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Category:男性ホルモン(アンドロゲン・ テストステロン)

  • フィナステリドの併用はテストステロン・アンデカノエイトの薬物動態に影響しない

    2010年10月27日


    【 目的 】
    経口テストステロン・アンデカノエイト(TU)はテストステロン欠乏症の治療に用いられているが、経口TUはdihydrotestosterone
    (DHT)を上げる。DHTはにきび、男性型禿頭および前立腺過形成

    のリスク上昇と関連していると考えられている。
    他の経口テストステロン製剤と5αリダクターゼ阻害剤の併用投与はDHTの産生を抑制し血清テストステロン濃度を上げる。
    フィナステリドは経口TU投与中、血清テストステロンを上げ、DHTを下げると仮定した。そこで経口TUの定常状態の薬物動態に及ぼすフィナステリドの影響を検討した。

    【 方法 】

    験的に性腺機能低下を誘発した若年男性11名を対象にオープンラベルのクロスオーバー試験を行った。すなわち、テストステロン200mgの経口TUを1日
    2回7日間投与の定常状態の薬物動態をフィナステリド非併用下、フィナステリド0.5mgおよび1mg経口1日2回各併用下にて測定した。
    各投与の7日目に血清テストステロン、DHTおよびエストラジオールをベースラインおよび朝の投与後1,
    2, 4, 8, 12, 13, 14, 16, 20 および
    24h後に測定した。

    【 結果 】

    • 血清テストステロンおよびDHTは全ての投与群で有意に正常範囲を超えて上昇した。
    • フィナステリド0.5mgおよび1mg経口1日2回各併用は血清テストステロンおよびDHTのどちらにも影響しなかった。

    【 結論 】
    5αリダクターゼ阻害剤併用の影響は他の経口テストステロン製剤と経口テストステロン・アンデカノエイト製剤とでは異なる。おそらく、TUのリンパ系をを介したユニークな吸収経路のためではないかと思われる。

    【 原著 】
    Int J Androl. 2010 Oct 24. doi: 10.1111/j.1365-2605.2010.01120.x.

    Steady-state pharmacokinetics of oral testosterone
    undecanoate with concomitant inhibition of 5α-reductase by
    finasteride.

    Roth MY, Dudley RE, Hull L, Leung A, Christenson P, Wang C,
    Swerdloff R, Amory JK.
    Population Center for Research in Human
    Reproduction and Department of Medicine, University of Washington, Seattle,
    USA.

    【 弊社コメント 】
    この報告ではフィナステリドの影響はありませんでした、その理由がここで述べられているよ
    うに吸収経路の違いだけによるものか、実験条件の違いによるものか分かりません。しかし、フィナステリドの併用が必ずテストステロンを上げるものではない
    という事は分かりました。(野)

    TU(testosterone
    undecanoate:テストステロン・アンデカノエイト)は、Andriol(アンドリオール:本邦では未承認)という男性ホルモンの経口製剤の有効
    成分で、腸からリンパ系を通じて吸収されるため、肝臓のファーストパスを受けずに男性ホルモンの血中濃度を上昇させられるのが特徴ですが、欧米人に比べて
    脂質が少ない食生活の日本人には相性が悪く、肝心な男性ホルモンの血中濃度がなかなか上昇しないせいか、本邦での承認をはじめ、日本で今ひとつ臨床応用が
    盛り上がらない様子です。
    これまで、フィナステリド(プロペシアの有効成分)をテストステロン製剤と併用したとき、テストステロンの血中濃度を
    (併用しない時よりも)上昇させるという指摘がありました。これは、フィナステリドが5α還元酵素(リアクターゼ)を阻害するため、DHTに変わらない分
    のテストステロンが、そのまま血中濃度を上昇させるぶん、併用しない時よりも高くなるものと考えていました。本報の著者は今回の結果の理由として吸収経路
    の違いを指摘していますが、今ひとつ腑に落ちないのが小生の印象です。(福)

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  • 日本人男性において総および遊離テストステロン、SHBGは前立腺癌リスクと強く関連していない

    2010年10月20日


    【 目的および方法 】
    性ホルモン、特にアンドロゲンは前立腺の発ガンと関連している。しかしながら。前向きの研究は全体的に性ホルモンのレベルと前立腺癌のリスクの間に関連性を認めていない。しかし、ステージ、年齢、BMIおよびイソフラボンにより前立腺癌リスクに対する性ホルモンの影響が異なるにもかかわらず、これらのエビデンスは少ない。さらに、比較的脂肪が少なくイソフラボン摂取量が多いアジア人集団に関する研究は僅かである。
    血中テストステロンおよびSHBGが前立腺癌リスクと関連するという仮説を JPHC Study において症例対照研究にて検証した。
    総テストステロンおよびSHBGを前立腺癌患者201例およびマッチするコントロール402例にて測定し、遊離テストステロンは計算にて求めた。

    【 結果 】

    • 総体的にいずれの血中ホルモンレベルとも前立腺癌との間に関連性は見られなかった。
    • ホルモンレベルの最上位群と最下位群のオッズ比は総テストステロンで0.71
      (95%CI = 0.36-1.41,Ptrend = 0.43)、遊離テストステロンで0.70 (95% CI = 0.39-1.27, Ptrend =  0.08)、SHBGで 1.38 (95% CI = 0.69-2.77,
      Ptrend = 0.23)であった。
    • 癌ステージ、年齢、BMIおよび血清イソフラボンで層別すると、遊離テストステロンは限局性癌おおび大豆代謝物と逆向きに関連し、SHBGは若年者において前立腺癌のリスクの上昇と関連していた。

    【 結論 】
    症例対照研究において血中総テストステロン、遊離テストステロンあるいはSHBGは総前立腺癌リスクと強く関連していなかった。

    【 原著 】
    Cancer Sci. 2010 Aug 18

    Plasma testosterone and sex
    hormone-binding globulin concentrations and the risk of prostate cancer
    among Japanese men: A nested case-control study.

    Sawada N, Iwasaki M, Inoue
    M, Sasazuki S, Yamaji T, Shimazu T, Tsugane S;
    for the Japan Public Health
    Center-based Prospective Study Group.
    Epidemiology and Prevention Division,
    Research Center for Cancer Prevention and Screening, National Cancer Center,
    Tokyo, Japan.

    【 弊社注釈・コメント 】

    JPHC Study (Japan Public
    Health Center-based prospective
    Study)

    厚生労働省がん研究班による指定研究班「多目的コホートに基づくがん予防など健康の維持・増進に役立つエビデンスの構築に関する研究」(主任研究者 津金昌一郎 国立がんセンター がん予防・検診研究センター予防研究部長)において全国11保健所、国立がんセンター、国立循環器病センター、大学、研究機関、医療機関等との共同疫学研究です。

    古くからまことしやかに唱えられて来た「アンドロゲン仮説」(男性ホルモンが前立腺癌の原因物質である、という仮説)ですが、多くの泌尿器科医の間では、最新の知見を通じて男性ホルモンが前立腺癌の原因物質で無いという認識で概ね一致しているようです。

    一方、当局はアンドロゲン仮説を立証したいようで、男性ホルモン悪玉説を支持する立場から調査したようですが、それでも男性ホルモンが前立腺癌の発癌リスクになる事は証明できませんでした。(福)

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  • テストステロンは高齢男性の虚弱性と関連する

    2010年05月02日


    【 目的 】
    男性は加齢とともに虚弱性が上がり、テストステロンは減少する。テストステロンはこの症状発現リスク因子と思われる。テストステロン・レベルが虚弱性と
    関連しているか否かを調査した。

    【 方法 】
    デザインは前向きのコホート研究。2001年から2004年の間に、70-88歳の地域住民男性3616例について虚弱性の測定を行った。
    2008-2009年に67歳から93歳の1586例について虚弱性の再測定を行った。
    虚弱性はFRAIL
    scaleにて測定した。これは5つのドメイン、疲労、一続きの階段の昇りの困難さ、100m以上の歩行の困難さ、5つ以上の病気、あるいは5%以上の体
    重減少からなる。
    調査開始時にテストステロン、SHBGおよびLHを測定した。遊離テストステロンは計算により求めた。

    【 結果 】

    • 開始時に15.2%(n = 548)が虚弱(3項目以上に該当)であり、フォローアップ期間中に23.0%(n = 364)に増加した。
    • 開始時、総および遊離テストステロンの1SDの減少は虚弱オッズの上昇と関連していた (各々OR = 1.23; 95% CI =
      1.11-1.38, およびOR = 1.29; 95% CI = 1.15-1)。
    • 低LHは虚弱オッズの減少と関連していた(OR = 0.88; 95% CI = 0.81-0.95)。
    • 調整は年齢、BMI、喫煙、糖尿病、社会的支援および他の交落因子で行った。フォローアップでは遊離テストステロンの低下のみは虚弱を予測し
      た(OR = 1.22; 95% CI = 1.05-1.42)。

    【 結論 】
    開始時およびフォローアップ時遊離テストステロンは虚弱性と関連していた。テストステロン療法は虚弱性の発現を防止できるか無作為試験が行われるべきで
    ある。

    【 原著 】
    J Clin Endocrinol Metab. 2010 Apr 21.

    Low Free
    Testosterone Predicts Frailty in Older Men: The Health in Men Study.

    Hyde Z, Flicker L, Almeida OP, Hankey GJ, McCaul KA, Chubb SA, Yeap BB.
    Western Australian Centre for Health and Ageing, Royal Perth Hospital,
    Perth, Australia

    【 弊社コメント 】
    「遊離テストステロンの低下が虚弱を予測できる」という結果は、すなわちテストステロンの補充による虚弱防止効果を期待させますが、弊社製品の市場実績か
    ら確信させるものです。(福)

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  • 慢性心不全に対するテストステロン補充療法

    2010年05月02日


    【 目的 】
    慢性心不全(CHF)は適正な治療にも拘わらず死亡率の高い、多く見られる疾患である。標準的治療は、CHFの特徴である代謝おおび神経ホルモンの異常の適正化である。蛋白同化作用の不足はCHF症候群の主要な成分であり、テストステロン補充療法が最近のトライアルのテーマとなっている。

    【 最近の知見 】
    最近の論文では、生理学的なテストステロン補充療法により随意筋強度、非脂肪筋肉容量の適度な改善、神経筋および圧受容体反射に対する耐容性およびポジティブな効果がもたらされる事が明らかになった。長期的な効果及び安全性は研究されていない。

    【 要旨 】
    テストステロン補充療法は慢性心不全患者の代謝および耐容性を改善する。広範囲な使用の前にさらに試験が必要である。
    慢性心不全患者を治療する医師はテストステロン療法を考慮するであろうが、内分泌専門医のアドバイスとサポートが必要である。

    【 原著 】
    Curr Opin Endocrinol Diabetes Obes. 2010 Apr 16.

    Testosterone and heart failure.

    Malkin CJ, Channer KS, Jones TH.
    Department of Cardiology Sheffield Teaching Hospitals NHS Foundation Trust, Sheffield, UK

    【 弊社コメント 】
    慢性心不全の治療に対して、生理学的な範囲内でのテストステロン補充療法が有用と期待されていますが、現時点では未だ長期的な効果及び安全性が確認できていないため、慎重な対応が必要とされています。(福)

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