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2010年11月10日
【 目的 】
テストステロン欠乏症候群(TDS)と勃起不全の関係およびその診断および治療について分析した。【 方法 】
PUBMEDデータベースを検索し文献的レビューを行った。【 結果 】
- テストステロンのどの成分(総、遊離あるいは生物学的)を測定すべきか、診断価値がなんであるかという一定の基準が欠如しているため、真のTDSは知られていない。
- こうした事実にも関わらず、勃起不全男性の5~15%がテストステロンレベルの低下を示す。
- テストステロンが中枢および末梢の両レベルで勃起の生理に関わっている事を示す確かな研究がある。にも関わらず、ヒトで得られるエビデンスは、主にTDSの高齢患者ではあるが、強固なものではない。
- 幾つかのメタ解析はテストステロン補充が勃起および性欲を改善する事を示している。
- しかしながら、TDSの全ての患者にテストステロン補充は有用ではない。それは多分、勃起不全の原因が多元的であるためであろう。
- テストステロン単独あるいはPDE5阻害剤単独で無効な勃起不全と性腺機能低下症を合併する患者には、PDE5阻害剤とテストステロンの併用療法が有用と思われる。
【 結論 】
勃起不全を訴える患者にはテストステロンの測定が強く勧められる。なぜならば、テストステロン補充は多くの患者で勃起および性欲を改善できる。さらにテストステロン補充はTDSの他の症状も改善するであろうし、PDE5阻害剤単独療法で効果が得られなかった時、併用により効果を高めるであろう。【 原著 】
Arch Esp Urol. 2010 Oct;63(8):663-670.TESTOSTERONE DEFICIT SYNDROME AND
ERECTILE DYSFUNCTION.Gil Salom M, Martinez Jabaloyas JM.
Servicio de
Urologia. Hospital Universitario Doctor Peset. Valencia. Espana. Departamento Universitario de Cirugia. Universidad de Valencia.
Espana.【弊社コメント】
EDとテストステロンの関係について世界中で発表された論文を通じて、PDE5阻害剤(バイアグラ・レビトラ・シアリス)とテストステロンの併用の有用性が示唆されています。テストステロンの分泌低下がEDの一因になると考えられますが、テストステロンを投与すればEDが治るかというと、必ずしも全ては救えません。EDの原因は多岐に及ぶため、テストステロン以外にもEDの原因があれば、自ずとテストステロンの効果が不十分になります。
何よりも、EDになってから時間が経つほど、勃起に必要な筋肉が萎えてしまうので、重症化の悪循環に陥ります。骨折してギブスで固定した所の筋肉が使わずに萎えてしまえば、ギブスが取れてから元のように運動できず、リハビリが必要になるのと同じかも知れません。
ちなみに性交の機会が無い健常男性が勃起機能を維持できるのは、マスターベーションだけでなく、夜間勃起や早朝勃起を通じて勃起に必要な筋肉を維持させているためと考えられます。
かといって、PDE5阻害剤も万能でなく、十分に効果が得られない場合もあるようです。
そのような時、PDE5阻害剤とテストステロンの併用が有用になると考えられています。(福)
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