【ヘルスケア情報】早漏早漏(PE)の定義:エビデンスについて

早漏(PE)の定義:エビデンスについて
早漏のエビデンスをベースにした定義:
早漏の定義のためのISSM特別委員会の報告
【目的】

早漏(Premature Ejaculation:PE)の総合的なエビデンスをベースにした定義の作成

【方法】

早漏の定義はいくつかある。最も一般的に引用されるのはAmerican Psychiatric Association's Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders - 4th Editionである。他の定義は、エビデンス・ベース(根拠にもとづくもの)というよりオーソリティ・ベース(権威者の主張にもとづくもの)であり、コントロールされた臨床試験や疫学的調査研究によるものではない。

以上の背景から、2007年8月ISSM(国際性医学会議)は早漏の定義のためのISSM特別委員に、早漏に関する数人の専門家を定めた。

委員会は2007年10月にアムステルダムで会議を行い、射精潜時、射精コントロール、性的満足度、および個人的/対人的苦痛に関するエビデンスを調査し、現在の早漏の定義の長所と短所を評価し、新しい早漏のエビデンスをベースにした定義の作成を行った。

【結果】

●委員会は、全会一致で早漏を定義する構成要素が「早い射精」、「自分の能力である事の自覚」、「PEによるネガティブ(消極的)な体験・結果」である事に同意した。
●委員会は早漏を次のように定義する事を提案した。
男性の性機能障害であり、いつも膣内に挿入前あるいは挿入後約1分以内に射精、膣内挿入に関し射精を遅らせる事が出来ない、苦痛、悩み、フラストレーション(欲求不満)、あるいは性交の回避といったネガティブ(消極的)な体験・結果を特徴とする。

●この定義は、膣内性交に関する長期的な早漏を有する男性に限られたものである。

【結論】

このISSMの長期的な早漏の定義は、最初のエビデンスをベースにした定義である。

この定義は治療効果の診断および評価に関する新しい方法および患者報告のアウトカムの測定の開発を促進するであろう。そして、この疾患の真の発現率、新しい薬物および心理学的治療の効果に関する現在進行中の研究を勇気づけることになるであろう。

【原著】

McMahon CG,etal :BJU Int. 2008 Aug;102(3):338-50. Epub 2008 May 21.

An evidence-based definition of lifelong premature ejaculation: report of the International Society for Sexual Medicine Ad Hoc Committee for the Definition of Premature Ejaculation.

International Society for Sexual Medicine Ad Hoc Committee for Definition of Premature Ejaculation.

Australian Center for Sexual Health, Sydney, Australia

PMID: 18498422 [PubMed - indexed for MEDLINE

主なエビデンスについて
早漏男性の膣内射精潜時(Waldinger et al. 1998)
  1. 早漏を訴える連続症例 110例についての臨床試験。
  2. 方法は女性パートナーのストップウォッチの操作により測定。
  3. 被験者の募集は早漏の治療という広告により行い、費用は払わなかった。
  4. アルコール依存、性機能に影響する薬物を服用している男性は除外した。
  5. 早漏の診断は、早期に射精する、射精を遅らせたい、という自己報告。
    (結果)
  • 膣内挿入後の射精時間で、40%が15秒以内、70%が30秒以内、90%が1分以内、1-2分は10%。
    カップルの報告では、ストップウォッチの使用は性交および射精時間に影響しなかった。
  • ●1346例の連続症例に関する遡及調査(McMahon, 2002)
    平均膣内射精潜時は、43.4秒であった。
  • ●早漏男性88例での臨床試験(Waldinger et al. 2007)
    射精潜時:30%が15秒以内、67%が30秒以内、92%が1分以内、1-2分は8%。

  • 以上の結果から、早漏の治療を希望する男性の射精潜時は、90%が挿入後1分以内である事が示唆される。1~2分の男性は10%であった。このエビデンスをベースに、委員会は膣内射精潜時のカットオフ値を1分とした。
一般男性の膣内射精潜時(Waldinger et al. 2005)

地域住民をベースにした疫学的調査に関しては、早漏の自己報告、あるいは早漏の定義の不一致性や不備のため、制限がある。 5カ国(オランダ、イギリス、トルコ、スペイン)での500例の正常人を対象とした地域住民調査。 膣内射精潜時の分布は、ポジティブに偏った非対称的で、中央値は5.4分、範囲は0.55~44.1分。中央値は年齢とともに低下し、国によって異なっていた。 0.5パーセンタイルは0.9分、2.5パーセンタイルは1.3分。

表1:早漏における射精時間に関する主な報告
著者要旨
Waldinger他, 1998 ●早漏男性 110例の膣内射精潜時をストップウォッチで測定。
●40%が15秒以内、70%が30秒以内、90%が1分以内、1-2分は10%。
McMahon, 2002 ●1,346例の連続的な早漏男性の膣内射精潜時をストップウォッチで測定。
●77%が1分以内に射精した。
Waldinger他, 2007 ●早漏男性88例による、挿入後~膣内射精潜時の自己推定。
●30%が15秒以内、67%が30秒以内、92%が1分以内。
●1~2分の間は5%。
Waldinger他, 2005 ●5カ国で無作為に抽出された、491例についてストップウォッチによる膣内射精潜時測定。
●膣内射精潜時は、長時間方向に偏った分布。
●疾患として、0.5および2.5パーセンタイルを適用。
●0.5パーセンタイルは0.9分、2.5パーセンタイルは1.3分。
Althof, 1995 ●早漏男性の自己推定による膣内射精潜時は、ストップウォッチ測定と良く相関。
Pryor 他, 2005 ●早漏男性の自己推定による膣内射精潜時は、ストップウォッチ測定と良く相関。
Rosen 他, 2007 ●自己推定とストップウォッチ測定の膣内射精潜時は、互換性がある。
●早漏は自己推定の膣内射精潜時と患者報告の転帰により確実に予測できる。
表2:早漏における射精のコントロールに関する主な報告
著者要旨
Grenier and Byers ●射精潜時と射精のコントロールは、比較的軽度の相関がある(R-0.31)。
●射精潜時と射精のコントロールは異なった概念である。
Grenier and Byers ●射精潜時と射精のコントロールは相関性に乏しく、共通するのは12%に過ぎず、これらは相対的に独立したものである。
Waldinger 他 ●98%が性交中に射精のコントロールが出来ないと報告。
●射精コントロールとストップウォッチ測定の膣内射精潜時は弱い相関(P=0.06)。
Rowland 他 ●射精潜時の測定値とコントロールの間に高い相関(R=0.81, P<0.001)。
Patrick 他 ●PEと診断された男性は射精をコントロールする比率が有意に低い(P<0.0001)。
●射精のコントロールが「悪い」あるいは「非常に悪い」と報告したのは、早漏と診断された男性では72%、正常群では5%であった。
●膣内射精潜時は射精コントロールと強く相関した(R=0.51)。
Giuliano 他 ●早漏と診断された男性は射精をコントロールする比率が有意に低い(P<0.0001)。
●射精のコントロールが「良い」あるいは「非常に良い」は、早漏と診断された男性では13.2%に過ぎず、早漏のない群では78.4%であった。
●射精のコントロールは性交の満足度および個人の悩みに対して有意な影響を持つ。
●膣内射精潜時は性交満足度に対して直接的な影響がなく、個人の悩みに対しても影響が小さい。
Patrick 他 ●満足度および悩みに対する膣内射精潜時の影響はコントロールを介したものである。
Rosen ●射精のコントロールおよび個人の悩みの程度が膣内射精潜時よりも早漏の状態に影響している。
●射精のコントロールが「良い」あるいは「非常に良い」と報告する人は、「悪い」あるいは「非常に悪い」と報告する人より早漏が90.6%少ない。
表3:早漏患者のネガティブな個人の体験(苦痛、悩み等)に関する主な報告
著者要旨
Patrick 他 ●Premture Ejaculation Profile(PEP)を用いた調査では個人的苦痛を報告したのは早漏群が64%に対し非早漏群では4%であった。
Giuliano 他 ●早漏プロフィール(PEP)調査で個人的苦痛を報告したのは早漏群が44%に対し非早漏群では1%であった。
Rowland 他 ●早漏プロフィール(PEP)スケールで早漏が強く推定される群は非早漏群よりも大きな苦痛を報告した。
●自尊心と人間関係質問票では、早漏が強く推定される男性は非早漏男性に対して全体の平均スコアが低かった。
Rowland 他 ●性交にリラックスできたり安心感を持つのが困難であるのは早漏が推定される群では30.7%、早漏が疑われる群では16.4%、非早漏群では7.7%であった。
Porst 他 ●抑うつは早漏群で20.4%に、非早漏群で12.4%にあった。
●過剰なストレスは早漏群で28%、非早漏群で19%にあった。
●不安は早漏群で24%、非早漏群で13%にあった。
McCabe ●対人関係心理スケール(The psychology of interpersonal relationship Scale)において、愛情行為に関する全測定値が早漏を含む性機能不全男性では正常男性より低かった。
Symonds 他 ●68%が早漏による自尊心への影響を報告し、異性との出会いに対する自信が低下していた。
●不安は36%で報告された(早漏あるいはそれが原因で)。
●困惑および抑うつもまた早漏のために挙げられた。
Dunn 他 ●早漏と抑うつおよび不安との強い関係がThe Hospital and Anxiety Scaleで認められた。
Hartmann 他 ●早漏に対するパートナーの行動および反応は早漏群の58%がポジティブであり、23%はネガティブであった。
Byers 他 ●早漏男性およびそのパートナーは人格機能および性的関係に対する早漏の僅かにネガティブな影響を報告したが、全体的な人間関係対してネガティブな影響はなかった。
  • 【原著】

    McMahon CG, etal: J Sex Med. 2008 Jul;5(7):1590-606.

    An evidence-based definition of lifelong premature ejaculation: report of the International Society for Sexual Medicine (ISSM) ad hoc committee for the definition of premature ejaculation.

    Australian Center for Sexual Health, Sydney, Australia.

    PMID: 18466262 [PubMed - indexed for MEDLINE]