萎縮性腟炎(老人性腟炎)は、主に閉経後の女性ホルモン(エストロゲン・卵胞ホルモン)の分泌低下により、腟の潤いがなくなり、外陰部や腟が乾燥・萎縮して、雑菌が繁殖するために起こる炎症です。 閉経後の性交痛にも関連します。
おのずと局所的な女性ホルモンの補充により、以前のような陰部の潤いを取り戻すことが有効です。万全を期すには婦人科を受診して検査を行い、他に懸念される重大な問題がないことを確認するのが最善です。
なお、検査結果に問題がなければ、市販薬でも局所的な女性ホルモンの補充ができます。全身投与となる高用量な女性ホルモン補充量(HRT)と異なり、低用量で短期間ずつ、局所に少しずつ皮膚から補充するので、HRTを望まない人でも、短期間の少量の局所投与なら安心です。
閉経後しばらく経つと、腟が萎縮して出血しやすくなり、性交痛をともなう女性が増えます。
かゆみ、黄色いおりもの、悪臭…といった症状をともなう場合もあります。卵巣を摘出した人にも、ありがちな症状です。外陰部が癒着して閉じてしまう場合もあります。
閉経にともなう卵巣機能の停止や、腫瘍などの治療で卵巣を摘出
【注意ポイント】「黄色いおりもの」は、例えば子宮体がん等にともなう症状の可能性もありますので、万全を期すため、先ずは婦人科を受診したり、婦人科検診を受けて、このような問題が無いことを確認しましょう。
婦人科を受診、診察。
内診 | 腟粘膜の萎縮、点状出血の確認。特に、点状出血が特徴。 |
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検査 | 細菌培養。がん細胞の有無を確認。 |
処置 | がんの心配が無く、萎縮性腟炎の所見であれば、全身投与による女性ホルモン補充療法(HRT)、または女性ホルモン(エストロゲン)の局所投与。HRTのリスクをなるべく避けたい場合は、局所投与を選択。 |
必要に応じ抗生物質の腟錠を併用。
閉経後の女性が女性ホルモン(エストロゲン・卵胞ホルモン)の減少で腟粘膜が薄くなり萎縮することで生じる諸症状をまとめてVVAと称しているようです。 海外ではVVAを積極的に治療するようで、例えば北米閉経学会(NAMS)は「更年期および閉経後の患者に対し、臨床医は外陰腟萎縮症(VVA)の症状があるかを質問すべき」としています(2013 Position Statement)。
VVAは、萎縮性(老人性)腟炎を含めた幅広い症状を捉えているようですが、閉経にともなう女性ホルモンの減少による腟の不快な症状という本質は同じと考えられます。
GSM (Genitourinary syndrome of menopause:閉経関連泌尿性器症候群) 2014年に国際女性性機能学会と北米閉経学会で定めた新たな疾患名。婦人科領域の萎縮性腟炎を下地に、女性のエストロゲン低下にともなう症状を、泌尿器科領域となる腟以外の性器や尿路も含めて幅広く捉えた疾患概念。