シルデナフィルに対するテストステロンの上乗せ効果
2012年12月04日
【 目的 】
勃起不全(ED)および低テストステロンの頻度は高い。EDと低テストステロンを合併す男性に対するシルデナフィル療法へのテストステロンの付加が勃起反応を改善するか否か検討した。
【 方法 】
対象は年齢40~70歳、IIEFのEFドメインスコア25点以下、総テストステロン(TT)11.45 nmol/L (<330 ng/dL)以下または遊離テストステロン(FT)173.35 pmol/L (<50pg/mL)以下の男性。シルデナフィルの用量を適正化した後、140例の被験者を10gテストステロン・ゲル群70例およびプラセボー群70例、各14週間投与に無作為に割り付けた。
テストステロン群10例、プラセボー群12例が試験を完了しなかったが、一次解析は全例を対象とした。
【 結果 】
- 開始時、両群は同様のEFDスコアであった。
- シルデナフィル単独投与はEFDスコアを上昇したが(mean, 7.7 [95% CI, 6.5 to 8.8])、無作為化後の両群のEFDスコアの変化率に差異はなかった(difference, 2.2 [CI, -0.8 to 5.1]; P = 0.150)。
- 若年者、肥満者、開始時低テストステロン、シルデナフィル単独効果不十分例においても性機能ドメインは同様であった。
- 有害事象は両群で差異がなかった。
- テストステロンが単独で勃起機能を改善するか否かは検討しなかった。
【 結論 】
シルデナフィル+テストステロンは、シルデナフィル+プラセボ以上に勃起機能を改善しなかった。
【 原著 】
Ann Intern Med. 2012 Nov
20;157(10):681-91.
Spitzer M, Basaria S, Travison TG, Davda
MN, Paley A, Cohen B, Mazer NA, Knapp PE, Hanka S, Lakshman KM, Ulloor J, Zhang
A, Orwoll K, Eder R, Collins L, Mohammed N, Rosen RC, Derogatis L, Bhasin S.
Boston University School of Medicine, 670 Albany Street, Boston, MA 02118, USA.
シルデナフィルにテストステロンを加えてもEDのさらなる改善なし (日経メディカルオンライン)
【 弊社コメント 】
併用による効果の増強が認められなかったという報告です。これまでの報告では併用の意義を認めるものが殆どでした。原因の一つとして対象の選び方にあります。これまでの多くはPDE5阻害剤単独では効果が不十分な例を対象としていました。今回はシルデナフィルで用量を適正化したのちに、テストステロンを上乗せし、効果が増強されるかみています。この違いが大きいかと思います。
但し、この試験でもサブグループ解析でシルデナフィル単独効果不十分群を取り上げていますが、やはりテストステロン上乗せ効果がなかったとしています。(野)
EDの原因は多岐に及び、複数の原因が合併して、PDE5阻害剤と男性ホルモンの補充だけでは単純に治らない場合があると考えております。
また、低テストステロン状態とEDが長期化している人は、勃起に必要な筋肉や諸々の組織が萎縮・線維化して勃起しにくい状態に陥っているため、相応の期間をかけてリハビリが必要と思われます。
足や腕を骨折や捻挫でギブスで長く固定していた後、ギブスが取れて直ちに元の通り運動が出来るでしょうか?壮年期を過ぎて高齢になるほど丁寧なリハビリを少しずつ行うことになるのではないでしょうか?
本報は「テストステロン低値のED患者140人を対象とした無作為化試験」ということで、エビデンス・レベルの高い研究デザインですが、もし短期間の内に効果の有無を評価していたとすれば、男性ホルモンの補充を受けた上でのリハビリ効果が発現する前に「効果なし」と判定される症例もあると思われます。PDE5阻害剤と男性ホルモン補充の併用でより効果的に治せる場合があることも過去の研究報告から事実と考えておりますが、「シルデナフィルにテストステロンを加えてもEDのさらなる改善なし」とバッサリ斬り捨てるのは乱暴だと思うのです。(福)
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