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テストステロンはメタボリックシンドロームによる前立腺の変化を防止する

2011年11月16日


【 目 的 】
メタボリックシンドローム(MS)は、しばしばBPH/LUTS
と関連している。これらの共通の疾患として性腺機能低下症がある。しかし、テストステロン補充は前立腺に対する副作用のため制限がある。
そこで、MSに関連した前立腺の変化がT補充により防禦されるか否かを検討した。

【 方 法 】
高脂肪食(HFD)で12週間飼育した雄性ラットをMSの動物モデルとして用いた。HFDウサギに対してテストステロンまたはファルセノイド受容体XアゴニストINT-747を投与した。正常食で飼育したウサギをコントロールとして用いた。

【 結 果 】

  • HFDウサギは性腺機能低下症を発現し、MS症状の全て、高脂血症、耐糖能低下、脂質異常、高血圧、内臓肥満を呈した。加えて前立腺の炎症を示した。
  • 免疫組織学的分析で、HFDによる前立腺の繊維化、低酸素血症および炎症の誘発が認められた。
  • HFDウサギの前立腺において、催炎症物質(IL-8,
    IL-6, IL-1β, TNFα)、Tリンパ球(CD4, CD8, Tbet, Gata3, ROR γt), マクロファージ(TLR2, TLR4,
    STAMP2), 好中球(lactoferrin), 炎症(COX2, RAGE), および fibrosis/myofibroblast
    activation(TGFβ, SM22-α, α-SMA, RhoA, ROCK1/ROCK2)に関わるマーカー
    のmRNAの発現が有意に上昇していた。
  • テストステロンはINT747と同様に幾つかのMS症状を防止したが、全てのHFDによる前立腺変化を正常化したのはテストステロンだけであった。
  • 興味あることに、テストステロンとエストラジオールの比は繊維化および炎症マーカーとの有意なネガティブな関連を示した。

【 結 論 】
この結果は、テストステロンがBPH/LUTSの発現に繋がるメタボリック・シンドロームによる前立腺の繊維化、低酸素血症および炎症を防止することを示している。

【 原 著 】
J Endocrinol. 2011 Oct 18.
Testosterone protects from
metabolic syndrome-associated prostate inflammation: an experimental study
in rabbit.

Vignozzi L, Morelli A, Sarchielli E, Comeglio P, Filippi S, Cellai
I, Maneschi E, Gacci M, Serni S, Carini M, Piccinni MP, Saad F, Adorini L,
Vannelli GB, Maggi M.
L Vignozzi, Sexual Medicine and Andrology Unit,
University of Florence, Florence, Italy.

【  弊社コメント 】
テストステロンの多様な作用が動物実験レベルで機序的に解明されつつあります。(野)

メタボリック・シンドロームが前立腺疾患の原因となる一方、テストステロンの補充が予防や回復に役立つ可能性が示唆されます。(福)

【 弊社注釈 】

Farnesoid
X
receptor (FXR)

胆汁酸を生理的リガンドとし、胆汁酸代謝制御に重要な役割を果たすと考えられている核内受容体型転写因子。 近年、胆汁酸トランスポーターの発現や肝細胞における胆汁酸合成調節(律速酵素Cyp7α1)に関与していることが明らかにされており、FXRの胆汁うっ滞性疾患への関与やFXR分子機構に基づく創薬の可能性が注目されている。

INT-747
胆汁酸をリガンドとする核内レセプターであるFXR(Farnesoid
X receptor)への作動薬(*3)であり、肝臓内での胆汁酸増加に伴う細胞毒性や肝線維化に対する治療効果が期待されます。Intercept 社は本剤を、PBC
の適応取得を目指して欧米で第Ⅲ相臨床試験準備中であり、世界初のNASH
の適応取得を目指して米国で後期第Ⅱ相臨床試験をこのほど開始しました。また、門脈圧亢進症については米国で第Ⅱ相臨床試験準備中の段階にあります。なお、NASH
に対する後期第Ⅱ相臨床試験は、米国NIH(米国国立衛生研究所)によって実施中です。

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