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アンドロゲン補充療法は軽度のBPH(前立腺肥大症)を合併する性腺機能低下男性の下部尿路症状を改善する
2011年01月12日
【 目 的 】
前立腺肥大症(BPH)を合併する性腺機能低下男性の下部尿路症状(LUTS)に対するアンドロゲン補充療法(ART)の効果に関する無作為コンロール試験を行った。【 方 法 】
性腺機能低下症およびBPHを合併する52例をエナント酸テストステロン250mg/4週、筋注によるART群または未治療のコントロール群に無作為に割り付けた。
開始前および治療12カ月後のIPSS(国際前立腺症状スコア)、尿流量測定データ、排尿後の残尿量(PVR)および全身の筋肉量を比較した。【 結 果 】
- 解析対象となったのはART群23例、コントロール群23例の計46例である。
- 12カ月後、IPSSはART群では開始時に比して有意に低下した( 15.7 ± 8.7 vs. 12.5 ± 9.5; p < 0.05 )が、コントロール群では有意な変化はみられなかった。
- ART群は最大尿流率および排尿量の有意な改善を示したが、コントロール群では有意な改善は見られなかった。
- PVRは両群で有意な変化がみられなかった。
- ART群は平均筋肉量の有意な増加を示したが(p < 0.05)、コントロール群では有意な変化が見られなかった。
【 結 論 】
アンドロゲン補充療法は軽度の前立腺肥大症を合併する性腺機能低下男性の下部尿路症状を改善した。【 原 著 】
Aging Male. 2010 Dec 21.
Androgen replacement therapy
contributes to improving lower urinary tract symptoms in patients with
hypogonadism and benign prostate hypertrophy: a randomised controlled
study.
Shigehara K, Sugimoto K, Konaka H, Iijima M, Fukushima M, Maeda Y,
Mizokami A, Koh E, Origasa H, Iwamoto T, Namiki M.
Department of
Integrative Cancer Therapy and Urology, Kanazawa University Graduate School
of Medical Science, Kanazawa, Ishikawa, Japan.【 弊社注釈 】 (リンク先: 参照資料)
「下部尿路症状 (Lower Urinary Tract Symptoms: LUTS)」
下部尿路機能障害による排尿障害からの排尿症状と蓄尿障害からの蓄尿症状を併せたものです。下記の「排尿障害」と「蓄尿障害」は、下部尿路症状(LUTS)の一部分となります。
「排尿障害」
排尿症状は尿をスムースに出せない症状で、排尿困難・排尿開始遅延・腹圧性排尿など。「蓄尿障害」
蓄尿症状は、尿をうまく溜められない症状で、頻尿・尿意切迫感・尿失禁など。【 弊社コメント 】
一般に、前立腺肥大症に対して男性ホルモンは症状を促進させると言われていることから、特に重症の前立腺肥大症の男性には男性ホルモンの補充をお勧めしておりませんが、軽症の人であれば、本報によると1年のテストステロン補充で有意に下部尿路症状が改善したことから、安心して男性ホルモンの補充が出来るものと期待されます。
なお、グローミンによる男性ホルモンの補充でも、下部尿路症状を改善することが報告されています。
男性ホルモンの分泌不足が排尿や蓄尿をコントロールする筋肉量の低下を招き、下部尿路症状を起こしていたとすれば、テストステロンの補充でこれらの筋肉を取り戻すことにより、症状が改善したのかも知れません。 (福)続きを読む