長期テストステロン療法における前立腺癌発症率
2014年07月18日
■ 目的
テストステロン療法が前立腺癌(PC)のリスクを上げるというエビデンスはないが、長期的データは欠如している。 そこで長期間テストステロン療法を受けている性腺機能低下男性においてPCの頻度が増加するか否か調査した。
■ 方法
3つの平行、前向き、継続、蓄積登録研究において1,023例の性腺機能低下男性がテストステロン療法を受けていた。 2つの研究は泌尿器専門医により行われ(2004年以降)、1つはアカデミックなアンドロロジー・センターにより行われた(1996年以降)。 治療は総テストステロン≤12.1 nmol/L (350 ng/dL)および性腺機能低下症が存在するときに行われた。
調査期間の最高は17年(1996~2013)、中央値は5年である。 開始時の平均年齢は泌尿器科では58歳、アンドロロジーでは41歳であった。
テストステロン療法はテストステロン・アンデカノエイト注射を12週間隔で行われた。 前立腺の治療前の検査および治療中のモニターが行われた。 前立腺生検はEAUガイドラインに沿って行われた。
生検の陽性および陰性者の数を調査した。 PCの頻度および前立腺切除後の転帰を検討した。
■ 結果
- 泌尿器科で行われた2つの研究で計11例のPCが診断され、発現率はそれぞれ2.3%および1.5%であった。10,000例あたりの年間の頻度はそれぞれ54.4および 30.7例である。
- アンドロロジー・センターではPCは報告されなかった。
- コントロール群がない登録デザインであるという限界性が存在する。
■ 結論
テストステロン療法はPCのリスクを上げなかった。 テストステロン療法のガイドラインにそって適正に行われれば、テストステロン療法は性腺機能低下男性において安全である。
■ 原著
J Urol. 2014 Jun 26. pii: S0022-5347(14)03885-3.
Incidence of Prostate Cancer in Hypogonadal Men Receiving Testosterone Therapy: Observations from Five Year-median Follow-up of Three Registries.
Haider A, Zitzmann M, Doros G, Isbarn H, Hammerer P, Yassin A
■ 弊社コメント
前立腺癌の罹患率には以下の資料があります。この報告の10,000例あたりの年間の頻度はそれぞれ54.4および 30.7例を上がっていないとした基礎データが気になります。(野)
■ 参考資料: 前立腺癌の罹患率はどのくらいか? (公益財団法人 日本医療機能評価機構)
カテゴリ:
タグ: