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米国・カリフォルニア州中毒事故管理センター(CPCS)に報告されたヨヒンビン含有製品が関与する有害事象について

2010年03月04日


【 原著 】
Adverse drug events associated with yohimbine-containing products: a retrospective review of the California Poison Control System reported cases
Kearney, T. et al. (University of California at San Francisco, CA., USA)
Ann. Pharmacother. 44(6), 1022-1029, 2010

【 要旨 】
背景:
ハーブサプリメントは薬ではなく食品として分類されるため、FDAによる市販前評価を受ける必要がない。ヨヒンビンは、α(2)拮抗薬であり、処方薬・ハーブサプリメント製品の療法で入手が可能である。

目的:
カリフォルニア州中毒事故管理センター(CPCS)に報告されたヨヒンビンが関与する有害事象(ADE)の有病率と重症度を決定する。

方法:
7年間(2000-2006)の期間における、CPCS電子データベース内症例の遡及的検討を実施した。症例は、ヨヒンビン含有製品への暴露の後に症状を示した18歳以上の成人を対象としており、因果関係の評価はできる限り「Naranjo有害事象因果関係判定スケール」に則り行った。

結果:
合計238症例が、同定された。CPCSに報告されたヨヒンビンに関連するADEは年間患者数が大きく増加しており、とりわけ2000年から2006年の間では、成人10,000人当たりの患者数が2000年の1.8例から2006年には8.0例に増加した。大多数の場合(98.7%)、(処方薬に対して)ハーブのヨヒンビン製品が関与していた。使用の一般的な理由は、性機能の強化(27.7%)、体重減少(9.2%)、覚醒効果を(7.6%)であった。報告された頻度の高いADEは、胃腸障害(46%)、頻脈(43%)、不安/激越(33%)、高血圧(25%)であった。ヨヒンビン暴露は重篤な転帰の割合が高くなっており、平均的な薬物に比べて医療施設での管理がより必要となると考えられる(OR[95%CIの]は5.81[4.43-7.64]、平均は2.35 [1.82-3.04])。

結論:
2000年から2006年における、ヨヒンビンハーブ製品に関連するADEは有病率が大きく増加している。CPCSに報告されたこれらのADEには、平均的な曝露よりも有意に重篤な転帰が関連していた。ヨヒンビンは、栄養補助食品健康教育法に基づく「安全な」栄養補助食品と見なされるかどうか、再調査が必要である。

【 弊社コメント 】

  1. 米国ではヨヒンベエキス等が合法的なサプリメントとして販売されていますが、日本の薬事法(現・薬機法)では劇薬の医薬品成分として規制されます。米国のヨヒンベエキス含有商品を日本で医薬品として当局の承認を得ることなく日本国内で販売すると、薬事法違反(未許可医薬品の販売)になります。
  2. 精製される前のヨヒンベエキスや、精製度の低い粗ヨヒンビンは、医薬品の規格を満たすヨヒンビン塩酸塩と比べて純度が低く、不純物が混じっているため、自ずと本来の作用と効果が不安定であることや、不測の有害事象の発生が懸念されます。
  3. ヨヒンビンの作用には二相性があると指摘されており、投与量が多過ぎると逆効果になることや、有害事象が生じやすくなることが知られています。
  4. 弊社が製造販売するヨヒンビン塩酸塩製剤「ガラナポーン」「大木製薬・ガラナポーン」「ガラナピン(販売休止中)」は、医薬品としての規格を満たすヨヒンビン塩酸塩を原料としており、海外で販売されているヨヒンベ含有サプリメント等とは一線を画す品質です。
  5. 弊社は昭和35年(1960年)以来、ヨヒンビン塩酸塩を配合した医薬品を半世紀余にわたり製造販売していますが、本報にある有害事象のうち重篤な症例は弊社製品で経験しておりません。
  6. 以上より、「高純度な医薬品原料としてのヨヒンビン塩酸塩」を使用した、「低用量」なヨヒンビン塩酸塩製剤を、「用法・用量を守る」ことで、本報で指摘されている有害事象の発生は極めて少なく、その程度も軽微と考えております。 (福)

 


【序論】
ヨヒンビンはヨヒンベ(Pausinystalia yohimbe)樹皮より抽出されたインドール・アルカロイド誘導体である。中枢神経系に用意に浸透し、α2選択的拮抗薬として働くため、副腎髄質ホルモン(ノルエピネフリン)を増加させ、交感神経系の緊張を強化する。米国では、ヨヒンビンは化学的に精製された標準量のヨヒンビン塩酸塩を含む経口錠の処方薬として利用可能となっている。経口ヨヒンビン塩酸塩の作用の発現は1-2時間であり、半減期は0.58時間、作用時間は4時間である。天然のヨヒンビン抽出物を含む非標準のハーブ製品は、様々な用法・用量(錠剤、樹皮、液剤)で処方箋なしで利用可能である。活性型のヨヒンビンアルカロイドの量は報告されていないことが多く、製品ごとに広く異なっている。ある研究によれば、多くのヨヒンビンハーブ製品にはヨヒンビンが極少量、もしくは全く含まれていないことが判明している。

ヨヒンビン樹皮はかつて催淫薬、幻覚剤として利用されてきた。今日では、ヨヒンビン塩酸塩は男性勃起障害(選択的セロトニン再取り込み阻害薬による抗うつ薬治療を含む)、女性性欲減退、自律神経障害、向精神薬による口内乾燥症、そして(可能性として)凝固障害に一般的に使用されている。しかしながら、ヨヒンビンの上述した全ての使用方法の有効性は証明されていない。

ヨヒンビン塩酸塩の推奨使用量(ED治療に、5.4mg錠を1日3回)を使用した患者の有害事象は、悪心、腹痛、めまい、神経過敏であった。ヨヒンビンを単回投与で15-20mg使用した場合、用量依存的刺激効果、すなわち高血圧、頻脈が認められた。他の有害事象として、協調運動失調、不安神経症、幻覚、錯乱、倦怠感、逆行性健忘、ループス様症候群、腎不全などが報告された。

米国において、ヨヒンビン製品の使用は増加している。ヨヒンビンは過量投与の状況であっても、比較的安全性が高いことが示唆されているが、とりわけハーブ製品の場合、臨床の経験は限定的である。1994年に成立した米国栄養補助食品教育法(DSHEA)では、ヨヒンビンハーブ製品を薬ではなく、栄養補助食品の特別カテゴリーとして市場に残すことを許可した。現在のところ、ハーブ治療は米国人の30-40%が使用しており、結果として年間自己負担費は50億ドルを超える(2009年の国内OTC漢方・生薬製剤市場は2374億円)。しかしながら、これらハーブ製品には安全性の面で大きな懸念がある。FDAによる市販前評価を受ける必要がないためである。実際、ハーブ製剤を市場から撤退させる前に、製品の危険性を証明しなければならず、FDAの負担となっている。これまでにも、あるハーブ製品が消費者に対して有意に安全面のリスクに関連している例はあった。よく知られている例がエフェドラ(Ma huang)であり、2004年にFDAより心血管系への有害事象があるとして販売が禁止された。

米国会計検査院は、ハーブ製品による有害事象は実際に報告されている数よりも少ないと近年結論付けた。米国保健社会福祉省は、ハーブ製品による有害事象の20%ほどしか医療従事者に報告されていないと推定している。このため、ハーブ製品に関連する安全リスクを評価することを目的とした研究が必要となる。全国の中毒事故管理センター(PCC)の1993年から2002年までの報告をもとにハーブ製品の有害事象の重傷度を比較した解析結果があるが、それによると、ヨヒンビンはエフェドラを含む全ハーブ製品群において重篤な転帰を迎える有病率が最も高いとされている。しかしながら、この試験ではヨヒンビンが関連する有害事象の性質(症状、医療管理)について述べられておらず、何らかの因果関係評価も含まれていなかった。また、2004年のエフェドラの販売停止後、使用において重複が見られる(興奮効果)ヨヒンビンの使用傾向の評価に関心がもたれている、

本レトロスペクティブレビューの目的はカルフォルニア州中毒事故管理センターに2000年から2006年にかけて報告されたヨヒンビンの有害事象の患者数、重症度、医療管理を評価することである。本レビューの結果は栄養補助食品としてのヨヒンビン製剤の現行規制の安全性および妥当性評価の助けなるだろう。

【結果】
ヨヒンビン有害事象の有病率(患者数)
CPCS(カルフォルニア州中毒事故管理センター)データベースの初期スクリーニングにより計350症例が集められた。そのうち、266症例(76%)が成人であった(18歳以上)。2000年から2006年までCPCSに報告された、全238のヨヒンビン有害事象は症例試験対象患者基準に適合していた。年間の症例数は14から67であり、平均±SDは34±17症例であった。年間症例発生数は年を追うごとに有意に増加しており、成人10000人暴露あたりのヨヒンビンADE数は2000年の1.8から2006年の8.0に増加していた。定性的には、2000年から2002年に確実に増加し、2002年から2004年は横ばい、2004年から2006年に劇的に増加していた。

患者人口統計
ヨヒンビン有害事象が報告された被験者の平均年齢は39±15歳(18-85)。年齢間に有意な傾向はなかった(p=0.2)。ヨヒンビン有害事象が報告された被験者の大部分(77%)は男性であった。性比率の有意差はなかった(p≦1.0)。

ヨヒンビン剤形/製品、共同経口摂取物(併用薬)

7年間の全スパンにかけて、ヨヒンビン有害事象のほとんどの症例はハーブ製品(平均98.7%; 92.9-100%)であり、大部分の65.5%の症例はピル(錠剤、カプセル剤)製剤によるものだった。液剤は10.5%、残りの24.0%は剤形が不明であった。
併用剤の情報は59.7%の症例で得ることができた。一般的な併用薬は、カフェイン、エフェドラ/エフェドリン、シネフリン、イチョウ、ノコギリヤシ、朝鮮人参、及びガラナであった。症例の大部分(70.5%)において併用薬は関与していなかった。併用薬としては、メタンフェタミン、エタノール、抗うつ薬(ウェルブトリン、プロザック、アミトリプチリン)、精神病の薬物治療(リタリン、トリレプタル、ブスパー、ストラテラ)が一般的だった。

ヨヒンビンを含む製品の製品名は68.9%の症例で得られた。年毎の症例数が有意に増加している傾向のある製品名があった(p<0.001)。ヨヒンビンのハーブ製品で最もADEに関与していた製品は、「スタミナRx(8%)」、「レッドライン(6%)」、「ハーバルニトロ(4%)」、「リポ6(3%)」、「マックスサイズ(3%)」、「リポドリン(2%)」、「ウロプリン(2%)」、「スタッカー2 XPLC(2%)」であった。これらの8製品による症例数は、全体のほぼ3分の1に達する。とりわけ、スタミナRxによる症例は、2004年を除いて、全ての年で報告されている。他の製品の大部分(レッドライン、リポ6、マックスサイズ、リポドリン、スタッカー2 XPLC)は、最近(2005年、2006年)になって報告されている。これらの製品群は、多くは精力増強、エネルギーの向上、減量を謳っている。 Table 1に一般的なヨヒンビン製品とその用途をリストする。

Table. 1 有害事象に最も関わるヨヒンビン製剤名

製品名 症例、n(%) 用途
スタミナRx 18(8%) 精力増強
レッドライン 15(6%) 覚せい剤
ハーバルニトロ 11(4%) 精力増強
リポ6 7(3%) 減量
マックスサイズ 6(3%) 精力増強
リポドリン

ウロプリン

スタッカー2 XPLC

5(2%)

5(2%)

5(2%)

減量

精力増強

覚せい剤

2000年~2006年, n=238

摂取量と使用理由
症例の65.5%は錠剤によるものであり、平均摂取量は3±5錠(1-49錠)であった。摂取した錠剤数が年毎に増えていくという有意な傾向は見られなかった(p=0.051)。
症例の47.1%では、ヨヒンビン使用の明確な理由はわからなかった(報告に説明が規定されていなかった)。残りの症例では、ヨヒンビンを使用する一般的な理由として、精力増強(27.7%)、減量(9.2%)、覚せい効果(7.6%)であった。あまり一般的でない理由として、自傷(3.8%)、偶発的な摂取(1.7%)、幻覚効果(0.4%)であった。

有害事象の種類
2000年から2006年にかけて、一般的なヨヒンビンが関与するADEのうち、全体のうち5%以上を示すADEは、胃腸障害(悪心、嘔吐、めまい、腹痛)(45.7%)、頻脈(43.1%)、不安神経症/興奮(32.9%)、高血圧(24.7%)、顔面紅潮/紅斑(20.0%)、発汗(14.0%)、振戦/身震い(13.2%)、胸痛(12.1%)、悪寒/感冒/ふるえ(9.9%)、頻呼吸/息切れ(7.3%)、散瞳(6.0%)、異常精神状態/行動(5.4%)であった。重篤だが一般的でないADEとしては、急性心筋梗塞(0.4%)、心房細動(0.4%)、補正QT間隔延長(0.4%)、発作(0.4%)、急性腎不全(0.4%)、持続勃起症(0.8%)があった。Table2に一般的なADE、Table3に重篤だが一般的ではないADEをリストした。

Table. 2 ヨヒンビン製剤に関わる一般的な有害事象

有害事象 症例数n(%)
胃腸障害 109(46%)
頻脈 102(43%)
不安神経症/興奮 79(33%)
高血圧 60(25%)
顔面紅潮/紅斑 48(20%)
発汗 33(14%)
振戦/身震い 31(13%)
胸痛 28(12%)
悪寒/感冒/ふるえ 24(10%)
頻呼吸 16(7%)
散瞳 14(6%)
異常精神状態/行動 12(5%)
2000年~2006年, n=238

Table. 3 ヨヒンビン製剤に関わる重篤な有害事象

有害事象 症例、n
急性心筋梗塞 1
心房細動 1
補正QT間隔延長 1
発作 1
急性腎不全 1
持続勃起症 2
2000年~2006年, n=238

管理
患者のおよそ半数(47.9%)は医療監視、たいていは数時間、のみが必要な程度であった。幾人かの患者は治療介入が必要となっており、うち9.3%は活性炭の単回投与によるによる除染治療、8.3%はベンゾヂアゼピン(ロラゼパム、ジアゼパム等)の投与、3.6%は降圧薬治療、2.1%は対症療法、13.3%は他の治療(制吐剤、胸痛へのニトログリセリン、重篤な激越に対してのハロペリドールなど)を行った。25.3%の症例で治療が不明であった。

非医療施設(自宅など)で管理が可能であった患者の平均年間比率(?)は31.5±8.2%だった。大部分(56.3%±13.9%)は医療施設(病院、医師のオフィス)での管理が必要であり、うち2.9%は集中治療室での治療が必要であった。管理施設が不明である症例が12.2±8.3%あった。年毎の管理施設の傾向に有意差はなかった(p<0.2)。比較的に、CPCSに2000-2006年に報告された全曝露薬物の最も一般的な管理施設は非医療施設(62.6±2.7%)であり、医療施設での管理はむしろ少数派であった(35.4±1.3%)。ヨヒンビン製剤による入院リスクも他の薬物曝露(薬、ハーブ製品、化学薬品、植物由来製品)に比べ有意に高かった(OR 2.35; 95%CI1.82-3.04)。

転帰
全体的に、ヨヒンビン製剤の曝露による副作用は、患者の37%が「影響なし」もしくは「最低限の影響」、15%が「軽い副作用」に関連していた。通常、これら2つの帰結カテゴリーでは、モニタリング以上の治療は必要ではない(AAPCCガイドライン)。およそ30%の患者は中等度の副作用を経験しているが、これらの患者群は何らかの治療介入は必要としているが、副作用は一時的であり、寛解している。他2%は重篤な副作用(命を脅かす、後遺症/身体障害)を経験した。ヨヒンビン曝露により死亡した患者はいなかった。フォローアップから脱落した転帰不明な患者は16%であった。時間による転帰の有意な傾向はなかった。

2000年から2006年にかけて、ヨヒンビン製剤を使用した18歳以上成人の重篤な転帰(中等度、大、致命的)の平均年間比率(?)は33.0±14.5%だった。全体的に、CPCSに報告された他の成人曝露事例に比べて、ヨヒンビンにより報告された重篤な転帰の割合は、有意により高かった(OR 5.81; 95%CI4.43-7.64)。Table 4に、CPCSに報告された成人を対象とした、ヨヒンビン製剤と他の薬剤(薬、ハーブ製品、化学薬品、植物由来製品)における重篤な転帰もしくは入院のリスクを示した。

Table. 4 ヨヒンビン製剤と全薬剤による重篤転帰および入院リスクのオッズ比

ヨヒンビン製剤, n(%) 全薬剤, n(%) オッズ比(95%CI)
重篤な転帰 77 (32.3%) 44,132 (7.6%) 5.81 (4.43-7.64)
入院 134 (56.3%) 205,698 (35.4%) 2.35 (1.82-3.04)
成人(2000-2006, n=238 CPCSデータベースより)

全薬剤(薬、ハーブ製品、化学薬品、植物由来製品); n=581,068

重篤な転帰(中等度、大、致命的)、AAPCCガイドラインに準拠

 

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