テストステロンと心血管系の関連性に関する機序の研究成果
2018年05月14日
- テストステロン(T)欠乏は心血管疾患(CVD)の男性で一般的であり、無作為プラセボ比較試験(RCT)は慢性安定性狭心症患者の労作性心虚血、慢性心不全(CHF)患者の運動耐容能、運動時最大酸素消費量(VO2max)および筋力、Q-T間隔の短縮および幾つかの心血管リスク因子の改善に対するTの有用性を報告している。
- T欠乏は有害なCVリスクプロフィルおよび死亡と関連している。
- 臨床的および科学的研究はRCTの結果を支持し、それを説明する機序的エビデンスを提供している。
- Tは冠動脈循環および肺血管を含む他の血管床における急速な動脈拡張作用を有し、全身の末梢血管抵抗を下げる可能性がある。
- Tは直接的な非ゲノム的機序によりCaチャネルのブロック(L-Caチャネル)を介して血管反応性に対する作用を媒介し、Kチャネルの開口を刺激する事をエビデンスは示している。
- Tはまた超高速Kチャネル電流を刺激する事により心筋細胞の脱分極を刺激する。
- TはCHF患者の心拍出量、運動耐容能、VO2maxおよび迷走神経を介した動脈圧受容器心臓反射感受性を改善する。
- 心機能に対するTの有用性とは別に、T補充は骨格筋糖代謝を増やし、筋力を高める。運動耐容能の改善に寄与する因子が糖代謝および筋力の完全に関わっている可能性がある。
- Tは体組成、ゲノムおよび非ゲノム的な作用の両者による糖利用および脂質代謝の改善によりインスリン抵抗性及び高脂血症を含むメタボリックなCVリスク因子を改善する。それには糖取り込みおよびインスリン受容体の発現、グルコース・トランスポーターおよびキー代謝経路の調整蛋白の発現が関わっている。
- HDL-Cに対する作用はスタディにより、下降、上昇あるいは変化しないと異なっている。
- T補充はCVD男性患者において血清催炎症サイトカインレベルを抑制し、抗炎症および抗動脈硬化作用を有するIL-10の産生を刺激すると思われる。CRPに対する影響は観察されていない。
- 凝固因子に対する有害作用は認められていない。
- Tが頸動脈内膜中膜厚あるいは冠動脈Ca沈着のような動脈硬化の代理マーカーを改善するあるいは悪化するという有意なエビデンスをRCTは明確に示していない。
- 動脈硬化の予防あるいは改善に関するTの影響はスタチン療法で認められると同様に数年を経過して現れると思われ、TのRCTで使用されている数カ月では生じないと思われる。
- 長期的な疫学的研究からの重要なエビデンスは、T欠乏男性の臨床試験において示された主要心血管イベント(MACE)および死亡の減少といった防御作用を支持している。
- 正常健康レベルにTを補充したRCTはMACEに関して有意な有用性あるいは有害作用を報告していない。また最近のメタ解析も同様である。
Asian J Androl. 2018 Mar-Apr;20(2):120-130. doi: 10.4103/aja.aja_6_18.
Randomized controlled trials – mechanistic studies of testosterone and the cardiovascular system. (原著フリー)
Jones TH, Kelly DM
Robert Hague Centre for Diabetes and Endocrinology, Barnsley Hospital NHS Foundation Trust, Barnsley, UK.
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