GSM 診断・治療 編 目次
GSM(閉経関連泌尿性器症候群)診断・治療 編
GSMの診察、診断
GSMを判断する上で、デリケートゾーンの状態は重要ですが、そればかりにとらわれてしまって、他の重要な疾患を見逃してしまっては元も子もありません。他に病気がないかを検査・確認することはとても大切です。右のことを確認することで、GSMはもちろん、その他の重要な病気の診断をするのに、大変役に立ちます。
- ● いつから症状が始まったか
- ● 症状がでる時間帯や体勢など
- ● 生活習慣との関連
- ● 全身の評価
- ● 外陰・小陰唇などの外観の評価
- ● 分泌物の評価:量・色・細菌感染がないか・pH (酸性度)
GSMの治療
大きく分けて粘膜変化に対する治療と組織の萎縮症状の予防および治療があります。前者は保湿剤等の非ホルモン療法、ホルモン療法および機器を用いた治療が、後者はリハビリおよび機器を用いた治療があります。
- ●ホルモン剤を含まない薬
- ●ホルモン剤を含む薬
- ●機器を使用した治療
- ●骨盤底筋リハビリテーション
- ●ダイレーター
- ●バイブレーター
① 非ホルモン剤による治療
<保湿剤>ホルモン剤を使用しない治療でもっとも大切なものはデリケートゾーンの保湿です。そのためには毎日のケアが必要で、保湿剤を使用することが推奨されています。
- ● 医師の処方による処方薬、OTC(市販薬)、医薬部外品、化粧品等
- ● 自分の体質にあったもの選ぶ
- ● 粘膜の刺激を避けるため、香料や色素の入っていないものを選ぶ
外陰を洗いすぎないことや、ウォシュレットの使用を控えるなど、
乾燥を助長させないような行動が大切
②ホルモン剤による治療
更年期症状には、女性ホルモンの全身投与(外用薬・貼付剤・内服薬・注射薬)が行われることが一般的です。
しかし、GSM の場合は全身投与よりも性腺ホルモンの局所投与(腟錠・局所への外用薬など)がより優れている点が多いといわれ、その効果が下記の様に報告されています。
- ●萎縮した部分が改善
- ●トイレの不快な症状が改善
- ●腟の細胞が元気になる
- ●腟の酸性度が改善(pHが低下)
- ●腟に住んでいた乳酸菌が復活
治療に選ばれるホルモンの種類は、エストロゲンが最も多く使用されていますが、エストロゲンだけでは不快な症状が改善しない場合もあります。
その場合は、テストステロンを使用します。
デリケートゾーンに直接塗るホルモン外用薬には保険適応の薬はありません。OTCや医薬部外品を使用します。
ホルモン外用薬は有効な点が多い分、副作用のため使用が望ましくない人もいます。ホルモン剤を使用する場合は、塗る場所・量・回数・期間などを主治医と相談しましょう。
長期的に使用している場合は、定期的に医療機関を受診し、副作用がないことを確認するようにしましょう。
③リハビリ、機器による治療
デリケートゾーンの老化を予防するためには、骨盤底筋リハビリテーションが有効です。トレーニングの方法がわからない人は、個別でトレーニングを行っている医療機関などがありますので、お近くの施設に問い合わせてみるとよいでしょう。腟の入り口が狭く、小さくなってしまうことを予防したり広げたりするために、腟にダイレーターやバイブレーターを挿入するという方法もあります。
GSMのエネルギーベイスの治療
GSMの治療では特別な機器を使用して、局所にエネルギーを照射する治療も有効です。照射するエネルギーの種類は、CO2(炭酸ガス)レーザー・エレビウムレーザー・高周波(RF波)・HIFU(超音波)などの種類があります。性交痛、腟症状、排尿症状に対し有効であるという報告があり、どの治療を行うかは、主治医と相談して決定します。
どの治療も保険適応はなく、価格もそれぞれの医療機関ごとに異なりますが、治療は医療行為のため必ず医療機関で行う必要があります。
治療時間や期間は目安ですので、詳しくは治療を行っている医療機関にお問合せください。
エネルギーベイスの治療
※表はスクロールでご覧になれます。
治療時間 | 治療回数 | 効果・機序 | |
---|---|---|---|
CO2 レーザー |
約10~15分 | 月に1回、 3回程度 |
萎縮した粘膜表面にレーザーを照射することで、照射された細胞が活性化し組織の修復機構が働き始める。治癒過程により粘膜が正常化し、同時に皮下のコラーゲンを再生することで組織全体の修復を促す。 |
エレビウム レーザー |
約15~20分 | CO2レーザーよりも深達度は浅い粘膜への照射と言われている。機序はCO2レーザーとほぼ同じと考えられるが、CO2レーザーに比べ、表面の組織に与えるダメージがマイルド。 | |
高周波治療 (RF治療) |
約30分(部位・範囲により多少時間が異なる) | 2~4週ごとに4回程度 | 経粘膜的に皮下組織を42-45度に温めることで、コラーゲンの再生を行い、組織を活性化させる。粘膜表面には障害が起きないため、ダウンタイムがほぼない。 |
HIFU (超音波) |
約20~30分 | 1回 | 経粘膜的に皮下組織から筋膜・筋肉に超音波でダメージを与え、損傷された組織が修復することで治療効果を発揮する。現状で使用できる器機の中では最も組織の深度が深いことが知られている。 |
GSM解説動画:二宮典子先生「ココシカ診療所×骨盤底祭り」
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