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幼児へのテストステロン投与による低身長のリスクについて

2007年04月16日

2歳の息子が尿道下裂です。手術をする際に、今のペニスサイズのままだとやや危険が伴うとのことで、親の同意があればテストステロンを3回(一回2cc)打ってから一時的にサイズを大きくして手術することになるとのことです。
気になるのは、テストステロンが時として低身長を招くおそれも否定できないと聞いたことです。実際のところ低身長を招くおそれはありますか。

 


 

ご子息様の切実なご事情について私どもにお問合せ下さり、ご高配まことに有難うございます。
ただ、私どもは医師でないため、倫理面のみならず関係法令上からも、診断や処置、あるいはセカンド・オピニオンとして責任のあるコメントが出来ません。あくまで、一般論として申し上げますことを、あらかじめご容赦下さいませ。

 

神奈川県立こども医療センター泌尿器科のHPによりますと、

> 亀頭部が小さい場合は手術の前に男性ホルモンを少量投与する
> ことで亀頭の発育を促す場合があります。当科では1~3回注射
> (1ヵ月間隔)で投与します。このような短期間のホルモン投与は
> 長期的に副作用がないと考えられています。

 

また、東京女子医科大学腎臓病総合医療センター泌尿器科のHPでも、下記のような記述がございます。

> おちんちんがとても小さい場合は手術の前に男性ホルモンを少量
> 投与することで手術をやりやすくする場合があります。当科では
> 1~3回注射(1ヵ月間隔)で投与しますが現時点でこのような幼児期
> の少量のホルモン投与はきわめて安全と考えられており、長期的に
> 副作用を生じたという報告はありません。

 

以上の記述から察するに、ご子息様の治療戦略は一般的なもので、このようなケースでのテストステロン投与は安全とされているようです。
また、私どもが知る限り、ご子息様と同様のケースで低身長を招いたという事例は存じ上げません。

 

一般に、成人に向けて身長が伸びる時期は第二次性徴の頃(小学校高学年~中学校にかけて)かと存じますが、この時期に過剰な男性ホルモンの投与を行いますと、脳が「もう十分にホルモンが分泌された」と判断して成長を止めてしまうため、自ずと低身長のリスクが高まるようです。

 

あくまで私見であることをお許し戴きたいのですが、上記のリスクを逆に申しますと、先述の第二次性徴の時期から十分に離れた生後間もない時期であれば、自ずとリスクが低くなるだろう、ということではないでしょうか。そうは申しましても、絶対に大丈夫とは言い切れないのだろうと思います。

 

「おそれも否定できない」という表現は、「実態として懸念のケースを経験していないが、かといって絶対に有り得ないと言い切るだけの理論的根拠が無いので、今後、症例数が増えれば、中にはそのようなケースが生じるかも知れない…」というニュアンスかと存じます。

 

現代の医学の倫理には「EBM」と呼ばれる、「客観的な根拠にもとづいた医療」が前提とされていますので、専門家の間であらゆる角度から客観的に評価して認められた根拠が無い中では、たとえ担当医に確信があり、患者様の不安をやわらげ安心していただきたくても、「絶対に大丈夫」と歯切れ良く言い切れない時代です。
そのため、たとえ極めてまれなケースでも、想定される最悪の事態も含めた事前説明をして、あらかじめ患者様の了解をとりつけなくてはなりません。

 

以上、歯切れ良くお答え出来ず、誠に申し訳ございません。大変心苦しい気持ちでございますが、状況ご賢察のうえ、保護者の責任でご判断下さいますよう、何とぞ宜しくお願い申し上げます。