テストステロン投与は低テストステロン血症の中高年男性において血清終末糖化産物(AGEs)を低下する
2019年06月18日
角野 博之 (1, 2)、 市川 秀一 (1)
(1)北関東循環器病院内科、 (2)宏愛会第一病院内科
【目的】
終末糖化産物(AGEs)は、酸化ストレスや炎症反応を惹起させ、動脈硬化症を進展させる。 男性は加齢に伴い、血中テストステロン値が低下し、加齢男性性腺機能低下症候群及び生活習慣病、動脈硬化症発症が増加する。 最近、加齢に伴うテストステロン低下により血中AGEs値が増加することが報告されており、テストステロン低下に伴う動脈硬化形成機序に血中AGEs値の増加が一部関与している可能性がある。 今回我々は男性の加齢に伴う動脈硬化形成機序に対するテストステロン及び血中AGEsの関与を解明するため、低テストステロン血症の中高年男性に対してテストステロンを投与し、血中AGEs及び脂質、血糖、血管炎症性マーカーを測定した。
【方法】
本研究は倫理委員会の承認を得た。同意を得た低テストステロン血症の中高年男性全30例(mean±SD:61±6歳;46~72歳)を無作為に21例のテストステロン投与群(T群)及び9例のプラセボ投与群(P群)の2群に分類し、顎下部にそれぞれグローミン軟膏0.3g及びプラセボ軟膏0.3g 1日2回塗布を12ヶ月間行い、投与前及び12ヶ月後の早朝空腹時に採血し、同時に身体、血圧測定を行った。採血により血清AGEs及び動脈硬化関連因子である血漿血糖(FPG)、HbA1c、血清低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)、高比重リポ蛋白コレステロール(HDL-C)、トリグリセライド(TG)、遊離テストステロン(FT)、高感度C反応性蛋白(hsCRP)を測定した。
【結果】
T群において、血清AGEsは前値に比べ12ヶ月後に有意(p<0.05)に減少したが、体重、血圧、FPG、HbA1c、LDL-C、HDL-C、TG、hsCRPは有意な変化を示さなかった。FTは前値に比べ12ヶ月後に有意(p<0.05)に増加しており、テストステロン投与のアドヒランスは良好であった。コントロール群では全ての項目は有意な変化を示さなかった。
【結論】
テストステロン投与は低テストステロン血症の中高年男性の血清AGEsを低下させた。よって、テストステロン投与は動脈硬化の進展を促進するAGEsを低下させることから、動脈硬化症発症を抑制する可能性が示唆された。
2019(令和元)年6月14日(金)
第19回日本抗加齢医学会総会(於:パシフィコ横浜)
一般口演7 男性医療-1 (於:第6会場)
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