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更年期や性機能についての学術情報、最新研究などを紹介いたします。更年期や性機能についての学術情報、最新研究などを紹介いたします。

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Category:学術資料

  • 高血圧患者における心血管疾患発現とテストステロン

    2013年02月14日


    【 目的 】
    アンドロゲン欠乏は心血管イベントおよび総死亡の独立したリスクである。高血圧は心血管疾患発現の重要な寄与因子であり、また低テストステロンの増加と関連している。
    臨床的なアテローム性動脈硬化がない中高年の非糖尿病高血圧患者において、低アンドロゲンが重篤な心血管イベント(MACE)の発現を予測しうるか否かを検討した。

    【 方法 】
    228例の男性患者(平均年齢56歳)における総テストステロン(TT)とMACEの関係を比例ハザードモデルにより解析した。

    【 結果 】

    • 平均調査期間44カ月間に、228例中19例(8.3%)の MACEの発現が認められた。
    • MACEを発現しなかった患者に比較して、MACE発現患者のTTは低く( 3.9±0.7ng/ml vs. 4.6±1.5ng/ml, P < 0.01 )、性腺機能低下症の発現率は高かった(36% vs. 16%, P < 0.05)。
    • 多変量コックスモデル解析において、年齢、収縮期血圧およびリスク因子で調整後TTの最低三分位群(<4.0ng/ml)は最高三分位群(>4.9ng/ml) に比してMACEのリスクが有意に高かった。
    • TT 5.04ng/mlがMACEを97.2%除外できるネガティブな予測値であった。
    • 標準的なリスク因子にTTを加えることにより、リスク予測が38.8%有意に改善した(P < 0.05)。

    【 結論 】
    低テストステロンは高血圧患者におけるMACEのリスク上昇と関連している。標準的リスク因子にTTを加える事によりリスク予測は改善し、これら患者における心血管疾患リスクの有用なバイオマーカーであると思われる。

    【 原著 】
    Am J Hypertens. 2013 Mar;26(3):373-81. doi: 10.1093/ajh/hps056. Epub 2013 Jan 7.
    Plasma total testosterone and incident cardiovascular events in hypertensive patients.
    Vlachopoulos C, Ioakeimidis N, Terentes-Printzios D, Aznaouridis K, Rokkas K, Aggelis A, Synodinos A, Lazaros G, Stefanadis C.
    Peripheral Vessels Unit, First Department of Cardiology, Hippokration Hospital, Athens Medical School, Athens, Greece.

    【 弊社コメント 】
    重篤な心血管疾患の発現を防ぐため総テストステロン504ng/dl以上が必要です。(野)

     

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  • テストステロンによる赤血球増加作用のメカニズム

    2013年02月14日


    【 目的・方法 】
    テストステロンの赤血球増加作用はよく知られているが、しかしその機序は不明である。雌雄マウスにおいて、テストステロンと鉄の赤血球内移行の関連性を検討した。

    【 結果 】

    • 雌雄マウスに対するテストステロン投与はヘモグロビンおよびヘマトクリット、網状赤血球数、網状赤血球ヘモグロビンおよび血清鉄および転送飽和度をプラセボーより大きく高めた。
    • テストステロンは肝臓のヘプシジンmRNA発現をダウンレギュレートし、腎臓のエリスロポイエチンmRNA発現をアップレギュレートし、そしてエリスロポイエチン・レベルを上げた。
    • テストステロンによるヘプシジン発現の抑制はエリスロポイエチンあるいは低酸素感受性機序とは無関係であった。
    • 肝臓特異性ヘプシジンを過剰発現するトランスジェニックマウスにおいてはテストステロンによるヘモグロビンの増加反応が認められなかった。
    • テストステロンは脾臓のフェロポチン発現をアップレギュレートし、脾臓の鉄滞留を抑えた。
    • トランスフェリン結合(58) Feの静脈内投与後の(58) Feの赤血球細胞内への移行はテストステロン投与マウスにおいて有意に高かった。
    • テストステロン投与マウスの血清は赤白血病K562細胞のヘモグロビン合成を刺激した。
    • テストステロン投与はSmad1 および Smad4とアンドロゲン受容体(AR)の関連性を促進し、肝臓におけるヘプシジンプロモーターのBMP結合を抑制した。
    • 肝細胞におけるARの異所性発現はヘプシジンの転写を抑制し、この作用はAR拮抗剤フルタミドにより用量依存的にブロックされた。
    • テストステロンはヘプシジンmRNA の安定性には影響しなかった。.

    【 結論 】
    テストステロンはBMP-Smadシグナリングの相互作用を介してヘプシジンの転写を阻害する。テストステロン投与は赤血球細胞内への鉄移行の増加と関連している。

    【 原著 】
    Testosterone Administration Inhibits Hepcidin Transcription and is Associated with Increased Iron Incorporation into Red Blood Cells.
    Guo W, Bachman E, Li M, Roy CN, Blusztajn J, Wong S, Chan SY, Serra C, Jasuja R, Travison TG, Muckenthaler MU, Nemeth E, Bhasin S.
    Section of Endocrinology, Diabetes, and Nutrition, Boston University School of Medicine, Boston, USA.

    【 弊社コメント 】
    以下の鉄の赤血球内移行に関する解説を読むとよく理解できます。

    • 体内における鉄の動態

    (ヘプシジン、フェロポーティン、肝細胞を中心とした鉄の動態)

    • SMAD

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  • シルデナフィルに対するテストステロンの上乗せ効果

    2012年12月04日


    【 目的 】

    勃起不全(ED)および低テストステロンの頻度は高い。EDと低テストステロンを合併す男性に対するシルデナフィル療法へのテストステロンの付加が勃起反応を改善するか否か検討した。

     

    【 方法 】

    対象は年齢40~70歳、IIEFEFドメインスコア25点以下、総テストステロン(TT)11.45 nmol/L (<330 ng/dL)以下または遊離テストステロン(FT)173.35 pmol/L (<50pg/mL)以下の男性。シルデナフィルの用量を適正化した後、140例の被験者を10gテストステロン・ゲル群70例およびプラセボー群70例、各14週間投与に無作為に割り付けた。

     テストステロン群10例、プラセボー群12例が試験を完了しなかったが、一次解析は全例を対象とした。

    【 結果 】

    • 開始時、両群は同様のEFDスコアであった。
    • シルデナフィル単独投与はEFDスコアを上昇したが(mean, 7.7 [95% CI, 6.5 to 8.8])、無作為化後の両群のEFDスコアの変化率に差異はなかった(difference, 2.2 [CI, -0.8 to 5.1]; P = 0.150)
    • 若年者、肥満者、開始時低テストステロン、シルデナフィル単独効果不十分例においても性機能ドメインは同様であった。
    • 有害事象は両群で差異がなかった。
    • テストステロンが単独で勃起機能を改善するか否かは検討しなかった。

    【 結論 】

    シルデナフィル+テストステロンは、シルデナフィル+プラセボ以上に勃起機能を改善しなかった。

     

    【 原著 】

    Ann Intern Med. 2012 Nov
    20;157(10):681-91.

    Effect of testosterone replacement on
    response to sildenafil citrate in men with erectile dysfunction: a parallel,
    randomized trial.

    Spitzer M, Basaria S, Travison TG, Davda
    MN, Paley A, Cohen B, Mazer NA, Knapp PE, Hanka S, Lakshman KM, Ulloor J, Zhang
    A, Orwoll K, Eder R, Collins L, Mohammed N, Rosen RC, Derogatis L, Bhasin S.

    Boston University School of Medicine, 670 Albany Street, Boston, MA 02118, USA.

    シルデナフィルにテストステロンを加えてもEDのさらなる改善なし (日経メディカルオンライン)

    【 弊社コメント 】

    併用による効果の増強が認められなかったという報告です。これまでの報告では併用の意義を認めるものが殆どでした。原因の一つとして対象の選び方にあります。これまでの多くはPDE5阻害剤単独では効果が不十分な例を対象としていました。今回はシルデナフィルで用量を適正化したのちに、テストステロンを上乗せし、効果が増強されるかみています。この違いが大きいかと思います。
    但し、この試験でもサブグループ解析でシルデナフィル単独効果不十分群を取り上げていますが、やはりテストステロン上乗せ効果がなかったとしています。(野)

    EDの原因は多岐に及び、複数の原因が合併して、PDE5阻害剤と男性ホルモンの補充だけでは単純に治らない場合があると考えております。
    また、低テストステロン状態とEDが長期化している人は、勃起に必要な筋肉や諸々の組織が萎縮・線維化して勃起しにくい状態に陥っているため、相応の期間をかけてリハビリが必要と思われます。
    足や腕を骨折や捻挫でギブスで長く固定していた後、ギブスが取れて直ちに元の通り運動が出来るでしょうか?壮年期を過ぎて高齢になるほど丁寧なリハビリを少しずつ行うことになるのではないでしょうか?
    本報は「テストステロン低値のED患者140人を対象とした無作為化試験」ということで、エビデンス・レベルの高い研究デザインですが、もし短期間の内に効果の有無を評価していたとすれば、男性ホルモンの補充を受けた上でのリハビリ効果が発現する前に「効果なし」と判定される症例もあると思われます。PDE5阻害剤と男性ホルモン補充の併用でより効果的に治せる場合があることも過去の研究報告から事実と考えておりますが、シルデナフィルにテストステロンを加えてもEDのさらなる改善なし」とバッサリ斬り捨てるのは乱暴だと思うのです。(福)

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  • 動脈硬化形成に対するアンドロゲンの影響

    2012年12月03日


    【 目的 】
    男性の低テストステロンは心血管疾患と関連している。臨床試験はテストステロン補充(TRT)が心血管疾患の症状を改善し、動脈硬化形成の原因となる炎症を低下することを示している。 動物モデルにおいて、動脈硬化形成に対する有用な効果の一部である血管性炎症メディエイターに対するテストステロンの影響を検討した。

    【 方法 】
    低内因性テストステロンおよび非機能アンドロゲン受容体(AR)を呈する睾丸性女性化マウス(TFM)を用いアンドロゲン状況の動脈硬化形成、血清脂質、および炎症メディエイターに体する影響を検討した。TMFは高コレステロール食で飼育し、生理学的TRTまたは生食水の投与を行い、生殖投与XY同胞マウスと比較した。

    【 結果 】

    • 高コレステロール食28週飼育はXY同胞およびTMFマウスの大動脈起始部における脂肪線条形成を起こし、この効果はTMFマウスにおいて有意に増強されていた。
    • 正常食のTFMマウスはXY同胞に比してTFN-αおよびIL-6の上昇を示した。
    • 高コレステロール食はTFMマウスのMCP-1およびXY同胞のTFN-αおよびMCP-1の上昇を誘発した。
    • TRTはTFMマウスの脂肪線条形成および血清IL-6を減少したが、血清脂質には影響しなかった。
    • 単球/マクロファージ染色の結果、全マウスにおいて大動脈起始部脂肪線条部分に局所性炎症を認め、TRTはTFMマウスにおいてプラークの減少とともに局所性炎症を低下した。
    • Fractalkine (CX(3)CL1) およびその受容体(CX(3)CR1)はアンドロゲン状態とは独立して高コレステロール食の全マウスの脂肪線条に存在した。

    【 結論 】
    この結果は粥腫防御におけるテストステロンのアンドロゲン受容体依存性および非依存性の抗炎症作用を示している。 しかし局所性炎症に関わるテストステロンの機序は不明である。

    【 原著 】
    Endocr Res. 2012 Nov 20.
    Effect of Testosterone on Inflammatory Markers in the Development of Early Atherogenesis in the Testicular-Feminized Mouse Model.
    Kelly DM, Sellers DJ, Woodroofe MN, Jones TH, Channer KS.
    Biomedical Research Centre, Sheffield Hallam University , Sheffield , UK.

     

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  • テストステロン欠乏、海綿体の線維化および勃起不全の関係

    2012年11月30日


    【 目的 】
    年齢、テストステロン欠乏、海綿体の線維化および勃起不全(ED)の間の相関性を検討した。

    【 方法 】
    対象は2010年9月~2011年10月に登録したED患者47例。IIEF-EFスコア、NPTRテスト(リジスキャンによる夜間睡眠時陰茎勃起硬度測定)、総および遊離テストステロン(TTおよびFT)、および海綿体生検を全例に行った。65歳以上を高齢者(OA)、65歳未満を若年者(YA)とそた。関係性の強度はオッズ比にて求めた。

    【 結果 】

    • 陰茎海綿体に52%以上のコラーゲン線維化がある患者の74%は器質性のEDであった。
    • リジスキャン陽性(PR)と陰性(NR)の患者間で年齢、コラーゲン線維化%およびテストステロン・レベルに有意な差異が認められた。
    • 低テストステロンはPRを伴うEDリスクを上昇し(OR: 21.4, 95% CI: 20.2-22.6)。 これは若年者 (OR: 4.3, 95% CI: 2.4-6.2) および高齢者 (OR: 15.5, 95% CI: 13.4-17.6)の両者で認められた。
    • 海綿体の線維化はPRを伴うEDリスクを若年者(OR: 8.2, 95% CI: 6.4-10.0 )および高齢者(OR: 24.6, 95% CI: 20.8-28.4)で上昇した。

    【 結論 】
    年齢、テストステロン欠乏および海綿体線維化とPRを伴うEDの間に強い関連性が認められた。 年齢、テストステロン欠乏および海綿体線維化は器質性EDおよび海綿体線維化の修正因子と考えられる。 テストステロン補充あるいはPDE5阻害剤が海綿体線維化リスクを下げるかあるいはED患者の線維化強度を下げるか検討が必要である。

    【 原著 】
    BMC Surg. 2012 Nov 15;12 Suppl 1:S24. Epub 2012 Nov 15.
    Testosterone deficiency causes penile fibrosis and organic erectile dysfunction in aging men. Evaluating association among Age, TDS and ED.
    Iacono F, Prezioso D, Ruffo A, Illiano E, Romis L, Di Lauro G, Romeo G, Amato B.
    Department of Urology, University “Federico II” of Naples, Naples, Italy.

    (さらに…)

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  • 低バイオアベイラブル・テストステロンおよび高SHBGは生検による前立腺癌検出リスクが4.9および3.2倍高い

    2012年11月30日


    【 目的 】
    近年の研究はテストステロン・レベルと前立腺癌(PC)の間に負の関係を示している。PC診断におけるホルモン・パターンの有用性に関しては異論が多い。そこで、ホルモンパターンとPCの関係およびPCリスク評価のホルモン・レベルのカットオフ値を検討した。

    【 方法 】
    2006年11月~2009年5月の間に前立腺生検を行った279例について遡及的解析を行った。前立腺生検の適応の指標は直腸診(DRE)の結果、あるいはPSAの上昇によるPCの疑いである。スクリーニングは5+5コア経直腸超音波ガイド前立腺生検で行った。年齢、前立腺容積、DRE(正常または異常)、生検所見(正常またはPC)、PSA、遊離型/総PSA比、PSA密度、テストステロン(T)およびSHBGを遡及的に調査した。遊離およびバイオアベイラブル・テストステロン(BT)はVermeulen’s formulaを用いて求めた。

    【 結果 】

    • 多変量解析において、DREの異常、SHBG levels ≥ 66.25 nmol/l、およびBT≤ 104 ng/dlが前立腺癌の診断と関係していた。オッズ比は各々 5.46, p < 0.001、3.27; 95%CI 1.52 to 7.04, p < 0.002、および4.92, 95% CI 1.78 to 13.59, p = 0.002であった。
    • 年齢、FT、PSA、T、PSA/T、PSA/FTおよびPSA/BTはPCの診断と関係していなかった。

    【 結論 】
    低バイオアベイラブル・テストステロンおよび高SHBGは生検による前立腺癌検出リスクが4.9および3.2倍高かった。この事実は前立腺癌リスクについてカウンセリングする患者さんの臨床的シナリオに有用である。

    【 原著 】
    Scand J Urol Nephrol. 2012 Nov 27.
    Higher sex hormone-binding globulin and lower bioavailable testosterone are related to prostate cancer detection on prostate biopsy.
    García-Cruz E, Carrión Puig A, García-Larrosa A, Sallent A, Castañeda-Argáiz R, Piqueras M, Ribal MJ, Leibar-Tamayo A, Romero-Otero J, Alcaraz A.
    Urology Department, Hospital Clínic Barcelona , Barcelona , Spain.

     

    (さらに…)

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