【ヘルスケア情報】女性の性機能障害萎縮性腟炎・老人性腟炎とは

萎縮性腟炎・老人性腟炎とは

萎縮性腟炎(老人性腟炎)は、主に閉経後の女性ホルモン(エストロゲン・卵胞ホルモン)の分泌低下により、腟の潤いがなくなり、外陰部や腟が乾燥・萎縮して、雑菌が繁殖するために起こる炎症です。 閉経後の性交痛にも関連します。
おのずと局所的な女性ホルモンの補充により、以前のような陰部の潤いを取り戻すことが有効です。万全を期すには婦人科を受診して検査を行い、他に懸念される重大な問題がないことを確認するのが最善です。

なお、検査結果に問題がなければ、市販薬でも局所的な女性ホルモンの補充ができます。全身投与となる高用量な女性ホルモン補充量(HRT)と異なり、低用量で短期間ずつ、局所に少しずつ皮膚から補充するので、HRTを望まない人でも、短期間の少量の局所投与なら安心です。

外陰腟萎縮(症)VVA:Vulvar and vaginal atrophy) ISSM ( International Society for Sexual Medicine )によれば、閉経に関連する状態で、その症状は、腟や外陰部の乾燥、不快感、痛みがあり(外陰部は腟の外性器領域)、一部の女性は、かゆみ、灼熱感、おりものがあるとされています。
閉経後の女性が女性ホルモン(エストロゲン・卵胞ホルモン)の減少で腟粘膜が薄くなり萎縮することで生じる諸症状をまとめてVVAと称しているようです。 海外ではVVAを積極的に治療するようで、例えば北米閉経学会(NAMS)は「更年期および閉経後の患者に対し、臨床医は外陰腟萎縮症(VVA)の症状があるかを質問すべき」としています(2013 Position Statement)。
VVAは、萎縮性(老人性)腟炎を含めた幅広い症状を捉えているようですが、閉経にともなう女性ホルモンの減少による腟の不快な症状という本質は同じと考えられます。

GSM Genitourinary syndrome of menopause:閉経関連泌尿性器症候群) 2014年に国際女性性機能学会と北米閉経学会で定めた新たな疾患名。婦人科領域の萎縮性腟炎を下地に、女性のエストロゲン低下にともなう症状を、泌尿器科領域となる腟以外の性器や尿路も含めて幅広く捉えた疾患概念。
萎縮性腟炎の主な症状

閉経後しばらく経つと、腟が萎縮して出血しやすくなり、性交痛をともなう女性が増えます。
かゆみ、黄色いおりもの、悪臭…といった症状をともなう場合もあります。卵巣を摘出した人にも、ありがちな症状です。外陰部が癒着して閉じてしまう場合もあります。

萎縮性腟炎の主な症状
萎縮性腟炎の原因・発症のメカニズム/注意ポイント

閉経にともなう卵巣機能の停止や、腫瘍などの治療で卵巣を摘出

  • 女性ホルモン(エストロゲン・卵胞ホルモン)の分泌が低下します。
  • 腟粘膜の萎縮・腟の乾燥が起こります。
    (エストロゲン不足⇒腟壁のコラーゲン減少⇒腟萎縮)
  • 腟粘膜が傷つきやすくなり、また、雑菌が繁殖しやすくなります。
    (閉経前は、女性ホルモンの作用で皮膚/粘膜の厚みを保ち、常に腟潤滑の潤いがあるので、自浄作用で雑菌の繁殖を抑えています。)
  • 傷と雑菌で炎症が起こります。
    炎症は、人により、かゆみ・黄色いおりもの・悪臭につながります。

【注意ポイント】「黄色いおりもの」は、例えば子宮体がん等にともなう症状の可能性もありますので、万全を期すため、先ずは婦人科を受診したり、婦人科検診を受けて、このような問題が無いことを確認しましょう。

萎縮性腟炎の治療

婦人科を受診、診察。

内診 腟粘膜の萎縮、点状出血の確認。特に、点状出血が特徴。
検査 細菌培養。がん細胞の有無を確認。
処置 がんの心配が無く、萎縮性腟炎の所見であれば、全身投与による女性ホルモン補充療法(HRT)、または女性ホルモン(エストロゲン)の局所投与。HRTのリスクをなるべく避けたい場合は、局所投与を選択。
女性ホルモン(エストロゲン)局所投与の選択肢

必要に応じ抗生物質の腟錠を併用。

1. 腟坐薬(エストリオール製剤)
局所投与の一般的な選択肢です。数日~2週間程度で軽快しますが、重症だと1ヶ月程度要します。外陰部が癒着するほど重症ですと挿入が困難となり、人により挿入にともなう痛み・違和感があります。
2. エストロゲン製剤(腟錠・クリーム剤・軟膏剤)
腟内が乾燥している場合は、腟錠だと融けずに腟から出てしまうので、エストロゲンを配合したクリーム剤や軟膏剤の塗り薬を使用する場合があります。
詳しくは医師にご相談ください。
3. 対症的なかゆみ止め・殺菌剤の塗り薬: 市販薬
  1. 即効的に、かゆみを抑えられます。
  2. 短時間の効果で、かゆみがぶりかえす場合があります。
  3. 皮膚や粘膜の萎縮、腟潤滑そのものは改善できません。