テストステロン補充療法に期待される効果
最近、高齢男性の多くの疾患においてテストステロンが低下しており、その補充により改善する事が報告されています。
もちろん、最も期待されるのは性機能を含む男性更年期症状ですが、そのほかにも糖尿病をはじめとするメタボリック・シンドローム、骨粗鬆症、肥満や体組成の改善、虚弱、抑うつ等にも効果が期待されます。
一部重複いたしますが、最近の話題を中心に紹介いたします。
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性機能を含む更年期症状
これまで述べてきましたように、男性更年期症状はテストステロンの低下と最も深く関係する症状です。
テストステロン補充療法の効果は、国内外において多くの研究がなされ、有効性と安全性が確立しています。
現在、男性更年期症状の改善がテストステロン補充療法を行う主要な目的となっています。 (↑↑
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メタボリック・シンドローム
糖尿病や肥満のある高齢男性は、そうでない男性よりもテストステロンが低いという報告が多数あります。
また、内臓脂肪の蓄積や動脈硬化の指標である頚動脈の厚さはテストステロンと逆比例するという報告もあります。
そして、いわゆるメタボリック・シンドロームの人にテストステロン補充を行うと、糖尿病、インスリン抵抗性、肥満、 血清脂質、動脈硬化が改善するという報告がなされています。
そのため、メタボリック・シンドロームの治療にテストステロン補充という選択肢も将来的には可能性があります。 (↑↑
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骨量、骨粗鬆症
血中のテストステロン低下と骨密度の低下や骨折頻度の増加との間に相関性がある事が多く報告されています。
また、テストステロンの投与により骨量が増加したという報告もあります。
ただし、骨折を予防したエビデンスは得られていません。
骨粗鬆症の改善に関しては、期待が持たれる領域です。 (↑↑
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筋肉量、筋力
加齢に伴い筋肉、水分など脂肪以外の成分は減少します。
特に筋肉量、筋力の低下は日常生活動作の低下、転倒につながるため重要です。
これまでの多くの報告でテストステロンの低下と筋肉量、筋力の低下が相関する事が認められています。
また、テストステロンの投与による筋肉量の増加、握力、腕力等の筋力の増強が報告されています。 (↑↑
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認知能
近年、テストステロンの低下と認知能の低下、記憶障害との関連性が報告されています。
また、テストステロンを含む性ホルモンが脳内でも合成されていることが明らかになり、精神神経系における性ホルモンの重要性が注目されています。
テストステロン補充による認知能、記憶障害の改善に関しては、一定した結果は得られていませんが、非常に期待されている領域です。 (↑↑
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抑うつ症状
うつ病は主に脳の機能異常によって起きるものですが、加齢による男性ホルモンの低下に伴って自律神経失調症状やうつ状態を発症することがあります。
うつ症状を示す高齢男性では、テストステロンが低いという報告があります。
気分あるいは抑うつに対するテストステロン補充の効果を検討した研究では、全てではありませんが改善効果が認められています。
抑うつ症状の改善は、生活習慣の改善、仕事、趣味、運動等に取り組む姿勢が改善され他の症状に対する波及効果が期待でき、非常に重要です。 (↑↑
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全般的健康感、QOL(Quality of life:生活の質)
テストステロンの補充により、健康に関連したQOLを改善したという報告があります。
これまで述べてきましたように、テストステロンには多様な効果が期待されます。
そして、総合的な最終目標は、健康感を取り戻し、高いQOLを実現することにあります。
これについては次頁で述べます。 (↑↑
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