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最終糖化産物(AGE)による内皮細胞傷害に対するテストステロンの防御作用

2017年02月06日


<目的>
内皮細胞に対してテストステロン(以下、T)が防御的に作用するか否かは明らかではない。生理学的Tが内皮細胞に対する最終糖化産物(AGE)の有害作用を阻止できるか否かは確認されていない。
AGEによる内皮細胞の傷害に対するTの影響を検討した。

<方法>
ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を in vitro にて培養し、各種濃度のT存在下あるいは非存在下にAGE処理を行った。各群の細胞生存率をMTS試験にて測定した。初期段階のアポトーシスをAnnexin V fluorescein isothiocyanate/propidium iodide二重染色によるフローサイトメトリーにより検出し、アポトーシス関連蛋白、B細胞リンパ腫-2 (Bcl 2), Bcl 2関連X蛋白 (Bax) およびカスパーゼ3をウェスタンブロット法により測定した。
培養液中の酸化ストレスおよび催炎症パラメータをELISA法により測定した。

MTS試験
MTSをホルマザン色素(紫色)へ還元する酵素活性を測定する比色定量法である。この方法により培養細胞の生存率や増殖率を試験することが可能である。様々な試薬(医薬品候補など)や毒物の細胞毒性を評価することにも用いられる。

<結果>
・MTS試験の結果、AGEはHUVECの増殖を有意に抑制したが、生理学的濃度のTはこの障害を緩和した。

・生理学的濃度のTはカスパーゼ3およびBax/Bcl 2を介したAGEによるアポトーシスからHUBECを防御した。

・ HUVECのAGE処理は抗酸化パラメータを有意に減少し、マロンジアルデハイド(生体内で自然に発生する酸化ストレスの指標)およびTNFα(炎症の主な原因物質)を増加した。ヤーヌスキナーゼ2およびシグナル伝達性転写因子3(細胞の癌化に関与する転写因子) の活性化はAGE処理により有意に上昇した。しかし、生理学的Tの前処置はこれらの変化を軽減した。

<結論>
生理学的濃度のTはAGEによるHUVECの傷害を軽減すると思われる。

<参考>
ヤーヌスキナーゼ
非受容体型チロシンキナーゼの1つである。一般にJAKやJakと略される。Jakは、機能や遺伝子の位置の違いからJak1、Jak2、Jak3、Tyk2に分けられ、それらの多くは細胞増殖、生存、発達そして分化に関与しており、特に免疫細胞や血球系細胞において重要な役割を果たしている。シグナル伝達はSTATを介して伝えられる。

【原著】
Mol Med Rep. 2017 Jan 19. doi: 10.3892/mmr.2017.6130.
Protective effects of physiological testosterone on advanced glycation end product induced injury in human endothelial cells.
Xie Y, Yu D, Wu J, Li L

【弊社コメント】
テストステロンを生理学的濃度に維持することが、内皮細胞の傷害を軽減し、ひいては糖尿病などにともなう障害を抑えることが期待できるのかも知れません。(福)

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