT前後で計測した。

    【 結 果 】

    • 1年間のTRT後、PSAには変化なかった(p=0.078)。
    • BPH治療群(n=229)と比較して、BPH非治療群の開始時の前立腺に関する検査値、前立腺容積、IPSS、最大尿流率、排尿量およびPSAには差がなかったが、残尿量の中央値はBPH非治療群で高かった(21 ml vs. 10 ml)。
    • 1年間のTRT後、BPH非治療群において、総IPSSスコア、蓄尿および排尿スコアの両者は有意に減少した。一方最大尿流率および残尿量には変化がなかった。
    • 調査期間15ヶ月間(中央値)中、尿閉、BPHに関連した手術、あるいは尿路感染症による入院はなかった。

    【 結 論 】
    中等度のLUTSおよび相対的に最大尿流率が保たれたBPH非治療患者に対する1年以上のTRTは蓄尿および排尿症状を改善し、BPHの進展およびPSAの上昇は見られなかった。

    【 原 著 】
    World J Mens Health. 2013 Apr;31(1):47-52. Epub 2013 Apr 23.
    Testosterone replacement alone for testosterone deficiency syndrome improves moderate lower urinary tract symptoms: one year follow-up.
    Ko YH, Moon du G, Moon KH.
    Department of Urology, Yeungnam University College of Medicine, Daegu, Korea.

     

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  • 低バイオアベイラブル・テストステロンおよび高SHBGは生検による前立腺癌検出リスクが4.9および3.2倍高い

    2012年11月30日


    【 目的 】
    近年の研究はテストステロン・レベルと前立腺癌(PC)の間に負の関係を示している。PC診断におけるホルモン・パターンの有用性に関しては異論が多い。そこで、ホルモンパターンとPCの関係およびPCリスク評価のホルモン・レベルのカットオフ値を検討した。

    【 方法 】
    2006年11月~2009年5月の間に前立腺生検を行った279例について遡及的解析を行った。前立腺生検の適応の指標は直腸診(DRE)の結果、あるいはPSAの上昇によるPCの疑いである。スクリーニングは5+5コア経直腸超音波ガイド前立腺生検で行った。年齢、前立腺容積、DRE(正常または異常)、生検所見(正常またはPC)、PSA、遊離型/総PSA比、PSA密度、テストステロン(T)およびSHBGを遡及的に調査した。遊離およびバイオアベイラブル・テストステロン(BT)はVermeulen’s formulaを用いて求めた。

    【 結果 】

    • 多変量解析において、DREの異常、SHBG levels ≥ 66.25 nmol/l、およびBT≤ 104 ng/dlが前立腺癌の診断と関係していた。オッズ比は各々 5.46, p < 0.001、3.27; 95%CI 1.52 to 7.04, p < 0.002、および4.92, 95% CI 1.78 to 13.59, p = 0.002であった。
    • 年齢、FT、PSA、T、PSA/T、PSA/FTおよびPSA/BTはPCの診断と関係していなかった。

    【 結論 】
    低バイオアベイラブル・テストステロンおよび高SHBGは生検による前立腺癌検出リスクが4.9および3.2倍高かった。この事実は前立腺癌リスクについてカウンセリングする患者さんの臨床的シナリオに有用である。

    【 原著 】
    Scand J Urol Nephrol. 2012 Nov 27.
    Higher sex hormone-binding globulin and lower bioavailable testosterone are related to prostate cancer detection on prostate biopsy.
    García-Cruz E, Carrión Puig A, García-Larrosa A, Sallent A, Castañeda-Argáiz R, Piqueras M, Ribal MJ, Leibar-Tamayo A, Romero-Otero J, Alcaraz A.
    Urology Department, Hospital Clínic Barcelona , Barcelona , Spain.

     

    (さらに…)

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  • アンドロゲン受容体GGC繰り返し多型と前立腺肥大症および前立腺癌リスク

    2012年11月29日


    【 目的 】
    アンドロゲン受容体(AR)のGGC繰り返し多型はアンドロゲン反応性遺伝子の転写活性に影響し、前立腺肥大症(BPH)および前立腺癌(PCa)のリスクを上げる。そこで、南ブラジルの男性集団におけるGGC繰り返し長、テストステロン・レベルおよびPCaおよびBPH発現リスクの間の関連性を検討した。

    【 方法 】
    PCa患者130例、BPH患者126例およびコントロール患者88例について検討した。DNAは白血球より抽出し、分画分析により解析した。ハザード比(HR)を測定した。

    【 結果 】

    • GGC平均長は3群間で差異がなかった。
    • GGC > 19の集団のPCa発現リスクはGGC ≤ 19群と比較したとき3.300 倍(95 %CI 1.385-7.874)高かった (p = 0.007)。
    • 総テストステロン<4 ng/mL群のPCaおよびBPH発現リスクは2.799倍 (95 % CI 1.362-5.754). (p = 0.005) および2.786倍 (95 % CI 1.470-5.280) (p = 0.002)高かった。
    • GGC > 19群の総テストステロンはGGC ≤ 19群より有意に低かった。

    【 結論 】
    アンドロゲン受容体のGGC繰り返し長の上昇はPCaおよびBPHリスクの上昇と関連し、低テストステロンもこれら疾患の発現リスクの上昇を示唆した。

    【 原著 】
    Mol Biol Rep. 2012 Nov 27.
    Androgen receptor GGC polymorphism and testosterone levels associated with high risk of prostate cancer and benign prostatic hyperplasia.
    Biolchi V, Neto BS, Pianta DB, Koff WJ, Berger M, Brum IS.
    Department of Physiology, Universidade Federal do Rio Grande do Sul, Porto Alegre/RS, Brazil

    【 弊社コメント 】
    疾病の有無の3群間で比較するとGGC繰り返し長に差がないが、GGC繰り返し長で分けてみるとPCaおよびBPHリスクに差があるという、一見しては理解しずらいところもあります。 テストステロン感受性の面からみれば理解できます。 これまでCGA多型について多数報告がありましたがGGC繰り返し長という切り口は初めてです。(野)

    低過ぎるテストステロン状態」が前立腺肥大症や前立腺癌のリスクを高める、という機序の一端が示されました。(福)

     

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  • テストステロンはメタボリックシンドロームによる前立腺の変化を防止する

    2011年11月16日


    【 目 的 】
    メタボリックシンドローム(MS)は、しばしばBPH/LUTS
    と関連している。これらの共通の疾患として性腺機能低下症がある。しかし、テストステロン補充は前立腺に対する副作用のため制限がある。
    そこで、MSに関連した前立腺の変化がT補充により防禦されるか否かを検討した。

    【 方 法 】
    高脂肪食(HFD)で12週間飼育した雄性ラットをMSの動物モデルとして用いた。HFDウサギに対してテストステロンまたはファルセノイド受容体XアゴニストINT-747を投与した。正常食で飼育したウサギをコントロールとして用いた。

    【 結 果 】

    • HFDウサギは性腺機能低下症を発現し、MS症状の全て、高脂血症、耐糖能低下、脂質異常、高血圧、内臓肥満を呈した。加えて前立腺の炎症を示した。
    • 免疫組織学的分析で、HFDによる前立腺の繊維化、低酸素血症および炎症の誘発が認められた。
    • HFDウサギの前立腺において、催炎症物質(IL-8,
      IL-6, IL-1β, TNFα)、Tリンパ球(CD4, CD8, Tbet, Gata3, ROR γt), マクロファージ(TLR2, TLR4,
      STAMP2), 好中球(lactoferrin), 炎症(COX2, RAGE), および fibrosis/myofibroblast
      activation(TGFβ, SM22-α, α-SMA, RhoA, ROCK1/ROCK2)に関わるマーカー
      のmRNAの発現が有意に上昇していた。
    • テストステロンはINT747と同様に幾つかのMS症状を防止したが、全てのHFDによる前立腺変化を正常化したのはテストステロンだけであった。
    • 興味あることに、テストステロンとエストラジオールの比は繊維化および炎症マーカーとの有意なネガティブな関連を示した。

    【 結 論 】
    この結果は、テストステロンがBPH/LUTSの発現に繋がるメタボリック・シンドロームによる前立腺の繊維化、低酸素血症および炎症を防止することを示している。

    【 原 著 】
    J Endocrinol. 2011 Oct 18.
    Testosterone protects from
    metabolic syndrome-associated prostate inflammation: an experimental study
    in rabbit.

    Vignozzi L, Morelli A, Sarchielli E, Comeglio P, Filippi S, Cellai
    I, Maneschi E, Gacci M, Serni S, Carini M, Piccinni MP, Saad F, Adorini L,
    Vannelli GB, Maggi M.
    L Vignozzi, Sexual Medicine and Andrology Unit,
    University of Florence, Florence, Italy.

    【  弊社コメント 】
    テストステロンの多様な作用が動物実験レベルで機序的に解明されつつあります。(野)

    メタボリック・シンドロームが前立腺疾患の原因となる一方、テストステロンの補充が予防や回復に役立つ可能性が示唆されます。(福)

    【 弊社注釈 】

    Farnesoid
    X
    receptor (FXR)

    胆汁酸を生理的リガンドとし、胆汁酸代謝制御に重要な役割を果たすと考えられている核内受容体型転写因子。 近年、胆汁酸トランスポーターの発現や肝細胞における胆汁酸合成調節(律速酵素Cyp7α1)に関与していることが明らかにされており、FXRの胆汁うっ滞性疾患への関与やFXR分子機構に基づく創薬の可能性が注目されている。

    INT-747
    胆汁酸をリガンドとする核内レセプターであるFXR(Farnesoid
    X receptor)への作動薬(*3)であり、肝臓内での胆汁酸増加に伴う細胞毒性や肝線維化に対する治療効果が期待されます。Intercept 社は本剤を、PBC
    の適応取得を目指して欧米で第Ⅲ相臨床試験準備中であり、世界初のNASH
    の適応取得を目指して米国で後期第Ⅱ相臨床試験をこのほど開始しました。また、門脈圧亢進症については米国で第Ⅱ相臨床試験準備中の段階にあります。なお、NASH
    に対する後期第Ⅱ相臨床試験は、米国NIH(米国国立衛生研究所)によって実施中です。

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  • 低テストステロンは前立腺癌に局在するグリソンパターン4の高頻度と関連している

    2011年09月07日


    【 目 的 】
    術前のテストステロン値とグリソンスコアおよび優勢型による前立腺癌の悪性度との関連性を検討した。

    【 方 法 】
    2007年1月から2011年1月の間に前立腺切除のため受診した患者の、術前の血清総テストステロンを測定した。グリソンスコアおよびグリソンパターンを前立腺生検および前立腺組織標本にて判定した。試験はプロスペクティブに行い、登録症例数は431例である。

    【 結 果 】

    • 生検において、グリソンパターン4は72例(17%)に認められた。
    • 前立腺標本において、グリソンパターン4は132例(31%)に認められた。
    • グリソンパターン4の132例の総テストステロンはグリソンパターン3の299例より有意に低かった(4.00
      vs 4.50 ng/ml, p = 0.001)。
      また、PSAは高く (8.4 vs 6.6 ng/ml, p <0.00001),
      前立腺外への伸張およびポジティブな範囲が目立った(49% vs 20% and 23% vs 14%, p<0.000001 and
      0.02, respectively)。
    • 総テストステロンが3.0 ng/ml以下の62例は高いBMI (mean 0.5 kg/m(2), p<0.000001)を伴い、より大きかった(mean 7 kg, p = 0.0001)。
      これらの群ではグリソンパターン4の比率が高かった(47% vs
      28%, p =
      0.002)。

    【 結 論 】
    低テストステロンは進行型前立腺癌を示すグリソンパターン4の高比率と関連していた。腫瘍の進行度は生検では正確に推定できない。術前のテストステロン値は前立腺癌の管理の改善のためPSA測定に加えられるべきである。

    【 原 著 】
    J Urol. 2011 Aug 17.
    High Incidence of Predominant
    Gleason Pattern 4 Localized Prostate Cancer is Associated With Low Serum
    Testosterone.

    Botto H, Neuzillet Y, Lebret T, Camparo P, Molinie V, Raynaud
    JP.
    Department of Urology, Foch Hospital, Suresnes, France.

    【 弊社注釈 】 グリソン・パターンの定義

    前立腺癌の形態は「グリソンパターン (グリソン分類)」として次の5つに分類されており、また悪性度(俗に言う「癌細胞の顔つき」)は、国際的にグリソンスコアで表現されています。

    Gleason
    pattern 1

    均一で独立した中型腺管が密在し、明瞭な結節を作る。

    Gleason pattern 2

    上記と同様の結節が認められるが、部分的な最小限の浸潤傾向、やや低い腺管密在性、軽度の大小不同が見られる。

    Gleason pattern 3

    明瞭な管腔を有する独立腺管よりなる。pattern
    1,2と異なり既存の非腫瘍性腺管の間に浸潤する。腺管は概して小型であるが中型~大型のこともありうる。篩状腺管は小型で境界が完全に平滑なものが含まれるが、ごく稀である。

    Gleason
    pattern 4

    癒合腺管、篩状腺管、hypernehromatoid、不明瞭な腺管形成を示すもの

    Gleason pattern 5

    充実性、索状、孤在性、面疱状壊死

    【 弊社コメント 】
    進行度の高い前立腺癌の人は、テストステロン値が有意に低いとのことですが、前立腺癌の進行がテストステロンを低くするのか、それともテストステロン分泌の低い状態が前立腺癌の進行度を高めてしまうのでしょうか?興味は尽きません。(福)

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  • 低テストステロン患者は前立腺癌リスクが高い

    2011年01月25日


    【 目的 】
    前立腺癌リスクの予測におけるテストステロンの役割、およびその高グリソン・スコアとの関連性を、前立腺生検を行った患者において検討した。

    【 方法 】
    対象は前立腺生検を行った568例の患者。患者をテストステロン3.85
    ng/mlを境に高テストステロン群(n=285、高T群)
    および低テストステロン群(n=283、低T群)に分けた。
    多変量回帰分析により、年齢、前立腺容積、PSA、およびPSADの影響、および前立腺癌リスクおよび高グリソン・スコアに対するテストステロンの影響を調査した。

    【 結果 】

    • 低T群は高T群に比して前立腺癌の発症率が有意に高かった(38.9%
      vs. 29.5%, p=0.018)。
    • 前立腺癌のリスクの上昇に関連する因子は年齢([OR]=1.08, 95%
      [CI]=1.25-3.16,p=0.001), 高PSA(OR=3.35, 95% CI=2.63-4.25, p=0.001),
      低前立腺容積(OR=0.183,95% CI=0.11-0.30, p=0.001), および低テストステロン(OR=1.99,
      95%CI=1.25-3.16, p=0.001)であった。
    • PSAのみが高グレード前立腺癌(グリソン・スコア≧7)の強い予測因子であった(OR=2.19, 95% CI=1.57-2.95,
      p=0.001)。

    【 結論 】
    低テストステロンの患者は高テストステロンの患者よりも前立腺癌のリスクが高い。低テストステロンは前立腺癌リスクの予測因子であるが、高グレード前立腺癌へのリスクの上昇とは関連がない。

    【 原著 】
    Korean J Urol. 2010 Dec;51(12):819-23. Epub 2010 Dec 21.
    Is a decreased serum
    testosterone level a risk factor for prostate cancer? A cohort study of
    korean men.

    Shin BS, Hwang EC, Im CM, Kim SO, Jung SI, Kang TW, Kwon DD, Park
    K, Ryu SB.
    Department of Urology, Chonnam National University Medical School,
    Gwangju, Korea.

    【 弊社コメント 】
    テストステロンが多過ぎると前立腺癌になるのでは?」ひいては「男性ホルモン剤を投与すると前立腺癌になるのでは?」という指摘は、今や古い迷信になりつつあり、むしろテストステロンの分泌不足が前立腺癌のリスク要因と考えざるを得ない検討結果が出揃いつつあります。

    前立腺癌は10~20年かけて進行するとはいえ、加齢にともない特に50歳代から発症する人が多くなる一方、テストステロンの分泌が旺盛な20歳代では極めて少ないわけですから、テストステロンが多過ぎることよりも、40歳前後の頃からテストステロンの分泌が衰え「テストステロンの不足」になることが発症の原因と考える方が自然ではないでしょうか。発症してから顕在化するまで10~20年かかるという話にも符合すると思います。

    そうなりますと、自ずと30歳代・40歳代にかけてテストステロンが不足しないような生活習慣(バランスの取れた食生活・適度な運動・ストレスの発散)を維持することがますます重要となり、それでも加齢にともないテストステロンの分泌が低下する状況に対しては、早めに生理的範囲のテストステロン補充をする事こそ「前立腺癌の予防」になるのではないかと考えられ、今後の検討が期待されます。(福)

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  • アンドロゲン補充療法は軽度のBPH(前立腺肥大症)を合併する性腺機能低下男性の下部尿路症状を改善する

    2011年01月12日


    【 目 的 】
    前立腺肥大症(BPH)を合併する性腺機能低下男性の下部尿路症状(LUTS)に対するアンドロゲン補充療法(ART)の効果に関する無作為コンロール試験を行った。

    【 方 法 】
    性腺機能低下症およびBPHを合併する52例をエナント酸テストステロン250mg/4週、筋注によるART群または未治療のコントロール群に無作為に割り付けた。
    開始前および治療12カ月後のIPSS(国際前立腺症状スコア)、尿流量測定データ、排尿後の残尿量(PVR)および全身の筋肉量を比較した。

    【 結 果 】

    • 解析対象となったのはART群23例、コントロール群23例の計46例である。
    • 12カ月後、IPSSはART群では開始時に比して有意に低下した( 15.7 ± 8.7 vs. 12.5 ± 9.5; p < 0.05 )が、コントロール群では有意な変化はみられなかった。
    • ART群は最大尿流率および排尿量の有意な改善を示したが、コントロール群では有意な改善は見られなかった。
    • PVRは両群で有意な変化がみられなかった。
    • ART群は平均筋肉量の有意な増加を示したが(p < 0.05)、コントロール群では有意な変化が見られなかった。

    【 結 論 】
    アンドロゲン補充療法は軽度の前立腺肥大症を合併する性腺機能低下男性の下部尿路症状を改善した。

    【 原 著 】
    Aging Male. 2010 Dec 21.
    Androgen replacement therapy
    contributes to improving lower urinary tract symptoms in patients with
    hypogonadism and benign prostate hypertrophy: a randomised controlled
    study.

    Shigehara K, Sugimoto K, Konaka H, Iijima M, Fukushima M, Maeda Y,
    Mizokami A, Koh E, Origasa H, Iwamoto T, Namiki M.
    Department of
    Integrative Cancer Therapy and Urology, Kanazawa University Graduate School
    of Medical Science, Kanazawa, Ishikawa, Japan.

    【 弊社注釈 】 (リンク先: 参照資料)

    「下部尿路症状 (Lower Urinary Tract Symptoms: LUTS)」
    下部尿路機能障害による排尿障害からの排尿症状と蓄尿障害からの蓄尿症状を併せたものです。

    下記の「排尿障害」と「蓄尿障害」は、下部尿路症状(LUTS)の一部分となります。

    「排尿障害」
    排尿症状は尿をスムースに出せない症状で、排尿困難・排尿開始遅延・腹圧性排尿など。

    「蓄尿障害」
    蓄尿症状は、尿をうまく溜められない症状で、頻尿・尿意切迫感・尿失禁など。

    【 弊社コメント 】
    一般に、前立腺肥大症に対して男性ホルモンは症状を促進させると言われていることから、特に重症の前立腺肥大症の男性には男性ホルモンの補充をお勧めしておりませんが、軽症の人であれば、本報によると1年のテストステロン補充で有意に下部尿路症状が改善したことから、安心して男性ホルモンの補充が出来るものと期待されます。
    なお、グローミンによる男性ホルモンの補充でも、下部尿路症状を改善することが報告されています。
    男性ホルモンの分泌不足が排尿や蓄尿をコントロールする筋肉量の低下を招き、下部尿路症状を起こしていたとすれば、テストステロンの補充でこれらの筋肉を取り戻すことにより、症状が改善したのかも知れません。 (福)

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