日本人男性において総および遊離テストステロン、SHBGは前立腺癌リスクと強く関連していない
2010年10月20日
【 目的および方法 】
性ホルモン、特にアンドロゲンは前立腺の発ガンと関連している。しかしながら。前向きの研究は全体的に性ホルモンのレベルと前立腺癌のリスクの間に関連性を認めていない。しかし、ステージ、年齢、BMIおよびイソフラボンにより前立腺癌リスクに対する性ホルモンの影響が異なるにもかかわらず、これらのエビデンスは少ない。さらに、比較的脂肪が少なくイソフラボン摂取量が多いアジア人集団に関する研究は僅かである。
血中テストステロンおよびSHBGが前立腺癌リスクと関連するという仮説を JPHC Study において症例対照研究にて検証した。
総テストステロンおよびSHBGを前立腺癌患者201例およびマッチするコントロール402例にて測定し、遊離テストステロンは計算にて求めた。
【 結果 】
- 総体的にいずれの血中ホルモンレベルとも前立腺癌との間に関連性は見られなかった。
- ホルモンレベルの最上位群と最下位群のオッズ比は総テストステロンで0.71
(95%CI = 0.36-1.41,Ptrend = 0.43)、遊離テストステロンで0.70 (95% CI = 0.39-1.27, Ptrend = 0.08)、SHBGで 1.38 (95% CI = 0.69-2.77,
Ptrend = 0.23)であった。 - 癌ステージ、年齢、BMIおよび血清イソフラボンで層別すると、遊離テストステロンは限局性癌おおび大豆代謝物と逆向きに関連し、SHBGは若年者において前立腺癌のリスクの上昇と関連していた。
【 結論 】
症例対照研究において血中総テストステロン、遊離テストステロンあるいはSHBGは総前立腺癌リスクと強く関連していなかった。
【 原著 】
Cancer Sci. 2010 Aug 18
Sawada N, Iwasaki M, Inoue
M, Sasazuki S, Yamaji T, Shimazu T, Tsugane S;
for the Japan Public Health
Center-based Prospective Study Group.
Epidemiology and Prevention Division,
Research Center for Cancer Prevention and Screening, National Cancer Center,
Tokyo, Japan.
【 弊社注釈・コメント 】
JPHC Study (Japan Public
Health Center-based prospective
Study)
厚生労働省がん研究班による指定研究班「多目的コホートに基づくがん予防など健康の維持・増進に役立つエビデンスの構築に関する研究」(主任研究者 津金昌一郎 国立がんセンター がん予防・検診研究センター予防研究部長)において全国11保健所、国立がんセンター、国立循環器病センター、大学、研究機関、医療機関等との共同疫学研究です。
古くからまことしやかに唱えられて来た「アンドロゲン仮説」(男性ホルモンが前立腺癌の原因物質である、という仮説)ですが、多くの泌尿器科医の間では、最新の知見を通じて男性ホルモンが前立腺癌の原因物質で無いという認識で概ね一致しているようです。
一方、当局はアンドロゲン仮説を立証したいようで、男性ホルモン悪玉説を支持する立場から調査したようですが、それでも男性ホルモンが前立腺癌の発癌リスクになる事は証明できませんでした。(福)
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