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男性冠動脈疾患患者におけるテストステロンと血管内皮機能指標の関係
2008年01月09日
【目的】
冠動脈疾患(CHD)を有する男性における血管内皮機能を示し、指標とアンドロゲンレベルの関係を検討した。【方法】
50~70歳の男性106例について、年齢、体重、血清脂質、喫煙の有無、血糖値、血圧、血管細胞接着分子(VCAM)-1、総頸動脈の壁の厚さ(IMT)を登録した。
106例中51例がCHDを有していた。遊離テストステロン(FT)と、VCAM-1およびIMTの関係を解析した。【結果】
・ CHDとコントロールの間に年齢、血圧、喫煙の有無、血糖、HDL-C、最少拡張速度に差異はなかった。・ 体重、総コレステロール、LDL-C、中性脂肪、VCAM-1およびIMTは、CHDにおいてコントロールより高かった。
・ FTおよび収縮期の最大速度はCHDでより低かった。
・ 全体で、FTとVCAM-1およびIMTの間に逆相関が認められた。
【結論】
遊離テストステロンは内皮機能の指標であるVCAM-1およびIMTと逆相関した。【原著】
Relationship between testosterone and indexes indicating endothelial function in male coronary heart disease patients.
Fu L, Asian J Androl. 2007 Dec 20
the First Affiliated Hospital of Harbin Medical University, China.【弊社コメント】
テストステロンの低下と冠動脈疾患との関連が、内皮機能の指標であるVCAM-1およびIMTから明らかにされました。(野)
【血管細胞接着分子(VCAM)-1 とは?】
冠動脈疾患をきたした患者における予後マーカーとして、接着分子の血中濃度が有用という、Blankenbergらフランスとドイツの共同研究グループの発表。それによると、いずれも可溶性(s)の血管細胞接着分子(VCAM)-1、細胞間接着分子(ICAM)-1、およびE-セレクチンの血中濃度が高いほど、その後の心血管死のリスクが高いという相関性が認められ、特にsVCAM-1値は古典的危険因子やCRP値と併せて用いると生命予後予測に有用という。
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45歳以上の男性に、より早朝と遅い朝の採血がテストステロン濃度に影響するか?
2007年08月15日
【目的・方法】
The Hypogonadism In Males studyは、45歳以上の男性の性腺機能低下症の発病率を推定した。テストステロン療法を受けていない患者のサブ解析を試みた。
採血は08:00~10:00 時および 10:00~12:00時に行われた。【結果】
- 総テストステロン(TT)はいずれの年代でも採血時間の影響がなかった。しかし、遊離テストステロン(FT)および生物学的テストステロン(BAT)は全体的に、より早い時間に採血したほうが高かった。
- SHBGは45~64歳でより早い時間に採血したほうが有意に低かった。
- 75歳以上では採血時間によるTT、FT、BAT、あるいはSHBGの差異は認められなかった。
【結論】
45歳以上のTTの測定に、より早朝の採血は重要ではないであろう。
しかし、75歳以下の男性におけるFTあるいはBATの測定時は、より早朝の採血が望ましい。【原著】
International Journal of Impotence Research advance online publication, 19
July 2007; doi:10.1038/sj.ijir.3901580.【弊社コメント】
「大規模スクリーニング集団におけるテストステロンに対する測定時間の影響」
という報告では、採血時間を6~10時をT1(632例)、
10~12時をT2(812例)、
12~14時をT3(388例)、
14~18時をT4(1174例)、の4つの時間帯に分けて比較した結果、T4で低かったが、T1、T2およびT3では差がなかったとしています。また、上記の報告で測定されたのは総テストステロンのみです。
上記の報告に対して、本報はは時間帯、測定項目がやや異なります。結果はTTに関しては同様という事ですが、FT、BAT、あるいはSHBGで差が出てくる、それも年齢によって異なるという興味あるものでした。さらにデータの蓄積が必要かと思われます。(野)
海外では、総テストステロン値(TT)で議論するケースが多いので、これらの報告にもとづきますと、午前中の採血ならいつでもOK、ということになります。
一方、日本ではフリー・テストステロン値(FT)で基準を設けて議論していますので、本報にもとづいてFT値を神経質に評価するのであれば、なるべく早朝(本報にもとづけば、10時以前)に採血した方が良いのかも知れません。
何故、海外ではTTを中心に評価しているのに、日本ではFTなのでしょうか?
血中のテストステロンの多くはSHBGという物質と結合しているため生理活性を失っており、実際に活性があるのはSHBGに結合していないFTだけ、と言われています。そのため、臨床症状に結びつけて検討するためには、FTの方が直接的で良い、という考え方と思われます。
これに対して海外ではFT測定の正確性を指摘する声があるようで、BATの方が妥当である、という主張が根強いようです。ただし、少なくとも日本国内の技術では、FTについて十分に精度良く妥当な測定が出来ているようです。
もちろん学術的には、TTとFT、BATの全てを測定・算出しておけば無難ですが、全ての測定を何度も行うと保険適応にならない恐れがありますので、患者様の費用負担を抑えるため、FTに絞って測定しよう、という現実的な判断もあるようです。(福)
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2007年01月11日
【目的】
女性と男性の恋愛状態とテストステロンの関係を調査する。
この関係は、男女の恋愛状態がテストステロンの差異をもたらす、あるいはテストステロンが恋愛志向(恋愛関係に入る傾向)に影響するという二つの効果について論じられてきた。【方法】
パートナーの有無がテストステロンレベルに影響するか否かを検討するため、独身者、長距離恋愛あるいは、同じ町で恋愛関係の男女(女性72名、男性49名)についてテストステロンレベルを検討した。
対象には避妊薬を含むホルモン剤を使用しているものはない。試験の参加者は唾液を提出し、恋愛関係の状態についての質問表に答えた。【結果】
・ 独身男性のテストステロンは、長距離恋愛あるいは同じ町で恋愛関係にある男性よりも高く、これは恋愛志向を示すものである。
・ 反対に、同じ町で恋愛関係にある女性のテストステロンは、独身女性および長距離恋愛の女性より低く、恋愛状態がテストステロンに影響していると解釈される。【結論】
肉体関係にあるパートナーの存在は男性におけるホルモンと恋愛状況との関連には影響がない(長距離恋愛の男性と同じ町で恋愛関係にある男性のテストステロンは同様であった)が、女性では影響が見られた。【原著】
Testosterone levels in women and men who are single, in long-distance relationships, or same-city relationships.
van Anders SM, Horm Behav. 2006 Dec 28;【弊社コメント】
「テストステロンが男女の関係にどう影響しているのか?」
「男女の関係がテストステロンにどう影響しているのか?」
という興味深いテーマを検討したものですが、いずれも影響がみられるというものでした。(野)女性の中には、彼氏がいる頃は、彼氏に会えないと無性に寂しく性欲が高まっていたのに、彼氏と別れて恋愛の相手がいない時期が続くと、性欲も忘れてしまう、といった経験のある人が多いのかも知れません。もし、このような経験がありましたら、それはテストステロンの仕業かも知れません。
男女いずれも恋愛関係の異性がいない人のテストステロンが高いというのは、テストステロンがまさに「愛の狩人」ということなのでしょう。
男女の違いで微妙なのは長距離恋愛の場合です。長距離恋愛の女性は男性と異なりテストステロンが高いようで、長距離恋愛をめぐる男女の意識に違いがあるとすれば、このような生理的な性差が背景にあるのかも知れません。
長距離恋愛のカップルの皆様が、お互いの性差を理解し合い、違いを受け容れて、お互いを尊重しながら、長距離恋愛にありがちなスレ違いを乗り越えて愛情を深められるように祈っております。(福)続きを読む