-
女性の低性欲障害に対するテストステロン+PDE5阻害剤のオンデマンド投与
2012年11月16日
【 目的 】
女性の性欲低下は、性的シグナルに対する脳の相対的な非感受性が原因と思われる。 テストステロン(T)0.5mgの舌下投与は性的シグナルに対する脳の感受性を上げる。 脳の性的刺激はPDE5阻害剤による性器の性的反応の上昇に不可欠である。 したがって、T+PDE5阻害剤の併用は性的反応を、特に性的シグナルに対して低感度の女性において増強する。 そこで、T+PDE5阻害剤のオンデマンドの使用が性機能を改善するという仮説を、性的シグナルに対する感受性低下の結果として低性欲障害(HSDD)を起こしている女性において検証した。【 方法 】
56名のHSDD患者を対象に無作為、ニ重盲検、プラセボ比較、クロスオーバー試験をおこなった。 治療レジメはプラセボ、T+PDE5阻害剤およびT+セロトニン(1A)受容体拮抗剤である。
主要評価項目は、自覚所見として性的満足度、性器興奮の有無、性欲。 生理学的所見として腟のパルス強度。
Cognitive:
preconscious attentional
bias.【 結果 】
T+PDE5阻害剤は、プラセボと比べて生理学的および自覚的性機能を有意に改善した。【 結論 】
T+PDE5阻害剤のオンデマンド投与は、性的シグナルに非感受性の低性欲障害女性の治療に有用である。【 原著 】
J Sex Med. 2012 Nov 6.
Toward Personalized Sexual
Medicine (Part 2): Testosterone Combined with a PDE5 Inhibitor Increases
Sexual Satisfaction in Women with HSDD and FSAD, and a Low Sensitive System
for Sexual Cues.
Poels S, Bloemers J, van Rooij K, Goldstein I, Gerritsen J,
van Ham D, van Mameren F, Chivers M, Everaerd W, Koppeschaar H, Olivier B,
Tuiten A.
Emotional Brain B.V., Almere, The Netherlands Utrecht Institute for
Pharmaceutical Sciences and Rudolf Magnus Institute of Neuroscience, Utrecht
University, Utrecht USA.続きを読む
-
テストステロン・レベルは骨健康状態、握力および体組成の加齢に伴う変化と関連する
2012年11月12日
【 目 的 】
テストステロン・レベルの変化は幾つかの老化現象と関連している。 加齢に伴うテストステロンの低下と骨の健康状態、握力、体脂肪率および体脂肪量の変化との関係を調査した。【 方 法 】
対象は年齢40歳以上のマレーシアの中国系およびマレー系男性335例である。 体組成、踵骨実音速および握力の測定、採血を行った。 年齢、テストステロン・レベルおよび加齢に伴う変化との関係を直線回帰分析により検討した。【 結 果 】
- テストステロン、SHBG、踵骨実音速、握力、体脂肪率および非脂肪容量は年齢と共に有意に変化していた(p
< 0.05)。 - バイオアベイラブルおよび遊離テストステロンの加齢に伴う低下は踵骨実音速、非脂肪容量および握力の減少と有意に関連していた(p
<
0.05)。
【 結 論 】
テストステロン・レベルは骨健康状態、握力および体組成の加齢に伴う変化と関連し、その関係は年齢依存性であった。【 原 著 】
Aging Male. 2012 Oct 26.
Testosterone is associated
with age-related changes in bone health status, muscle strength and body
composition in men.
Chin KY, Soelaiman IN, Mohamed IN, Shahar S, Mohd Fahmi
Teng NI, Mohd Ramli ES, Ahmad F, Aminuddin A, Wan Ngah WZ.
Department of
Pharmacology, Faculty of Medicine, Universiti Kebangsaan Malaysia.続きを読む
- テストステロン、SHBG、踵骨実音速、握力、体脂肪率および非脂肪容量は年齢と共に有意に変化していた(p
-
2012年11月08日
【 目 的 】
EDの原因の一部はホルモンである。しかし、65歳以上の男性ではテストステロン欠乏が大きな要素となっている。 しかしながら、健康状態が良好ではない65歳以上のポーランド人男性における、EDを合併するテストステロン欠乏症の頻度は分かっていない。【 方 法 】
EDを有する65歳以上の男性286例について勃起機能をIIEF5による調査を行い、テストステロンを測定した。【 結 果 】
- テストステロン欠乏症の発現頻度はTT200,
250, 300 および 350 ng/dL以下がそれぞれ17, 33, 42 および 57%であった。正常範囲(>350
ng/dL)の男性は47%に過ぎなかった。
(訳注: どちらかの数値に誤りがあります) - EDの程度はテストステロン最下位群で最も高く、軽度が
39.5%、軽度~中等度が 26.2%、中等度が18.2% および重度が16%であった。 - 年齢とTTの間(r = -0.3328, p
< 0.05)、IIEF-5 スコア と TTの間(r = -0.3149, p < 0.05) およびIIEF-5 スコアと年齢の間(r = -0.3463, p < 0.05)に それぞれ負の相関関係が認められた。 - 最も多く認められたメタボリックな以上は肥満(68% in
men with TT >350 ng/dLで68%、 TT <350 ng/dLで91%) および脂質異常(それぞれ54
および95%)であった。 - 肥満、年齢および脂質異常はテストステロンの低下と相関していた。
- 空腹時血糖の異常はテストステロンに影響されなかった。
【 結 論 】
テストステロン欠乏症はEDを有するポーランド人男性に高頻度に認められ、年齢、肥満および脂質異常と負相関している。【 原 著 】
Aging Male. 2012 Oct 24.
The high prevalence of
testosterone deficiency in population of Polish men over 65 years with
erectile dysfunctions.
Rabijewski M, Papierska L, Kozakowski J, Zgliczyński W.
Department of Endocrinology, Medical Centre for Postgraduate Education ,
Warsaw , Poland.【 弊社コメント 】
EDを有する高齢男性のテストステロン欠乏の頻度は、ありそうなデータですが、具体的にはなかなか出て来ないので、貴重です。(野)続きを読む
- テストステロン欠乏症の発現頻度はTT200,
-
EDに対するテストステロンおよびPDE5阻害剤の併用療法 (レビュー)
2012年11月08日
【 要 約 】
テストステロン欠乏症はED患者のPDE5阻害剤の臨床効果を低下すると思われる。 性腺機能低下患者において、テストステロン補充はシルデナフィルあるいはタダラフィルによる治療に効果の無かった患者の性機能の亢進と関連している。そこで、PDE5阻害剤単独療法で効果がなかったEDおよび低~正常下限テストステロンレベルの男性におけるテストステロンとPDE5阻害剤併用療法を検討した臨床試験のレビューを行った。
調査した臨床試験は幾つかが方法論的欠点があり、様々なものがあった。 全体的にはPDE5阻害剤へのテストステロンの付加は、単独療法に効果がなく、総テストステロン値が 300ng/dL
未満のED患者に有用と思われる。無作為コントロール比較ニ重盲検試験が必要であり、それにより適正な対象、テストステロンのカットオフ値、用量、併用期間を定める必要がある。
【 原 著 】
Can Urol Assoc J. 2012 Aug;6(4):269-74
Synergetic effect of testosterone and
phophodiesterase-5 inhibitors in hypogonadal men with erectile dysfunction:
A systematic review.
Alhathal N, Elshal AM, Carrier S.
Division of
Urology, Department of Surgery, McGill University, Montreal, QC.【 弊社コメント 】
テストステロンの分泌が低い人で、PDE5阻害剤(バイアグラ・レビトラ・シアリス)だけではEDが改善できない人の場合に、PDE5阻害剤とテストステロン補充の併用療法が有用と思われます。 ただし、それを言い切るために必要となる厳格な研究は、未だ十分に出来てないようです。(福)続きを読む
-
NHK(Eテレ)きょうの健康: 男性の更年期障害~LOH症候群~「見逃さないで 男性ホルモンの低下」
2012年10月24日
平成24年(2012年)10月23日と24日にNHK(Eテレ)「きょうの健康」で、男性の更年期障害~LOH症候群~「見逃さないで 男性ホルモンの低下」(23日)、「これで改善!治療と日常生活」(24日)と題したLOH症候群に関する放送がありました。
24日の放送「LOH症候群の治療」の中で、「男性ホルモン(テストステロン)軟こう」も選択肢の一つとして紹介されました。
男性ホルモンを補充する、テストステロン軟膏(クリームタイプ)の「グローミン」は、全国210施設(H24.10月末現在)の病院・クリニック・診療所で臨床応用されており、約1万2千店の薬局で、お取り寄せ出来ます。
続きを読む
-
テストステロンはTNFによる心筋障害の性差の原因となっている
2012年05月21日
【 目的 】
性による特殊な差異は腫瘍壊死因子(TNF)に接触したときの心筋において観察される。男性の心筋は女性に比してTNFの存在下に機能を大きく低下する。加えて、先に我々は女性の心臓においてTNFによる心機能の異常にエストロゲンが殆ど影響しない事を見出し、男性ホルモン(テストステロン)がTNFによる心筋障害に関与していると示唆された。
そこで、男性の心臓においてTNFによる心筋障害にテストステロンが有害な働きをしているという仮設を検討した。【 方法 】
年齢がマッチした雄マウス、雌マウス、去勢マウス、およびアンドロゲン受容体拮抗剤フルタミド投与マウスの摘出心臓をランゲンドルフ装置にて45分間、TNFを注入した。左室内圧(LVDF)および心拍数を連続的に測定した。TNF注入後の心筋組織のcaspase-8
および caspase-3を測定した。【 結果 】
- TNFの注入は雄マウスのLVDFを抑制したが、心拍数には影響しなかった。
- ダブルプロダクト(RPP:心拍数×最高血圧で表される量で心機能の指標)はTNF暴露後雌マウスにして雄マウスで著明に減少し、TNFにより誘導されるcaspase-8
および
caspase-3の高値と関連していた。 - 去勢による内因性テストステロンの枯渇あるいはフルタミドの投与は雄マウス心臓のTNFによるRPPの低下に拮抗した。
- 去勢あるいはフルタミド投与はTNF産生およびTNFR1
およびTNFR2.の心筋発現に影響しなかった。
【 結論 】
テストステロンは心筋に対するTNFの有害作用の性差の原因となっていることが示された。TNFによる心筋障害の相対的低閾値はTNFR1
およびTNFR2の下流シグナルとテストステロンの相互作用によるものと思われる。【 原著 】
Int J Clin Exp Med. 2012;5(2):96-104. Epub 2012 Apr 8.
Role of endogenous
testosterone in TNF-induced myocardial injury in males.
Wang M, Gu H,
Brewster BD, Huang C.
The Department of Surgery, Indiana University School of
Medicine Indianapolis, Indiana.続きを読む
-
2012年05月21日
【 目的・方法 】
ED合併2型糖尿病患者の糖-代謝プロフィルを調査した。2型糖尿病男性88例、平均年齢 62.78±9.26歳について調査を行った。IIEFにて性機能症状を、SAS(self-rating anxiety scale)にて不安症状を、および SDS(self-rating depression
scale)にてうつ症状を評価した。
BMI、腹囲、HbA(1c)、空腹時血糖(FPG)、空腹時インスリン(FPI)、 HOMA
指数、脂質、総テストステロン、遊離テストステロン、DHTおよびSHBGを測定した。【 結果 】
- IIEF調査票にて、50例(56.8%)がEDであり、残る38 例(43.2%)はEDでなかった。
- ED群の70.0%が喫煙者であり、非ED群の57.9%より有意に多かった(p<0.05)。
- ED群の38.0%が慢性虚血性疾患の病歴があり、非ED群の23.7%より多かった(p<0.05 between the two
groups)。 - ED群はより高齢で、驚くべきことにHbA(1c)が低かった。さらに、ED群はFPIが高く、テストステロンおよびDHTが低かった。
【 結論 】
イタリアの2型糖尿病男性、平均年齢62歳のED発症率は56%で、高FPIであるがHbA(1c)は低く、テストステロンおよびDHTの低下とリンクしていた。【 原著 】
Endocr J. 2012 Apr 26.
Glyco-metabolic profile among
type 2 diabetic patients with erectile dysfunction.
Derosa G, Tinelli C,
D’Angelo A, Ferrara G, Bonaventura A, Bianchi L, Romano D, Fogari E,
Maffioli P.
Department of Internal Medicine and Therapeutics, Fondazione
IRCCS Policlinico S. Matteo, University of Pavia, Pavia , Italy【 弊社コメント 】
対象の選択基準、方法は分かりませんが、ED合併群のHbA(1c)値が注目されます。一般的には糖尿病がより重度で高いのではないかと思いますが・・・。(野)続きを読む
-
重度の睡眠時無呼吸肥満男性における通常量のテストステロン療法
2012年04月25日
【 目的 】
高用量の短期テストステロン療法は閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)の男性の呼吸を急速に悪化することが見られた。OSAの肥満男性における低用量から通常量近くのテストステロンの影響は長期的に異なると思われるが、系統的に研究されていない。
そこで重度のOSA肥満男性において減量とともに通常量近くのテストステロン療法を行い、睡眠および呼吸への影響を検討した。【 方法 】
デザインは67例の男性を対象とした18週間の無作為、ニ重盲検、プラセボ比較試験である。全例、低カロリーダイエットを行い、同時にテストステロン・アンデカノエイト1000mgまたはプラセボの筋注を0、6、および12週に行った。睡眠および呼吸を0、7および18週後に夜間に睡眠ポリグラフ計にて測定した。【 結果 】
- テストステロンはプラセボに比して、7週後に酸素不飽和指数(ODI)を10.3events/hour (95%CI 0.8 to 19.8 events/hour, p=0.03)、および夜間低酸素症(酸素飽和90%以下の睡眠時間SpO(2) T90%)を6.1%(95%CI 1.5% to 10.6%, p=0.01)悪化した。
- 18週後では、テストステロン療法とプラセボの間にODI (4.5, -5.4 to 14.4 events/h, p=0.36) あるいは SpO(2) T90%(2.9%, -1.9% to 7.7%, p=0.23)に差異がなかった。
- ODI および SpO(2) T90%に対するテストステロン療法の影響は開始時のテストステロン濃度によって差異がなかった。
- 血中テストステロン濃度はODIあるいはSpO(2) T90%と相関しなかった(all p>0.19)。
【 結論 】
重度のOSA肥満男性におけるテストステロン療法は睡眠時呼吸障害を期間限定的に軽度に悪化した。これは最初のテストステロン濃度とは関係がなかった。【 原著 】
Clin Endocrinol (Oxf). 2012 Apr 18.
Effects of testosterone therapy on sleep and breathing in obese men with severe obstructive sleep apnea: a randomised placebo-controlled trial.
Hoyos CM, Killick R, Yee BJ, Grunstein RR, Liu PY.
Endocrine and Cardiometabolic Research Group, University of Sydney, Sydney, NSW, Australia.【 弊社コメント 】
低用量から通常量のテストステロンであれば問題ないのでは?・・・という期待で行われましたが、そうはなりませんでした。(野)男性ホルモンが睡眠時無呼吸症候群の症状を悪化させるという報告があることから、関係学会のガイドラインで使用禁忌と定められており、これに準じて男性ホルモンを配合する弊社製品(トノス、グローミン、ヘヤーグロン)のご使用を控えるようにお願いしています。ただし、これまでの報告は古い論文で症例数も少なく、男性ホルモンによる因果関係が本当にあるのか議論の余地があるため、例えば少量の投与量であれば問題ない事を期待しましたが、本報でも睡眠時無呼吸症候群の症状を悪化させる結果となりました。(福)
続きを読む