低テストステロン患者は前立腺癌リスクが高い
2011年01月25日
【 目的 】
前立腺癌リスクの予測におけるテストステロンの役割、およびその高グリソン・スコアとの関連性を、前立腺生検を行った患者において検討した。
【 方法 】
対象は前立腺生検を行った568例の患者。患者をテストステロン3.85
ng/mlを境に高テストステロン群(n=285、高T群)
および低テストステロン群(n=283、低T群)に分けた。
多変量回帰分析により、年齢、前立腺容積、PSA、およびPSADの影響、および前立腺癌リスクおよび高グリソン・スコアに対するテストステロンの影響を調査した。
【 結果 】
- 低T群は高T群に比して前立腺癌の発症率が有意に高かった(38.9%
vs. 29.5%, p=0.018)。 - 前立腺癌のリスクの上昇に関連する因子は年齢([OR]=1.08, 95%
[CI]=1.25-3.16,p=0.001), 高PSA(OR=3.35, 95% CI=2.63-4.25, p=0.001),
低前立腺容積(OR=0.183,95% CI=0.11-0.30, p=0.001), および低テストステロン(OR=1.99,
95%CI=1.25-3.16, p=0.001)であった。 - PSAのみが高グレード前立腺癌(グリソン・スコア≧7)の強い予測因子であった(OR=2.19, 95% CI=1.57-2.95,
p=0.001)。
【 結論 】
低テストステロンの患者は高テストステロンの患者よりも前立腺癌のリスクが高い。低テストステロンは前立腺癌リスクの予測因子であるが、高グレード前立腺癌へのリスクの上昇とは関連がない。
【 原著 】
Korean J Urol. 2010 Dec;51(12):819-23. Epub 2010 Dec 21.
Is a decreased serum
testosterone level a risk factor for prostate cancer? A cohort study of
korean men.
Shin BS, Hwang EC, Im CM, Kim SO, Jung SI, Kang TW, Kwon DD, Park
K, Ryu SB.
Department of Urology, Chonnam National University Medical School,
Gwangju, Korea.
【 弊社コメント 】
「テストステロンが多過ぎると前立腺癌になるのでは?」ひいては「男性ホルモン剤を投与すると前立腺癌になるのでは?」という指摘は、今や古い迷信になりつつあり、むしろテストステロンの分泌不足が前立腺癌のリスク要因と考えざるを得ない検討結果が出揃いつつあります。
前立腺癌は10~20年かけて進行するとはいえ、加齢にともない特に50歳代から発症する人が多くなる一方、テストステロンの分泌が旺盛な20歳代では極めて少ないわけですから、テストステロンが多過ぎることよりも、40歳前後の頃からテストステロンの分泌が衰え「テストステロンの不足」になることが発症の原因と考える方が自然ではないでしょうか。発症してから顕在化するまで10~20年かかるという話にも符合すると思います。
そうなりますと、自ずと30歳代・40歳代にかけてテストステロンが不足しないような生活習慣(バランスの取れた食生活・適度な運動・ストレスの発散)を維持することがますます重要となり、それでも加齢にともないテストステロンの分泌が低下する状況に対しては、早めに生理的範囲のテストステロン補充をする事こそ「前立腺癌の予防」になるのではないかと考えられ、今後の検討が期待されます。(福)
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