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2008年01月21日
【目的】
高齢男性において、性ホルモン濃度と自己評価健康度および生活満足度、神経精神症状あるいはうつ症状あるいは痴呆との関連を解析した。【方法】
対象は地域住民調査Lieto Studyに登録している517例の男性。性ホルモン製剤の使用あるいは前立腺癌、前立腺肥大症の治療中、あるいはBMIの測定がない男性は除外した。
その結果466例、年齢64~97歳、平均72歳、平均BMI26.9 kg/m(2)が解析対象となった。【結果】
・ 年齢調整後、高レベルのテストステロンあるいは遊離テストステロンは良好な自己評価健康度と関連していた。
・ 年齢およびBMIで調整後、性ホルモンレベルと自己評価健康度あるいは生活満足度あるいは、殆どの神経精神症状との間に統計学的に有意な関連は認められなかった。
・ 診断上のうつ症状は低テストステロンと関連していた。
・ 高レベルのLHおよびFSHは診断上の痴呆と関連が見られた。【結論】
この地域住民調査において、低テストステロンと診断上のうつ症状に関連が見られた。無症候性の性腺機能低下症は痴呆と関連していると思われる。【原著】
Associations of sex hormone concentrations with health and life satisfaction in elderly men.
Eskelinen SI, Endocr Pract. 2007 Nov-Dec;13(7):743-9.
Department of Family Medicine, University of Turku, Turku, Finland.【弊社コメント】
テストステロンとうつ症状との関連は明らかなようですが、BMIを調整に加えると、一般的な健康度、生活満足度との関連に有意性がなくなります。(野)テストステロンは、決して高齢男性の健康の全てを司るものではありません。肥満度の要素が加わると、たとえテストステロンのレベルを若い頃のように高く維持できても、健康度や生活満足度が必ずしも高いとは限らないわけです。
すなわち、健康的なライフスタイル(適度な運動・バランスの良い節度ある食生活・規則正しく健康的な生活リズム・ストレスの少ない健康的な生活環境・前向きで健全な精神状態、等々)を若い頃からずっと実践し、肥満もコントロール出来た人こそ、最良のホルモン補充(ホルモンレベルの維持)をしている、最高のアンチエイジング法の実践者なのでしょう。(福)
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高齢者のうつ症状に対するアンドロゲン療法(システマティック・レビュー)
2006年10月10日
【目的】
高齢者のうつ症状に対するアンドロゲン(男性ホルモン)療法の実行可能性と効果について検討した。【方法】
MEDLINE, PsycINFO, Eric, HealthStar, および Cochrane Database の調査により17の報告(オープン試験 8.無作為試験 12、論説 3)について検討を行った。【結果】
・殆どの報告が方法論的に限界があった。・実行可能性に関しては、少数が副作用による中止を報告した。
・効果に関してオープン試験では8試験中6試験が有効、無作為試験では12試験中5試験が有効、1試験が不明であった。有効であった無作為試験の3試験ではテストステロンに抗うつ薬が併用されていた。
・対象が60歳以上であったのは2オープン試験のみで、1試験が有効、1試験が無効であった。
【結論】
アンドロゲン療法は短期間ならば可能であろう、しかし高齢者のうつ症状に対し有効性を示すエビデンスはわずかである。【原著】
Can J Psychiatry. 2006 Apr;51(5):295-9. Links
Androgen treatment of depressive symptoms in older men: a systematic review of feasibility and effectiveness.
Shamlian NT, Can J Psychiatry. 2006 Apr;51(5):295-9.【弊社コメント】
高齢者のうつ症状に対して、厳格に見て男性ホルモンの投与が有効だったと言い切れる論文は未だ少ない、というのが実情のようです。しかしながら、あくまで男性ホルモンの補充効果が無いという話ではなく、厳格な検討の蓄積が待たれる、という状況と思われます。(野)続きを読む