アンドロテスト: 性機能障害をともなう男性における性腺機能低下症の問診票の検討
2009年04月16日
【目的】
性機能障害患者における低テストステロン症(総テストステロン< 300 ng/dL)として定義される性腺機能低下症の検出に有用なスコア化された簡便で体系的な質問表の作成を行った。
【方法】
最低限の項目が多項目の体系的質問表から、215例のサンプル集団における、性腺機能低下症に対する感度と特異性のROC分析により確認された。
【測定項目】
感度と特異性は664例の患者で検証された。PSA、睾丸容積、およびその他の臨床的および心理的パラメーターとテスト・スコアの相関性が妥当性の指標として検討された。
【結果】
- 最終的な12項目版( ANDROTEST)のROC分析
閾値をスコア8とした時、低TT(<10.4 nmol/L)に対して感度は76%、特異性は66%、低FT (<37 pmol/L)に対しては感度71%、特異度65%であった。 - アンドロテストスコアとテスステロン値の関係
スコアと総および遊離テスステロン値との間に有意な相関が認められた。 (a)総テストステロン r=-0.336, p<0.0001 (b)遊離テストステロン r=-0.402, p<0.0001
- 病的な患者(例、スコア>8)は性腺機能低下関連徴候(低睾丸容積、高いうつ症状)の頻度が高かった。
- 病的なスコア>8とは性腺機能低下関連徴候の関係
スコア>8では低睾丸容積、高いうつ症状の頻度が高かった。
アンドロテスト (ANDROTEST) とは
性腺機能低下症(性機能障害患者で総テストステロン 300ng/dL以下)のスクリーニングのための質問表。3カ月に1回以上の性交のある患者に適用できる。
質問表は12項目からなる。質問者は正確な言葉を用い、太字で書かれた質問表で尋ねるべきである。もし必要ならば、患者の回答をはっきりさせるため、通常の字体で書かれた質問表を使用する。患者は各項目ごとに彼自身が用いる言葉で自由に回答できるようにする。
各項目ごとに、詳細な説明に続き、患者の回答を質問者が0-3のスケールでコード化する。項目のいくつかはイエス/ノーの形式である。
質問の順序の変更は患者の回答を変化させる可能性があり、示された質問の順序は守らなければならない。
- ①年齢
「何歳ですか?」と尋ねた後、訪問時の患者の年齢を累進スコアでランクする。
- 0点: 40歳未満 1点: 40-49歳 2点: 50-59歳 3点: 60歳以上
- ②性的成熟(思春期)に達したのはいつか?
何歳であなたは性的成熟に達しましたか?
スクールメイトと同じ時期に思春期を経験しましたか?
スクールメイトと同じように陰毛や性器の成熟に気付きましたか?
- スクールメイトと同時期、あるいはそれ以前に性的成熟があれば、ランク0で、
思春期が遅れていれば、同3となる。 - 0点: 9-14歳(正常) 3点: 14歳以降(遅延)
- ③下垂体疾患の病歴があるか?
下垂体疾患の手術を受けた事がありますか?
下垂体疾患の薬物療法を行った事がありますか?
- 下垂体疾患の病歴がなければ0、
- 病歴があれば30点
- ④睾丸停留テストの診断の有無
睾丸停留の手術を受けた事がありますか?
睾丸停留の薬物療法を行った事がありますか?
- 睾丸停留(片側でも)の病歴がなければスコアは0、病歴があれば3。
- 0点: いいえ 3点: はい
- ⑤性交中の出来事について
過去3カ月間の問題点について。勃起しなかった事はどの位の頻度ですか?
(時々は25%未満、かなり頻繁には25-49%、度々は50-74%、何時もは75%以上。)
- 0点: ときどき 1点: かなり頻繁に 2点: たびたび 3点: いつも
- ⑥勃起で目覚めた事はあるか?
過去3カ月間にどれくらいの頻度でありますか?以前と同様の頻度で自発的夜間/早朝勃起があればランク0、
夜間/早朝勃起はあるが以前に比べると、過去3カ月はいくらか少ない場合は1、
少なくとも50%は少ない場合は2、
夜間/早朝勃起がない場合は3。0点: はい、規則的にある。
1点: 過去に比べると少ない。
2点: 時々あるだけ。
3点: ない。
- ⑦過去3カ月間の自慰(マスターベーション)の頻度は?
- 0点: 8回/月以上 1点: 3-7回/月 2点: 1-2回/月 3点: なし
- 「なし」と回答した場合に質問8.は適用せず、質問8.に対するランクを1として、質問9.へ続く。
- ⑧自慰中、どのように感じるか?
上記の質問の後、以下のスコアでランクする。0点: 良い感じ(well)。
1点: 少し罪悪感を感じる。
2点: 大きな罪悪感を感じる。
3点: 非常に大きな罪悪感を感じる。
- ⑨過去3カ月間、セックスに対する欲求が大きくなったか、小さくなったか?
過去に比して欲求が増加したか、減少したか? - 欲求が変わらなかったか増加した場合はランク0、
- 減少した場合は1。0点欲求が不変または増加した。
- 1点: 欲求が減少した。
- ⑩射精量の減少に気づいたか?
射精量の変化に気付かなかった場合はランク0、
僅かに減少したと感じた場合は1、
著明に減少した場合は2、
射精が起きなかった場合は3。 - 0点: 不変 1点: わずかに減少した
- 2点: 著明に減少した 3点: 射精が生じない
- ⑪●過去3カ月間において、性交中に射精あるいはクライマックスに達するのが困難であったか?
射精に困難さがなかった、あるいはまれなケースとしてパートナーなしで自慰によってのみ射精およびクライマックスが得られる場合は0、
射精あるいはクライマックスは可能であるが、大きな努力および長時間の性交が必要、あるいは性交中ではなくパートナーの存在下で自慰によってのみ可能な場合は1。 - ●挿入あるいはパートナーの手あるいは口での刺激による性交中に射精することが出来ましたか?
- 0点: いいえ 1点: はい
- ⑫体重と身長は?
体重と身長を質問後、次の計算式によってBMIを算出し、スコアをつける。BMI=体重[kg]/身長の二乗[m2]0点: 25 kg/㎡未満
1点: 25-29.9 kg/㎡
2点: 30-34.9 kg/㎡
3点: 35 kg/㎡以上
【原著】
Corona G,etal:J Sex Med. 2006 Jul;3(4):706-15.
Andrology Unit, Department of Clinical Physiopathology, University of Florence, Florence, Italy.
ANDROTEST: a structured interview for the screening of hypogonadism in patients with sexual dysfunction.
【弊社コメント】
性腺機能低下症であることを確認するためには、採血して血中のテストステロン(男性ホルモン)レベルを測定しなくてはなりませんが、採血検査の要否を問診であらかじめ判断するのに有用と思われます。
泌
尿器科の専門医であれば、テストステロン値の採血検査をためらう事はないと思われますが、むしろ専門医でない医師が患者様の主訴から性腺機能低下症を疑う
場合や、自分自身の症状から性腺機能低下症を心配している患者様が自己判断する目安として、この問診票が利用できるかも知れません。(福)
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