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Category:男性のアンチエイジング

  • テストステロンおよびナンドロロンの心機能に及ぼす影響

    2007年02月03日


    【目的】
    アンドロゲンは骨格筋に対して強い作用を有しているが、人の心筋に対する作用、あるいはテストステロンの代謝がどのような役割を果たしているかはよく分かっていない。
    健康若年男性において、テストステロンと代謝を受けない純粋なアンドロゲンであるナンドロロンの心筋機能に対する影響を検討した。

    【方法】
    デザイン:3群の二重盲検、無作為プラセボー比較試験。
    セッティング:Ambulatory care research centre.
    被験者:各群10名の健康若年男性を無作為に割り付けた。
    インターベンション;テストステロンエステル200mg、ナンドロロン・デカノエイト200mg、またはプラセボー製剤を1週間に1回筋肉内投与した。
    測定項目:心筋組織の運動速度、最大収縮張力および速度、心拍出のバイオインピーダンスおよび全身血管抵抗を含む心筋機能を総合的に評価した。

    【結果】
    ・左室機能(左室の駆出率、TEI係数)、右室機能(駆出エリア、三尖弁の平面運動、TEI係数)、心後負荷(平均血圧、全身血管抵抗)および心収縮力(1回拍出量、心拍出量)は年齢および性に対応した標準的範囲にあり、アンドロゲン剤あるいはプラセボーの4週間投与により変化しなかった。
    ・テストステロン群でのみ、左室収縮末期径および右室収縮末期範囲の増加、左室拡張期中隔速度の減少、左室充満圧の増加およびECGのPR間隔の短縮が、正常範囲内で軽度の変化として認められた。

    【結論】
    4週間のテストステロンあるいはナンドロロンの投与は若年男性の心機能に悪影響も好影響も与えなかった。

    【原著】
    Effects of testosterone and nandrolone on cardiac function: a randomized, placebo-controlled study.
    Chung T, Clin Endocrinol (Oxf). 2007 Feb;66(2):235-45. Links
    Department of Cardiology, Concord Hospital and ANZAC Research Institute, University of Sydney

     

    【弊社注釈】
    Tei index
    収縮能低下も拡張能低下も反映する総合的な心機能の指標である.
    Tei indexは, 僧帽弁流入血流の終了から再開始迄をa時間とし, 大動脈駆出血流持続時間をb時間とすると, (a−b)/bとして計算される.
    予後: 心不全例でTei indexが大きいと予後は悪い. 急性前壁中隔心筋梗塞例において合併症のある例はTei indexが増大している.

    【弊社コメント】
    心機能に対する影響を見るには、4週間は短すぎるように感じます。1年、あるいは半年、せめて3か月位かけなければ、と思います。
    テストステロン群で僅かな変化があり、これをとらえればテストステロンが直接ではなく代謝物の作用によると言えるのかもしれません。(野)

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  • テストステロンと恋愛の関係について

    2007年01月11日


    【目的】
    女性と男性の恋愛状態とテストステロンの関係を調査する。
    この関係は、男女の恋愛状態がテストステロンの差異をもたらす、あるいはテストステロンが恋愛志向(恋愛関係に入る傾向)に影響するという二つの効果について論じられてきた。

    【方法】
    パートナーの有無がテストステロンレベルに影響するか否かを検討するため、独身者、長距離恋愛あるいは、同じ町で恋愛関係の男女(女性72名、男性49名)についてテストステロンレベルを検討した。
    対象には避妊薬を含むホルモン剤を使用しているものはない。試験の参加者は唾液を提出し、恋愛関係の状態についての質問表に答えた。

    【結果】
    ・ 独身男性のテストステロンは、長距離恋愛あるいは同じ町で恋愛関係にある男性よりも高く、これは恋愛志向を示すものである。
    ・ 反対に、同じ町で恋愛関係にある女性のテストステロンは、独身女性および長距離恋愛の女性より低く、恋愛状態がテストステロンに影響していると解釈される。

    【結論】
    肉体関係にあるパートナーの存在は男性におけるホルモンと恋愛状況との関連には影響がない(長距離恋愛の男性と同じ町で恋愛関係にある男性のテストステロンは同様であった)が、女性では影響が見られた。

    【原著】
    Testosterone levels in women and men who are single, in long-distance relationships, or same-city relationships.
    van Anders SM, Horm Behav. 2006 Dec 28;

     

    【弊社コメント】
    「テストステロンが男女の関係にどう影響しているのか?」
    「男女の関係がテストステロンにどう影響しているのか?」
    という興味深いテーマを検討したものですが、いずれも影響がみられるというものでした。(野)

    女性の中には、彼氏がいる頃は、彼氏に会えないと無性に寂しく性欲が高まっていたのに、彼氏と別れて恋愛の相手がいない時期が続くと、性欲も忘れてしまう、といった経験のある人が多いのかも知れません。もし、このような経験がありましたら、それはテストステロンの仕業かも知れません。
    男女いずれも恋愛関係の異性がいない人のテストステロンが高いというのは、テストステロンがまさに「愛の狩人」ということなのでしょう。
    男女の違いで微妙なのは長距離恋愛の場合です。長距離恋愛の女性は男性と異なりテストステロンが高いようで、長距離恋愛をめぐる男女の意識に違いがあるとすれば、このような生理的な性差が背景にあるのかも知れません。
    長距離恋愛のカップルの皆様が、お互いの性差を理解し合い、違いを受け容れて、お互いを尊重しながら、長距離恋愛にありがちなスレ違いを乗り越えて愛情を深められるように祈っております。(福)

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  • 高齢男性では低テストステロンが転倒リスクを上げる

    2006年10月29日


    【背景】
    低テストステロンが高齢者の身体機能、転倒などにどのように影響するか不明である。

    【方法】
    5995名のボランティア集団から無作為階層的に選ばれた65~99歳の男性2587名について、長期的、観察的追跡調査を行った。
    スタート時に、活性型テストステロン(bioT)、エストラジオール、身体能力の測定を行った。 転倒頻度は4年間、4カ月毎に確認を行った。一般化推定方程式により性ホルモンの転倒に対するリスク比を推定した。

    【結果】
    ・56%が最低1回の転倒を報告し、多くはしばしば転倒した。

    ・bioTは転倒リスクの上昇と関連していた。テストステロンレベル下位1/4の男性の転倒リスクは上位1/4の男性より40%高かった。

    ・低テストステロンの影響は65~69歳の男性で最も顕著であり (RR:1.8;95%CI,1.2-2.7)、80歳以上の男性では影響が認められなかった。

    ・低テストステロンは身体能力の低下と関連していた。しかしながら、身体能力で調整を行っても低テストステロンと転倒リスクの関連性は維持された。

    【結論】
    転倒は高齢男性で日常的にみられる。転倒リスクは、低活性型テストステロン男性で高い。テストステロンレベルの影響は身体能力とは独立したものであり、転倒リスクに対するテストステロンの影響が他のアンドロゲン作用による事が示唆される。

    【原著】
    Endogenous testosterone levels, physical performance, and fall risk in older men.
    Orwoll E, Arch Intern Med. 2006 Oct 23;166(19):2124-31.

     

     

    【弊社コメント】
    高齢男性におけるテストステロンの重要性を示した、非常にクリアな報告です。同じ身体能力でもテストステロンが低いと転倒リスクが高いという事が重要と思います。
    しかし、また高齢になりすぎるとテストステロンの影響がなくなるということに注意が必要ですし、今後、多くのデータで確認して行くべきと思います。(野)

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  • 高齢者のうつ症状に対するアンドロゲン療法(システマティック・レビュー)

    2006年10月10日


    【目的】
    高齢者のうつ症状に対するアンドロゲン(男性ホルモン)療法の実行可能性と効果について検討した。

    【方法】
    MEDLINE, PsycINFO, Eric, HealthStar, および Cochrane Database の調査により17の報告(オープン試験 8.無作為試験 12、論説 3)について検討を行った。

    【結果】
    ・殆どの報告が方法論的に限界があった。

    ・実行可能性に関しては、少数が副作用による中止を報告した。

    ・効果に関してオープン試験では8試験中6試験が有効、無作為試験では12試験中5試験が有効、1試験が不明であった。有効であった無作為試験の3試験ではテストステロンに抗うつ薬が併用されていた。

    ・対象が60歳以上であったのは2オープン試験のみで、1試験が有効、1試験が無効であった。

    【結論】
    アンドロゲン療法は短期間ならば可能であろう、しかし高齢者のうつ症状に対し有効性を示すエビデンスはわずかである。

    【原著】
    Can J Psychiatry. 2006 Apr;51(5):295-9. Links

    Androgen treatment of depressive symptoms in older men: a systematic review of feasibility and effectiveness.

    Shamlian NT, Can J Psychiatry. 2006 Apr;51(5):295-9.

    【弊社コメント】
    高齢者のうつ症状に対して、厳格に見て男性ホルモンの投与が有効だったと言い切れる論文は未だ少ない、というのが実情のようです。しかしながら、あくまで男性ホルモンの補充効果が無いという話ではなく、厳格な検討の蓄積が待たれる、という状況と思われます。(野)

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  • 高齢男性における血清テストステロンレベルとライフスタイルの関係

    2006年07月18日


    【目的】
    高齢男性におけるライフスタイルと血清テストステロンおよびフリーテストステロンレベルとの関連を検討する。

    【方法】
    対象:45~85歳の男性
    ライフスタイルの評価項目:BMI、ニコチンおよびアルコール摂取量、ストレスレベル、身体的および社会的活動性、睡眠の質
    測定項目:血清テストステロン(T)およびフリーテストステロン(fT)、LH、FSH、DHEA-S、E2、SHBG

    【結果】
    症例数は375例、平均年齢59.9歳(9.2+/-SD)、そのうち25.4%および27.4%が低ゴナドトロピン性のTおよびfTレベルであった。
    ニコチン摂取量(喫煙者で高値:p<0.01)、BMI(ネガティブな関係:p<0.01)および年齢(ネガティブな関係:p<0.01)とTおよびfTの血清レベルとの間に有意な関係を認めた。
    身体的および社会的活動性、ニコチンおよびアルコール摂取量、ストレスレベルおよび睡眠の質と血清アンドロゲンレベルとの間には有意な関係を認めなかった。

    【結論】
    年齢、BMIおよび喫煙とTおよびfTの血清レベルとの間に関連性を認めたが、各種のライフスタイルと血清アンドロゲンレベルとの間には有意な関係を認めなかった。

    【原著】
    Relationship between testosterone serum levels and lifestyle in aging men. Aging Male. 2005 Sep-Dec;8(3):190-3.

    【引用】Doctor’s Guide

    【担当者コメント】
    対象の中に更年期症状を示す例があったかどうか、対象の選択方法と合わせて問題と思われます。喫煙者では逆にTおよびfTの血清レベルが高くなっているが、喫煙の影響かあるいは喫煙という行為をする人々は特別なのか、分かりません。また、一部矛盾するところもあり、詳細は原著の確認を要します。(野)

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  • 低テストステロンとメタボリックシンドロームの関連

    2006年07月09日


    【目的】
    高齢者の血清テストステロン、肥満及びメタボリックシンドロームの関係を調査した。

    【方法】
    2つの脂質治療試験に参加している、平均年齢52歳の男性864例について、ベースラインの血清テストステロン、脂質、血糖および身体計測調査を行った。いずれの試験もLDLコレステロール 130 ~ 160 mg/dl、トリグリセリド 350 mg/dl または以下の男性である。

    【結果】
    ・メタボリックシンドロームの有無に関わらず、テストステロンはBMIの上昇と共に減少した(p <0.0001)。

    ・メタボリックシンドロームを有する肥満および強度肥満男性のテストステロンは約150 及び 300ng/dlで、メタボリックシンドロームのないやせた高齢男性より低かった。

    ・糖尿病あるいは空腹時血糖 110mg/dl以上、BMI 30kg/m② 以上、トリグリセリド 150mg/dl 以上が低テストステロン症と関連していた。

    【結論】
    肥満およびメタボリックシンドロームを有する高齢男性の血清テストステロンは高齢の健康男性に比して有意に減少している。この結果はEDと肥満との関係がホルモンと関連している事を示すものである。

    【原著】
    The Age Related Decrease in Testosterone is Significantly Exacerbated in Obese Men With the Metabolic Syndrome. What are the Implications for the Relatively High Incidence of Erectile Dysfunction Observed in These Men?
    Kaplan SA, J Urol. 2006 Oct;176(4):1524-8.

    【弊社コメント】
    肥満→メタボリックシンドローム発症→加齢と相まって低テストステロン症状に?
    血清テストステロンとメタボリックシンドロームの関連が明確になってきました。(野)

    BMI:大人を対象とする体格指数。Body Mass Index の略。
    BMI=[体重(kg)]/[身長(m)]②  (②は二乗)

    普通:19.8~24.2(日本人の標準値は男女共に22)
    肥満:25.0以上

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    アンチエイジング

    私の健康法「PPK健康術」

    2006年04月22日


    弊社顧問・福井靖彦が、平成13年1月に甲府商工会議所平成相生会で講演致しました健康法を、このほど加筆修正して掲載致しました。


    私の健康法「PPK健康術」

     私は66歳の男です。健康です。仕事は前半生を洋酒業界で過ごし、後半生を性ホルモンを扱う製薬業界で過ごしました。いつも実験屋のモルモットで通して来ました。女房に言わせると「戌年だから何でも匂いを嗅いで、舐める」のが癖だそうです。
     30代は洋酒を飲み過ぎましてギックリ腰で苦しみました。整形外科、指圧、マッサージの世話になりましたが、治りませんでした。50代に、幸運にも中国医学の名人に診て戴く機会を得まして、目から鱗が取れました。 「自然」「気」「未病」という概念を改めて信じるようになりました。ギックリ腰はカイロ治療と瞑想で治りました。仕事時代は仕事を、今は健康を達成目標にして楽しんでいます。
     この度は、ここ十数年来の私の健康術についてお話することでご勘弁戴きたい訳ですが、厄介なことに健康の目標を達成するには医療、介護、年金の社会保障制度が関わってきます。

    〔1〕 新年の景気と医療、介護、年金の社会保障制度
     21世紀になりました。新年早々、株価と為替で景気は大揺れです。
     株価が1万5千円から2万円をうかがう景気ならば、一般大衆は当局を信用しないなりにも、まぁ気に懸けないことで済ませて来ました。ところが1万3千円以下となりますと、銀行生保の保有株が含み損になって、また税金注入…といった事態になりますので、大揺れな訳です。
     案の定(?)、「財政再建の鍵である医療費抑制~高齢者医療費負担制度見直しを柱とする社会保障制度の抜本改革を2002年度に実施する、という政府の約束を先送りしたい」、という 関係者の談話が日本経済新聞で報道されました。
     当局に解決策が無い理由は、私たち大衆が肌で感じ取っています。ですから、私たちは自ずと自己防衛上、次の二つを実行する訳です。

     ① 今の制度を信用していないから、倹約して貯金する。
     ② 今の医療を信用していないから、自分流の健康術を身に着ける。

     かくして消費者の財布の紐がいっこうに緩まぬ一方で、健康ブームはいっそう盛んになりました。 いま私がお話申し上げているご縁も、その流れと存じます。 様々な健康術を紹介するテレビ番組や雑誌の記事は盛り上がっていますし、多様な健康食品も賑やかに出回っております。

    〔2〕 今の医療は、何故おカネがかかり過ぎるのか?
     今の医療体制 ― 健康保険業、医者、薬業 ― にとって、顧客は「病人」でなければなりません。 突き詰めれば、これが理由だと考えています。
     今の体制では、人が「病気」と認定されて、初めておカネが廻り出す仕組みです。そして、高額な最新の薬とハイテクを駆使する重病・難病・奇病ほど売上を伸ばせる訳です。これは、医療関係者の人格倫理というより、病気を治さないとおカネにならない、という制度の問題と考えます。
     もちろん、罹ってしまった病気は早期に発見し、質の高い、信頼できる医療によって、速やかに治すべきですし、今後いっそう充実させて行くことが必要です。これについては、医師である弊社会長の梶原優が、私たちの視点に立って制度の改革と充実に鋭意取り組んでおります。

    〔3〕 「予防」が大切。 そして、予防は個人の愉しみ。
     医療費を抑制するには「私たちが病気にならないこと」です。すなわち病気を「予防」して、健康維持をはかることに尽きます。定期検診や人間ドックは仕方ないにしろ、出来ることなら生涯、病院で治療を受けるようなことにはなりたくない、と考えるのは、私だけでなく皆さんも同じと存じます。ですから予防による健康維持は、少なくとも私たちと国の財政にとってはハッピーなことです。
     ところが「予防」というのは今の制度ですと医療関係者の売上に貢献できません。そもそも今の制度の恩恵にあずかっている多くの既得権者にしてみれば利害が衝突します。ですから予防を説く声は大きくとも、なかなか現実味を帯びて来ません。結局、予防は今のところ個人が趣味道楽として愉しむほかありません。

    〔4〕 今の医療に「加齢」を「治療」してもらいたいですか?
     西洋医学は20世紀初めまでの感染症が人類の中心課題だった時代に大きな貢献をしました。そして、今の医療制度はその成功体験に基づいて作られたものです。西洋医学の進歩により、日本人の寿命は確かに延びました。 今や私たちが日常の健康で心配することと言えば、ペストや結核ではなく高齢者の「加齢」と言えましょう。ところが感染症は病気ですが、加齢は病気とは言えません。ですから、今の医療体制が加齢に取り組むためには、加齢を病気として処理することになります。
     そのために、例えば更年期の症状を細かく分けて、個々に病名を付ける訳です。そして、これらについて対症療法する、あるいは遺伝子技術を駆使して人間の部品交換をする…というのが「治療」になります。これは、とてもハイテクで未来的です。こういうテクノロジーに従事する人たちの間では、莫大なおカネが廻ることになりましょう。景気の活性化につながるかも知れません。
     しかしながら、これらは高コストになることが容易に想像できます。そもそも、このようなハイテクで多額のカネを注いで「生かされること」だけが、人生の満足になるのでしょうか?私たち高齢者が元気になり、そして元気に過ごし続けるために、もっと味わい深くて人間らしい方法があるのでは無いでしょうか?

    〔5〕 代替療法の世界
     予防と言えば、東洋医学は予防を中心に据えているようです。東洋医学は、かつて人々の命を脅かした感染症を西洋医学のように切れ味鋭く退治してくれはしなかったので、西洋医学の実績の前に軽んじられて来た感があります。しかし、今の医療制度が少なくともコスト面の限界を迎えており、しかも病気を治すプロセスを踏まざるを得ないことを考えると、東洋医学は私にとって必要な選択肢になっているのです。
     私の場合、30~50代に至る20年以上もの間苦しんだギックリ腰は、最初に申し上げた中国医学の先生の啓示で「気」を心から信じることが出来たため、治りました。以来、信じてカイロを受け、信じて瞑想を楽しんでいます。
     「気」については、ある気学の勉強会に参加して、仲間と気学を楽しんで参りました。気を信じる健康法は、数千年来、民間伝承として世界各地で伝わって来た療法で、沢山あります。
     アメリカでの流行り言葉を使えば「代替療法」です。最近、代替療法が米国で市民権を得始めています。理由は単純で、現代医学による通常の医療が、代替医療に比べて60倍のコストがかかっており、その割に効果が低いと見なされているからです。そのように考える米国の金持ちのインテリ層が代替医療に満足し始めているようです。例えば栄養療法、ハーブ療法、ホメオパシー、瞑想法、カイロプラクティス、鍼灸、アーユルヴェーダ、中国医学、ストレス軽減療法等が知られています。
     低コストで治る症例が続出する割に、代替療法を日陰者として閉じ込めようとする政治勢力が今の処上回っています。そのような状況のなかクリントン前大統領よりも、ヒラリーさんが有名ですが、彼女の政策課題は医療費増大の解決策でした。
     いかにもアメリカらしく、あらゆる可能性が極めて実直に検討されて来た訳ですが、「代替療法を科学的な根拠(エビデンス;evidence)に基づき改めて評価すべきだ」と言う声も挙がって来ました。そのために、NIH(National Institute of Health ;米国国立衛生研究所)は、1991年にOAM(Office of Alternative Medicine ; 代替医療部門)を設立したのです。
     一方で政治的な背景から、AMA(アメリカ医師会)と FDA(米国食品医薬品局)は代替療法に対して批判的姿勢を取り続けています。NIHを中心とする研究者の研究結果と世論の動向を眺めているところなのでしょう。
     日本では「生活習慣病」と言う言葉を新聞雑誌で見かけるようになりました。この言葉は医学用語の辞典では見かけませんので、行政用語なのでしょう。先ほど財政再建の鍵である「社会保障制度の抜本改革を2002年度に実施する政府約束を先送りしたい」と言う談話を紹介しましたが、行政は世論の熟し方を眺め中なのでしょう。代替療法のマーケットは米国に比べますと未熟ですから、別の切口を使いたいのかも知れません。厚生省の「健康日本21」の基本計画を受けて、山梨県も4月から「健康山梨21」の準備中です。恐らく食事と運動の生活習慣改善を目標にした草の根運動を盛り上げることになるだろうと思っています。
     厚生省「健康日本21」基本計画のキーワードは「健康寿命」です。冒頭に怪しげな「PPK」健康術という副題をつけましたが、「PPK」とは「ピン・ピン・コロリ」のことです。「健康寿命」のことですが、ウケていただけましたか…?今はインターネットのお陰でタダ同然で欧米の情報が得られます。インターネットで見ていますと、代替医療実践医師の症例やNIHの報告をはじめ、日本で代替医療を理解する医師、健康ジャーナリスト、脳神経内分泌免疫の先端研究者からの メッセージを知ることが出来ます。これらが21世紀の健康を予言してくれて、楽しくてわくわくします。

    〔6〕 健康維持は、自分のため
     自分の健康を維持すれば、医療費の削減にささやかな貢献をすることでしょう。しかし、何はともあれ「健康維持は自分のため」です。そして、感染症や怪我は別ですが「生活習慣や加齢に関わる健康は、あくまで自分のために自分で行う自立」だと信じています。
     ここで、健康の成否は 「信じること」が絶対条件であると思っています。先ほど「気学」の勉強会のことを申しましたが、勉強会の仲間で身体を壊した人がいます。勉強家で知識は随一です。でも、失礼ながら実践の深みが物足りなかった…。分かれ目は「信じること」が足りなかった、と感じました。
     先ずは「隗より始めよ」。ということで、私自身は、これまでに培ってきた「実験屋のモルモット」で通したいと思っています。自分自身のために、手近なところから、様々な健康法を私のやり方で試してみて、本当に信じられるかどうかを自分で判断する訳です。医師のアドバイスや検査データですら、私自身の判断材料の一つに過ぎません。これが私にとっての「自立」なのです。
     そして、いま私は年より元気で若いと勝手に思っています。50代にあった老人のシミが消えました。眼鏡は近眼・乱視・老眼で、少なくとも二つ要りましたが、今は無用です。洋酒屋時代に良く飲んだ酒ですが、今は飲みたくもなく、飲めなくなりました。煙草は勿論吸っていません。食性も変わりました。野菜・果物・米の飯、そして魚が食べたい。おいしいからです。おかげさまで、おカネのかからない暮らしになりました。

    〔7〕 健康法・成功のコツ
     代替医療を実践した結果については、日本ですと医師の症例報告をに基づいたメッセージが未だ少ないようなので、米国の医師の症例を調べました。これらについて、僅かな私なりの経験の目で読みますと、成功のコツが見える気がするのです。

    (1) 信じること
     信じる動機やきっかけは、人によって様々です。仕事や身体のことで死ぬ程苦しんだ、周りに良き智者友人に出会えた、本を広く深く読んだ…。私の場合、中国医学の名人、気学の仲間、マハリシ・アーユルヴェーダの会、そして「気」に関わる世界の名著でした。

    (2) チェック方法
     加齢と生活習慣の健康法には速効性がありません。そうは申しましても何か実感や指標が無いと、根気も続きませんし、楽しくありません。そこで、私は長続きさせるために、次のようなチェック方法を役立てています。

     ① 食べること: 空腹感。 生活習慣病予防検診のデータ。
     ② 運 動  : 排泄実感。 大小便、鼻水の感覚。
     ③ 瞑 想  : 楽しいという感覚。 排泄実感。 耳垢、鼻水、舌苔。

     排泄実感は加齢と生活習慣の健康法では特に大事です。東洋医学と西洋医学を分けた哲学の違いとも言えましょう。すなわち西洋医学が摂取を健康法の柱に据えているのに対して、東洋医学は排泄を重視しているのです。

    (3) 知識
     実践第一ですが、動機づけには知識も要ります。私が健康で自立しているために、大事にしていることを、二つ挙げます。

     ① 生理機能を知ること
     ひとつは、生命そのものの宿命に関することです。神が人間の生命に授けてくれた中心機能は二つで、ひとつは種族保存のための生殖、もうひとつは自分が生きるための適応代謝です。機能の正常運転は脳中心の情報網 ― 身体の「IT」です ― が担当します。
     多種の情報は「ホルモン」と言う、多種の化学物質が担当します。適応代謝に関わるホルモンは加齢しても変化量が少ないのですが、生殖、つまり性ホルモンは男女とも加齢と共に量が激減します。「お疲れ様でした」という次第なわけです。
     ところが、この性ホルモンは「男のバイタリティー」あるいは「女らしさ」そのものを支配しています。加齢とともに激減したままでは、「PPK」は無理です。
     私の場合、日本性機能学界・理事長の白井将文先生に相談して、テストステロンの補充を受けています。 食事・運動・瞑想だけでは実感出来ない、奥底からの生命力を実感しています。

     ② 食事について
     もうひとつは、生活環境との関わりで生じた問題です。米国で代替医療を実践している医師の症例を見ておりますと、米国で彼らが推奨している理想的食事というのは、かつて私たちが昭和30年代までに食した、典型的な日本食です。
     現代の食生活は、肉食とジャンクフードの脂が多過ぎるわけですが、かと言って、野菜、果物、穀類、魚に切り替えようとしても、現実的には生活環境との関わりがありますので、もはや日本も含めて理想的な食生活を続けることは極めて困難との見方があるようです。
     そこで、サプリメントの考えと実践がある訳です。状況に応じて ビタミンやミネラルをサプリメントで摂取しております。

    以上、駆け足で申し上げましたが「PPK健康術」にご賛同戴ければ幸いです。

    (平成13年1月・甲府商工会議所平成相生会 1月例会)

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