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2014年07月28日
■ 目的
血清テストステロン・レベルおよび正常および異常睡眠との間の関係に関する最近のデータおよびコンセプトについてレビューした。■ 最近の知見
日内リズムおよび睡眠生理の性差は部分的に性ホルモンの組織的活性化作用によるものである。 テストステロンは日内リズムおよびタイミングの統合に関わっているが睡眠の長さには関わっていない。 思春期のテストステロンの上昇は就眠時間を遅らせる。 テストステロンの日周変動はサーカディアンリズムおよび季節よりも睡眠に依存している。
思春期の始まりは男性化の前に睡眠中のLHレベルの上昇( 3.7 U/l以上)により予知される。
全睡眠遮断はテストステロンを下げるが、睡眠制限は前半の制限においてのみテストステロンを下げる。不眠からのテストステロンの回復は若齢齧歯類に比して高齢齧歯類において障害されている。
閉塞性睡眠時無呼吸症(OSA)の男性において、低テストステロンはOSAそれ自体よりも肥満に関連しており、体重低下により改善するが持続的気道陽圧(CPAP)は十分改善しない。
テストステロン療法は一過性にOSAの重度を悪化する。従いその使用は禁忌である。■ サマリー
肥満あるいは抑うつ等による二次性の性腺機能低下症の男性においてテストステロン療法は全般的な異常の改善に比して睡眠に対する有用性は期待できない。■ 原著
Curr Opin Endocrinol Diabetes Obes. 2014 Jun;21(3):239-43.
The relationship between sleep disorders and testosterone.
Wittert G.続きを読む
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重度の睡眠時無呼吸肥満男性における通常量のテストステロン療法
2012年04月25日
【 目的 】
高用量の短期テストステロン療法は閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)の男性の呼吸を急速に悪化することが見られた。OSAの肥満男性における低用量から通常量近くのテストステロンの影響は長期的に異なると思われるが、系統的に研究されていない。
そこで重度のOSA肥満男性において減量とともに通常量近くのテストステロン療法を行い、睡眠および呼吸への影響を検討した。【 方法 】
デザインは67例の男性を対象とした18週間の無作為、ニ重盲検、プラセボ比較試験である。全例、低カロリーダイエットを行い、同時にテストステロン・アンデカノエイト1000mgまたはプラセボの筋注を0、6、および12週に行った。睡眠および呼吸を0、7および18週後に夜間に睡眠ポリグラフ計にて測定した。【 結果 】
- テストステロンはプラセボに比して、7週後に酸素不飽和指数(ODI)を10.3events/hour (95%CI 0.8 to 19.8 events/hour, p=0.03)、および夜間低酸素症(酸素飽和90%以下の睡眠時間SpO(2) T90%)を6.1%(95%CI 1.5% to 10.6%, p=0.01)悪化した。
- 18週後では、テストステロン療法とプラセボの間にODI (4.5, -5.4 to 14.4 events/h, p=0.36) あるいは SpO(2) T90%(2.9%, -1.9% to 7.7%, p=0.23)に差異がなかった。
- ODI および SpO(2) T90%に対するテストステロン療法の影響は開始時のテストステロン濃度によって差異がなかった。
- 血中テストステロン濃度はODIあるいはSpO(2) T90%と相関しなかった(all p>0.19)。
【 結論 】
重度のOSA肥満男性におけるテストステロン療法は睡眠時呼吸障害を期間限定的に軽度に悪化した。これは最初のテストステロン濃度とは関係がなかった。【 原著 】
Clin Endocrinol (Oxf). 2012 Apr 18.
Effects of testosterone therapy on sleep and breathing in obese men with severe obstructive sleep apnea: a randomised placebo-controlled trial.
Hoyos CM, Killick R, Yee BJ, Grunstein RR, Liu PY.
Endocrine and Cardiometabolic Research Group, University of Sydney, Sydney, NSW, Australia.【 弊社コメント 】
低用量から通常量のテストステロンであれば問題ないのでは?・・・という期待で行われましたが、そうはなりませんでした。(野)男性ホルモンが睡眠時無呼吸症候群の症状を悪化させるという報告があることから、関係学会のガイドラインで使用禁忌と定められており、これに準じて男性ホルモンを配合する弊社製品(トノス、グローミン、ヘヤーグロン)のご使用を控えるようにお願いしています。ただし、これまでの報告は古い論文で症例数も少なく、男性ホルモンによる因果関係が本当にあるのか議論の余地があるため、例えば少量の投与量であれば問題ない事を期待しましたが、本報でも睡眠時無呼吸症候群の症状を悪化させる結果となりました。(福)
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